第7話

Hit of masterpiece
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2023/06/14 13:49
アルside
ロロやリューヌ達がそれぞれの相手に苦戦する中、俺達も洗脳されたリズに悪戦苦闘していた。
セラ
セラ
リズの隣はこのうちだ。ほらリズ、やっちまいな!
リズ?
リズ?
…ハイ。殲滅シマス。
両手には改造ブキ。初めこそマニューバーだと思ったそれは、よく見たら2つ持ちできるように弄られたシューターだった。
また、洗脳されて攻撃力も上がっているのかほとんどインク攻撃が通らない。それならと接近して肉弾戦に持ち込もうとしたが、
アル
アル
うっ…!ハァ…ハァ…
蹴りが尋常じゃないほど重い。普段の鍛錬でもリズの蹴りは受けたことがあるが、比べ物にならない。
ライ
ライ
ぐへっ…!
ライも喰らってしまったようだ。うずくまる彼にリズは容赦なくインクを浴びせる。しかも、シューターとは思えないスピナーのような弾速で。何も知らない人が見ればライがいじめられっ子のようにも見えなくはない。
アル
アル
ライ!大丈夫か?下がれるなら下がった方がいい。
ライ
ライ
う、うん。わかった。無理はしないで…
ライが一旦下がり、ほとんどタイマン状態になった。
アル
アル
まさかここでもタイマンすることになるとはな…
ある程度ダメージを与えておかないとHit of masterpieceは上手く作用しない。改良を加えたがそれは別の所なのでどちらにせよリズに攻撃をしなければならない。普段なら躊躇なく攻撃できるが、何故か今日だけは躊躇ってしまう。動け…やれ…!
リズ?
リズ?
コロス…
やはり攻撃が早い。チャージャーで戦うのはあまりにも無謀だ。俺は少しゴリ押しして多少ダメージを受けつつ肉弾戦に持ち込むことにした。幸い、洗脳されてるとはいえ身体が鉄のように固くなったりはしてないようだ。接近すればきっと攻撃は入るだろう。
アル
アル
ごめん…リズ。 ちょっと手荒なことさせてもらうわ。
ライ
ライ
待て…アル。近距離戦なら俺が援護する。スピナーならあの弾速にも食らいつける。後方は任せてくれ!
ライ…一瞬止めようと思ったが、すぐにそんな考えはどこかに消えた。
アル
アル
わかった。くれぐれも無理はするなよ。
ライ
ライ
それはこっちのセリフだ!
そして俺達は2人で攻撃を開始した。俺は一旦チャージャーを置き、リズに接近する。その後ろでライがスピナーで弾を撃つ。あいつのブキは確かノーチラス。援護には持ってこいだ。
アル
アル
覚えてるか?解散前…毎日鍛錬でこうやって殴りあってたの。解散してからたまにしかやらなくなっちゃったけど…
リズ?
リズ?
…??
アル
アル
覚えてないなら思い出させてやるよ。
セラだったか?あいつが「リズの隣は自分だ」と言ったのがどうも引っかかっていた。確かに、昔はそうだったかもしれないが…と何故か少しモヤモヤする。
そんな気持ちで少し気を抜けばリズの重い蹴りをまた喰らってしまう。集中だ。今は戦うことだけに集中しろ。
肉弾戦でも彼女の攻撃は早い。もしこれがデフォルトなら、上位勢入りしていてもおかしくないほどに。だがこれは洗脳によって無理やり力を上げられているだけで、本当の強さではないのだ。
アル
アル
ハァ…強くなったな。それが本物かどうかは別として、リズは成長早かったよな。
リズ?
リズ?
…アル?…!!ナニヲイッテルノダ…コロス…
一瞬、リズが俺の名を呼んだ気がした。少しずつ正気に戻っているのだろうか。
ライ
ライ
アル!多分もう少しで必殺いけると思う!
ライが叫ぶ。俺も同感だ。
アル
アル
だいぶ力を手に入れたみたいだけど、それでも…ボーイはナメない方がいいぜ?
あの日…ステラとソルトが初めて拠点に来た日の鍛錬のようにリズを仰向けに押し倒し、彼女が起き上がる前に上半身を踏みつける。当時の感覚が蘇ってきた。
リズ?
リズ?
ウッ…コレハ…
やはり彼女も少しずつ思い出してきてるようだ。鍛錬の終盤、リズがキツそうになってからもう一発攻撃し、その後トドメを刺すのが俺流だった。
今回も同じだ。キツそうかどうかは別として、必殺前にもう少しダメージを与えておくことにしよう。
踏みつけている方のかかとを上げ、つま先で腹をグリグリして少しいじめてやる。今度はこっちのターンだ。
アル
アル
そろそろいいかな。
リズを踏みつけから解放すると、素早く元いた場所に戻りチャージャーを構える。必殺の準備をすると、どこを撃つべきかが明確なビジョンとして浮かんできた。
対ロロの時から改良し、より正確な狙撃が可能になったのだ。
アル
アル
何度やっても俺が勝つ…
「Hit of masterpiece-Criticalクリティカル!」
俺のブキは鉛筆ことR-PEN/5H。そこから発射されたフルチャージ5発分がそれぞれ最適な場所へと飛んでいき、全弾クリティカルヒット。リズはその場に膝をついた。
ライ
ライ
リズさん!
アル
アル
リズ!
ライと俺は同時に叫んで駆け寄った。しばらくリズは目を閉じていたが、ゆっくりと目を開けた。
リズ
リズ
あ、……アル…それに…ライ?
その目は、いつもの鮮やかなピンク色をしていた。
ライ
ライ
戻った!リズさんが戻った!
リズ
リズ
あたしは…一体…?
アル
アル
えっと…これはかくかくしかじか…
俺達はここまでのことを全て説明した。すると、リズは今にも泣き出しそうな声で言った。
リズ
リズ
あたしが…あたしがもっと強ければ…サディも離れていかなかったし…リーダーとしてもっと胸を張れたのに…
その…本当に申し訳ない。
俺は静かにリズの頭に手を乗せて言った。
アル
アル
大丈夫だ。リズは十分強い。そしてこれからもっと強くなるんだ。
ライ
ライ
リズさん、まだ戦える?無理しなくて大丈夫だよ。
リズ
リズ
少し休めば戦えると思う…
アル
アル
わかった。俺がついてるからライは前線の援護を頼む。
ライを戦線に復帰させると、俺はリズを抱えてその場から離れた。
彼女から零れた液体が俺の腕を伝った事も知らずに…

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