私の人生に救済を_。第六話
太宰、中原 ⇒ 18
夢主 ⇒ 11
誤字脱字注意
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夜、俺と太宰は珍しく華麗なスーツ姿で姐さんの元へ向かう。勿論、あなたを連れて。
「暫くの間、あなたちゃんとお別れだ」
「すぐに帰ってくるから心配すんな」
姐さんにあなたを預ける時、あなたが此方を見ながら心配そうに見つめてくる。俺はしゃがみ、太宰は屈んで、あなたの頭を撫でた。
「では、姐さん森さんをあなたちゃんに近づけないよう、宜しくお願いします」
「分かっておる、頑張るのじゃぞ2人とものォ」
「はい」
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ざわざわと周りの奴らが騒ぐ。全員、華麗なスーツ姿やドレス姿…盛大なパーティが今から開幕するかの様な緊迫感。否、今から開催されるのは人身売買を行っているオークション。俺達は此処を壊す為に今この場に立っている。
「目立たないように頼むよ」
「嗚呼」
事前に俺達は作戦の資料を読んでいる。作戦通りに的がやってくれれば行けるんだが…否、心配はしなくていいか。癪だが太宰の考えた作戦は殆どが作戦通りに行く。持ち前の頭脳と言ったところか…。
俺と太宰は別々行動。まずオークションでの目玉商品が出た所で太宰が照明を壊し、会場をざわつかせる。そして俺と芥川と部下達が客を殺し、開催者は皆生け捕りにする。至ってシンプルな作戦だ。捕らえられた子供はどうするか…1人は此方で受け取り、他の子供達は施設に預ける。と、太宰は言った。太宰が何を考えてるかは知らねぇが首領がOKを出したからには従うしかねェ。
ざっと今回の作戦を思い出していた時、照明の色がパッと変わった。
「さぁ、さぁ、やって参りました!今回司会を努めさせて頂く加藤と申します!以後、お見知りおきを_。この会場の中で狐の仮面を付けているもの達は全員、従業員となっておりますので何かあった際は遠慮なくお聞き下さいませ。」
加藤と名乗った奴は丁寧にお辞儀をする。その瞬間、会場内に大きな拍手が響いた。そして次々と上がる歓声と拍手。俺には何が良いのかさっぱり分からねェ、視線が会場の中央へと向けられる。にやにやと客全員が不気味な笑みを浮かべ、拍手をする姿は気味が悪く、反吐が出る。
次々に商品となる子供達が出てくる。大きな檻の中に閉じ込められ、目の前の大人に怖がり、震える手足、そして目からは大粒の涙が出ていた。そんな子供に金額が付けられ、落札されていく。
誰もがこれを以上な行為だと認めるだろう。それが普通の人間ならの話だが…。裏の世界ではこんな事当たり前の様に行われている。それが現実だ。表の世界では有り得ない行為と思われている行為を裏の世界では堂々とやっている。そしてその客になるのは表の世界での政治家や大企業のトップ…そんな奴らが今此処に居る。反吐が出る話だ。
「さぁ!皆様お待ちかねでしょう、お次は今回の目玉商品のご登場で御座います!綺麗な黒髪、そして白い肌、人形の様な美しさを纏った少女を是非、手に入れては如何でしょうか?」
目玉商品が出てくると同時、パリンと照明の割れた音が響いた。作戦開始の合図だ。
客はザワザワと騒がしくなる。静かに、そして大胆に客の息の根を止めていく。1人の悲鳴が上がる前に喉を切り裂き、床に血の水溜まりが出来始める。俺と芥川の体は血塗れになっていった。
数分も経たずにこの会場は血の海と化し、悲鳴の上がる声は聞こえなくなった。
「俺達の痕跡は無くせ、死体も全て片付けろ、手ェ抜くなよ」
俺は部下達に指示を下す。そうしてこのオークションは終わりを告げた_。
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俺達は顔に付いた血をある程度拭いた後、ポートマフィアへと戻る。
「蛞蝓とポンコツは血生臭いよ、早く風呂へ入ったらどうだい?」
