いつの間にか私は、野球部の部室から、鉄バットを拝借していた。
私、なんてもん持ってるんだろ…
仕方ないよ、念には念をだ…
教室はまさに、阿鼻叫喚だった。
見渡す限り、赤、紅、赫。
みんなが逃げようとする度に、ベチャベチャと鳴る。
ゴシャッ…
なんなの、あの子…!
もう、みんな死んだ。
あッ
ダメ、音立てたら…ソイツが…!!!!!!!
やっぱり!狭間くんに向かっていく!!
音に反応するんだ…!
今度こそ、絶対に助けるんだ…
動け、足!!!!!!!!!!!!
ソイツの頭に向かって、鉄バットを振り下ろした。
そしたら、その子は動かなくなった。
…死んだ、?
その時。
女の子の腕が徐に動く。
ソイツの腕が、狭間くんの頭に当たる。その腕には…
あの、「ステッキ」。
人生で一度も聞かないはずな程、えげつない音がする。
狭間くんの、頭の半分が消し飛ぶのが見えた。
手当り次第に殴った。
ソイツを、同じように消えるまで。
消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、
死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね
もう、立っていられなかった。
なにか音がしたけど、気にならなかった。
涙が溢れて止まらない。
後ろから、暖かい何かに包まれた。
ひ、と…?
世一。
小さい頃も、泣き虫だった私を、世一も泣きながら抱き締めて安心させてくれたね。
ごめん、ごめんね。
でも、安心もつかの間だった。
『まじかるー』
無くなったはずの頭が、キラキラとした光に包まれながら、再生していく。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。