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第2話

プロローグ 後編
27
2024/02/15 22:55

その頃、遥と李仁視点────────
黒葛 猛
危ないっ!
突然、黒い影が見えた。

その影とハルの間に、あにきが割り込む。

その腕は、食屍鬼グールの鋭い爪によって引き裂かれた。

あにきはグールを蹴り上げたけど、それまでだった。

よろよろと立ちくらみ、倒れる。
赤羽目 遥
あにき!大丈夫!?
黒葛 猛
あぁ、大丈…夫……
大丈夫なわけが無い。

腕には大きな切り傷──しかもグールにやられたやつがあって、こんなの放っておいたら失血死してしまう。

それより、あにきはもうすぐにグールになってしまうだろう。

でも、今ここであにきを殺すことは出来ない。

そうすべきなんだけど、どうしても体が拒否反応を起こして、出来ない。
赤羽目 遥
りーくん!あにき任せていい!?
桃原 李仁
……わかった。やってみる
赤羽目 遥
誰か救急車と『ハンター』の人呼んで!

は……それまで耐えるから
桃原 李仁
耐えるって、どうやって……
声をかける前に、遥は行ってしまった。

直後、隣の車両から爆発音・・・が響く。何したんだろ……
気にしている暇は無い。

ハンカチに消毒液を垂らし、傷口を拭く。

相当酷い傷だ。普通にしていたら失血死してしまうが、グールのウイルスもどうにかしなくてはならない。

消毒液が染みる痛みを感じないほどに、あにきは弱っていた。顔色も相当悪いし、脂汗をかいているし。なにより、指先にはもうグールの鱗がついている。

だけど、よく良く考えればこれには意味が無いことに気がついた。あれには消毒液なんて生ぬるいものはほとんど効かない。さらっと任されてしまったが、どうしたものか……。

一か八か、やってみるしかない!

親指の皮をかみちぎって、その血を数滴垂らす・・・・・・・

ウイルスは多分これで何とかなる。

問題は、傷を塞ぐことだ。

絆創膏程度で塞げるほどの大きさでもないし、包帯なんて持っているわけもない。
水面 流翠
あにき、大丈夫そう?
桃原 李仁
どうだろ。今は祈るしか無いかな……
ふと、琉翠が傷口の上に手を伸ばす。

───本当に、綺麗な手だ…って、今消毒したばっかだって!早く止めないと……と思っていると、その手は、白く淡い光・・・・・を放ちだす。
桃原 李仁
え……!?
みるみるうちに、傷が治っていく。
水面 流翠
良かった……今日大丈夫な日だった
状況が飲み込めないうちに、救急隊員の人が到着し、あにきを担架に乗せて運んでいく。
ハンター
みんな、現場行くよ!
ハンターが到着する。

そういえば、遥は?

あの時、俺は耐えるとか言って向こうの車両に行ってたけど……

隣の車両を覗き込むと、黒焦げになった車両と、

炎の翼をつけた・・・・・・・遥が、ほとんどのモンスターを倒し終わったところがよく見えた。
なんかもう、訳分からん。

俺以外も、みんなそう・・・・・だったのか?
赤羽目 遥
ハンターさん!あらかたモンスターは片付けておいたので、ポータル塞いじゃってください!
ハンターの人も少しぽかんとしながら、ポータルを塞いでいった。
目が覚めると、そこは白い病室だった。

右腕を見ると、黒い鱗だらけだった。本当に、俺はグールになってしまったらしい。

ベッドから立ち上がり、見舞いに来ていたのであろう其愛の方へ向かう。

怯えている。まあ、そうだよな。俺、今グールだし。
黒葛 猛
其愛、ありがとうな。俺の事、見舞いに来てくれて
雪兎 其愛
あ、あにき……?襲わないの?俺の事?
黒葛 猛
何を言ってるんか、さっぱりやな。
俺ちゃんと意識あるし、大丈夫やで!
其愛が、わっと泣き始める。

そうしてしばらく泣いたあと、病室を出た。多分、李仁たちを呼ぶんだろう。

みんなが、病室に入ってくる。
桃原 李仁
あにきー!!!無事でよかった!
赤羽目 遥
よかった〜!またあにきのご飯食べられるのうれしい!!!
水面 流翠
……もうなんか、言葉出てこないや……
青澄 月咲
快気祝いどこかでしないとね!
医師も、奇跡だとそれしか言わない。

どうやら、俺の中で何か特殊なことが怒っているんだと言う。

少しして、女性が病室に入ってくる。知らない人だ。

???
黒葛くん、おめでとう。

キミ、CHASSAURで働いてみない?
ここは、2XXX年。突如として世界各地に現れた謎のポータル。そこから溢れ出す、ファンタジー世界の生物たち。この日本でも、現在までの累計で、約2000万人の人々が命を落とした。

しかし、それだけではなかった。ポータルとほぼ同時期にあらわれた『神殿』によって、異能力を持つ者たちも現れたのだ。

時の各国政府は、この生物たちを「モンスター」と名付け、異能力者や、その他有志を募り、モンスターを狩るハンター機関「CHASSAURシャソール」を立ち上げた。










俺は───

この地獄から、こいつらを守りぬくために。

過去の過ちを繰り返さないために。

この爪を振るうことを、決意した。

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