第64話

番外編 第4話
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2026/02/12 10:00 更新
北斗side
コーヒー豆を挽く音が、店内に一定のリズムで響く。
この時間帯は、いつも落ち着いている。
……はずだった。
さっきから、妙に気になる。
カウンターの向こう、いつもの席に座るあなたの下の名前の様子。
静かに過ごしている。
いつもと、変わらない。
それなのに、
目を伏せる時間が、少しだけ長い。
北斗
……
声をかける理由は、特にない。
だから、何も言わない。
——言わないけど、分かる。
この店で過ごす時間を、
あなたの下の名前が“特別”として扱い始めていること。
それは、俺も同じだった。
店員と客。
その関係があるから、
越えない線も、守ってきた。
でも最近、その線の向こう側に
「未来」が見える。
この席が、
一時的なものじゃなくて、
帰ってくる場所だったらいい。
そう思う自分に、
驚きはなかった。
北斗
お待たせしました
コーヒーを置くと、
あなたの下の名前は小さく会釈をする。
あなた
ありがとうございます
その一言が、胸に残る。
……もし、この店を離れる日が来たら。
それでも、
同じ時間を過ごしたいと思える相手。
答えは、もう出ている。
ただ、急がない。
この人には、
静かな歩幅が似合うから。
——“変わらない”ことを守りながら、
少しずつ、先へ。
それが、俺の選び方だった。

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