第33話

桃赤『Happy White Day! ~甘くてキケンな初キス大作戦~』
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2026/03/14 05:00 更新
後半 微 清楚(?)注意

↓の当日・桃赤編です
※本編で出てきているホワイトデーのお返しの意味には諸説あります※
桃side


ピンポーン

インターホンが鳴った瞬間———
といっても、つい先ほど自分で押したのだが———
心臓が、飛び出るんじゃないかってくらいに大きく脈打った。

3月14日。
つまり、ホワイトデー。

俺は、恋人であるりうらへのお返しにと、
キャンディを持ってきたんだけど…
めっっっちゃ緊張する…!
どくどくなる心臓をおさえて、小さく呟いた。

一度、紙袋を握りなおす。

手作りのキャンディに加えて、
入っているものが一つ、二つ。

たったっとかけてくる足音がして、
反射的に手を隠した。
はーいっ…あ、ないくん
りりりりりうら!?ぐ、偶然だね!!
いや偶然って…ないくんがチャイム押したんでしょ
あっ、そ…そういえばそうだったかも…?
…あかん、なんだこれ。

自分でも、わけがわからないくらいに緊張していた。

顔が熱くなって、
声が上ずって。

俺今めっちゃダサくない!?
えーと…とりあえず、中入る?
ぅ、うん…
促されるままに家の中へと足を踏み入れる。

いつも通りの部屋に、
一瞬だけ心が落ち着いた。

まだ紙袋は隠すようにして、
ソファに腰掛ける。
で、ないくん、なんか用事?
ソファの右側が沈む。
あ〜…っとねえ…
綺麗な赤色の瞳に覗き込まれて、
思わずたじろいだ。

少し目を逸らす。
その〜…りうらに、わた、渡し…
渡したいものがあるんだよね。

そう言おうとして、言葉につまった。

りうらは、そんな俺の様子に、
はてなマークを浮かべている。
わた…なに?
っ…と…
まずい。
何か、何か言わなければ。

というか、要件を話さなければ…!

ぐるぐるとまわる頭の中で、
一つずつ、言葉を組み立ててみる。

渡したいものが…

渡したい…

わたし、たい…

私、鯛…

…え、鯛って自己紹介すんの…!?
ってか、喋んの…!?

そんなぐっちゃぐちゃの思考のまま口を開く。
…鯛ってさ
うん
喋るのかな
…え?
ぽかんとした表情で、
少し間の抜けた声を出すりうら。

…うーん…ちょっとやばいなこれ…
思考が…思考がもう完全におかしくなってる…
いや、なんで急に魚の話になんの
ちょっと眉を下げて、
笑いをこらえているのがわかる。

うん、それはそう!ほんとに!俺も思った!
いや、鯛…鯛さ…美味しいよね
あぁ…まあ、そだね
再度、りうらは鈴を転がすように笑んだ。
かと思うと、こてんと俺の肩にもたれかかってくる。

頬にあたる、柔らかい髪。
っ…!?
一瞬、呼吸が止まるかと思った。

なんかいい匂いするし。やばい。
今日のないくん、なんか変だね
っえ…そ、そう?
吐息混じりに囁かれて、
心臓とはまた別のモノが暴走しそうになる。
てか、鯛の話するためだけにわざわざきたの?
!?…いやいやいやっ、まさかそんな…
まあないくんと会えて嬉しいからいいけど
…沈黙。

後———
(えええええええええ!?!?)
大絶叫(心の中で)。

今一度、まじまじとりうらを見つめた。

えぇぇりうらサン…?
なんで今日そんなデレデレなんですか…
な、ないくんのこと、大好きだから…だ、ょ…
!?!?
声にならない声が漏れた。

もはや、俺声に出してた?なんて聞く余裕もなければ、
ツンどこいったんだよとツッコむ気力もなく、
理性だって0.1%も残っていない。
…なに、その顔
…俺のりうらがかわいい…
あっそ
そっけない声。

どうやら、いつものツンデレが復活したらしい。

とくん、とくん…と、
さっきよりも優しい鼓動が聞こえる。

俺は、紙袋を、そっと前に出した。
…?
視線が落ちる。
…その、ホワイトデーってことで
まだ少し震える喉をこじ開けて、声を出した。
りうら、愛してる
赤い瞳がぱちぱち瞬いた。
…と同時に、自分でもびっくりするくらい顔が熱くなる。

やばい、絶対今めちゃくちゃ赤い。
…俺も
“愛してる”

その瞬間、理性の糸がぷつりと切れて、
俺はそのまま、キスを落とした———
…そういや、開けてなかったね、これ
りうらの口内を堪能して数分後、
ふと、彼が声をあげた。
中、みていい?
あ、うん…
こくりと頷いたけれど、
実際、それは空返事だった。

…かわいい。
かわいすぎる。

もうそんなような言葉しか出てこなくなった脳は、
りうらの動作ひとつひとつに悲鳴をあげている。

何から何までかわいいってどういうことだよ、がちで。

紙袋からは、ころん、と小さな音がした。
…キャンディ…?
袋の中から取り出された、透明な小瓶。

その中には、カラフルなキャンディが
ぎゅっと詰められている。
ないくんが作ったの?
っ、うん…まあ…はい
上目遣いで見つめられ、心臓がまた叫び出した。

りうらはキャンディを一つ摘まんで、光にかざしている。
綺麗…
その口元がふわりと緩んで、
俺も思わず口角を上げた。
…あれ、まだなんかあるじゃん
えっ?…あ〜…
そういや入れたっけ、なんて思いながら、
りうらと一緒に紙袋を覗き込んだ。

残り2つ、あるものをみつけた、その瞬間。

りうらの顔が、真っ赤に染まる。
…あれ、もしかして知ってた?意味
知ってるも何もっ…
白黒組に教えたの、りうらなんだからね!?
大方、兄貴にでも聞いたんだろうけど…
と呟いている彼の手にあるのは、
面積の少ない下着と、某乳酸飲料。

…知ってるんなら、話は早いかな。

そのまま、りうらを押し倒す。
…俺の最後のお返し、貰ってくれる?
相変わらず心臓はうるさいけれど、
余裕ぶってそんな台詞を吐く。

りうらの首が縦に振られるのと同時に、
俺の理性は溶け切った。

あの時、りうらがくれたチョコレートのような。
あるいは、昨日煮詰めた砂糖のような。

2人、重ねて、溶けていく。

甘い甘い、お菓子みたいに———

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