そう言って差し出された花に目をやる。
彼の手元には、白と青の花の束。
どうしよう、と必要以上に慌てられ、
私は少し焦ってしまう。
笑っていうと、彼も笑ってくれる。
それになんだか癒されて、温かい気持ちになった。
そこまで言うと彼は、察してしまったようで、もともと下がり気味な眉を、へにょりと曲げた。
それに罪悪感が沸かないわけでもないが、 私は彼のことをそこまで知っている人間でなかった。
人の良さげな彼の気持ちを踏みにじれるほど、私は出来ていないわけでもなかった。
彼に優しく手元の花を手渡され、何も言えずにいる私に、彼は「また明日!」と笑って去っていった。
私の手で揺れる花が、造花だということにようやく気づいてしまった。
仲の良い女の子にそうやって言葉を返すと、彼女は頬を染めてはにかんだ。
その様子を見て、思ってしまう。
ぼーっとしていたら心配をかけてしまったようだ。
別に好きな人のことを考えるだなんて、当たり前のことだろうと思う。
少し心の中で悪態をついて、ニコリと笑ってみせた。
教室の扉をガラッと勢いよく開けると、直ぐ目の前には僕の想い人。
空中を彷徨っている彼女の手を見て察するに、彼女も扉を開けようとしていたのだろう。
三白眼気味の目を開いて、パチパチと瞬きをする。
そんな様子にもかわいい、と思ってしまう。
彼女の言葉に頷いて言う。
私の名前を呼ぶ彼に向かって、つい顔をしかめてしまった。
あまり嫌な顔は見せたくないが、これに関しては本当に彼が悪いと思う。
彼は俗に言うイケメンだし、性格もいいし、頭はよろしくないが、運動だってできる。
つまりはモテるのだ。
こんな無愛想で可愛げのない女より、佐藤さんみたいな可愛くて素直な子のことを好きになった方が、絶対にいい。
彼の言葉に周りがざわついた。特に女子。
モテるということは、それすなわち彼のことを好きな子がたくさんいるわけで。
支局当然かのように彼は頷いた。
私はそれに頭を抱えた。
絶対にめんどくさいからだ。
そんな彼の様子に興味を持ったのか、少し食い気味になってそんなことを聞いてくるクラスメート。
咄嗟に髪に隠れきれていない耳を覆った。
そんな私に彼は微笑んで言う。
少し俯いて落ち込んだように言うと、彼はそんなことはないと否定した。
理解が出来ないと思いつつ、彼の笑顔に惹かれてしまっているのもまた事実だった。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。