そこからまたしばらく歩くと、真っ白な壁の三階建てのマンションが見え始めた。それを柊鳴さんが指差す。
これは、見るからに前まで住んでいたアパートよりも良さそうだ。そこそこ裕福そうな割には小さいマンションなので、恐らく彼は家族と離れて暮らしているのだろう。
部屋の前で立ち止まり、彼がカバンから鍵を取り出す。その持ち手には、可愛らしい二匹の猫のキーホルダーが付いていた。
可愛いにゃんこの顔をぜひとも拝みたい。そう言おうとした時、自分の頭上に、柊鳴さんの視線が注がれていることに気が付いた。
よく分からないこと言うなぁ、この人……。
もし、私を馬鹿にする意図をもってそんなこと言っていたなら、本気で引っ掻いてやろう。
若干興奮気味に話す柊鳴さんが怖いが、家に住まわせてくれるので、気にする訳にもいかない。
ドアを開けてもらって部屋に入ると、想像より遥かに綺麗なリビングが見えた。
ソファに案内されて座って待っていると、ナッツが乗ったお洒落なココアクッキーが運ばれてきた。
彼がお飲み物を淹れている間に、一口齧ってみた。
もやし生活待ったなしの状況だったので、お菓子を食べるのは久々だ。ワンチャン泣けるくらいには美味しかった。
ブラックなのかな、思ったよりも苦そうだ。苦いのより甘いのが好きだと伝えておけば良かった。
そんなことばかり考えていたせいで、当たり前のことへの注意を怠ったのが原因だった。
息を吹きかけもせずに、淹れたてのコーヒーを口に含んでしまった。
ルカside
熱いから注意するように伝えれば良かったと思った時には、八幡宮さんは口を押さえて悲鳴をあげていた。
どう見ても大丈夫じゃない。だから彼女の方に近付いたつもりだった。
彼女の目を見るまで。
そんなに熱かったのか、驚いてしまったのか、ほんのり涙目になってしまっていた。
こちらを見た時に揺れた前髪の隙間から、少しツリ目の大きな瞳が覗いている。
思わず手を伸ばして頭を撫でると、彼女が軽く首を傾げた。
彼女はそう言った後、こちらに少し体を預けた。
そしていたずらっぽく笑って言う。
急に更新遅れましたが許してください!
明日が塾なので、次は土日のどちらかになるかと思われますが、気ままにお待ち下さい。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!