体育館の端。
部活終わりで 、 黒尾は
ネットの片付けをしていた。
汗で少し湿った黒い髪を 、
雑にかき上げて。
気だるそうに欠伸を噛み殺しながら 、
ロープをまとめている。
その背中。
静かに近づいて 、
一瞬だけ迷ってから 、 えいっ!! … と
背中に腕を回して 、 ぎゅっと抱きついた。
黒尾の肩がびくっと跳ねる。
ロープが床に落ちて 、 軽い音を立てた。
振り向こうとして 、 でも抱きつかれてるから
中途半端な体勢のまま。
首だけ後ろに捻って 、 ちらっと
こちらを見る。
口ではそう言うけど 、
声はどこか楽しそうで。
ため息をつきながらも 、
振りほどこうとはしない。
そう言いながら 、 黒尾はそっと
自分の手を下ろして 、
こちらの腕の上に重ねる。
指先が触れて 、 ぴたりと止まる。
小さく笑って 、 低い声でぼそっと。
背中越しに伝わる体温はあったかくて 、
さっきまで動いてたせいか 、
鼓動も少しだけ早い。
そう言いながら 、 黒尾はゆっくり
自分の身体を預けてくる。
完全に体重をかけるほどじゃない 、
でも逃げられない距離。
からかうみたいな言い方。
でも否定されたらちょっと拗ねそうな 、
微妙なトーン。
そう言って 、 くすっと笑う。
一瞬 、 言葉を切って。
声が少しだけ低くなって 、
体育館に響かないように抑えられている。
そのまま 、 黒尾はゆっくり振り返る。
腕を外させないように 、
手首を軽く掴まれて。
間近で目が合って 、
いつものニヤッとした笑み。
そう言いながら 、 頭にぽん 、 と手を置く。
そう言うくせに 、
その手はしばらく離れなかった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。