「だ、か、ら、その為に自室へ向かってんだろうが、ぶっ飛ばすぞ」
「や、僕が…臭い…」
「おォおォ、真に受けんな、芥川」
「えと…」
太宰の隣に居る子供。今回のオークションで目玉商品として出されていた子供だ。本当に太宰は何を考えているのか分からねェ。どうすんだと聞いたが帰ってきた答えは意味の分からない事だった。「あなたちゃんに選択肢を選ばせる為だよ」と、そう言った。あなたに選択肢を選ばせる…選択肢…?否、考えるだけ無駄だ。俺は考えるのを辞めた。
「嗚呼、君の名前を聞いていなかったね、名前はなんて言うんだい?」
「…るか」
「そうか、るかちゃんか、私の名前は太宰治。そして隣に居るのがポンコツと蛞蝓だ。宜しくね」
るかと名乗った少女はキョトンと首を傾げ、「蛞蝓さんと…ポンコツさん…?」と小声で呟く。とても不思議そうな顔で此方を見ている、るか。
「違ぇだろ!俺の名前は中原中也だ!蛞蝓じゃねェ!そして俺の隣に居る奴が芥川だろ!間違った事教えてンじゃねぇよ!!」
「僕の名は芥川龍之介…否、ポンコ_」
「手前までも信じるな、阿呆!…ったく、何で俺が手前にツッコまなきゃいけねぇんだよ。太宰絡みになると馬鹿になるのやめろ、芥川」
ちっと舌打ちが零れる。俺はこの数分の間でどっと疲れてしまった。全部太宰のせいだ、と自分に言い聞かせる。1つ、俺のため息が暗がりの廊下で響いた。
「お疲れのようじゃな、中也よ」
「っ!姐さんっ!…とあなた!?」
「なんじゃ?私が居るからのォ、あなたも居るのは当たり前じゃろ?」
「姐さんっ、今は…」
そう、今の俺と芥川は血塗れ状態。あなたに会えば、間違いなく避けられる。芥川はまだしも、俺は避けられる事は嫌いだ、特にあなたに避けられる事は。しかもあなたは過去に色々あり、血の匂いに敏感かも知れないのだ。だから姐さんの部屋に近づかない様、自室へ向かっていたはずが…恐らく、姐さんとポートマフィア内を散歩していただろうあなたと出会ってしまった。あなたは今の俺達を見て、どう思うか…じっとあなたの顔を見る。
「…!」
あなたは何かに気付いた様に慌てた様子で此方を見る。そして首に下げていた小さい携帯の様な物に文字を打ち出し、此方へ見せる。
「_けが、してるの?_」
あなたは俺達を避ける事無く、血塗れの俺達を見て、体の心配をした。気味悪がったり、逃げる事無く…そんなあなたの行動にぷはっと小さな笑い声が出る、次第にその声は段々大きくなり、最終的には大きな笑い声が薄暗い廊下に響く。あなたの行動を見て、安心したかの様に笑った後は自分が避けられると、そう心配していた俺が可笑しく思えた。
「_どうしたんですか?_」
とあなたは文字を打ち、俺に見せる。
「悪ぃ、悪ぃ、つい、な?…安心しろ、この血は俺の血じゃねぇよ」
そう言い、俺はしゃがんだ。ポンポンとあなたの頭を撫でれば嬉しそうな顔をし、また文字を打ち始める。
「_なら、よかったです_」
俺に文字を見せた後、にこりと笑うあなた。それが愛おしく、もう一度わしゃわしゃと頭を撫でた。
「その携帯は私が部下に頼んでおいた特注品かな…?」
「そうじゃ、お主らがあなたを私に預けた後、私の元に届いたものじゃ、あなたは覚えるのが早くてのォ、もう使いこなしておる」
「おォ、すげぇな、あなた」
色々と考え事をしていて気づかなかったがあなたの服装が和服になっている。これは完全に姐さんの仕業か。ところ無しか姐さんが嬉しそうな雰囲気を出している気がしている。
「_ありがとうございます_」
「あ、そうだ、あなたちゃん。此方、るかちゃんと言う女の子だよ、君と一緒にオークションに売られていた子だ、どうだい?仲良く出来そうかい?」
とポンッとるかの背中を押す太宰。前に出されたるかはそのままあなたと向き合った。
暫くの沈黙が流れた後、るかが口を開いた。
「私…ね、るかって言うの、宜しくね…」
警戒しているのか、るかはぎゅっと手を握り固める。あなたの返事は1つの小さな頷き。
今は警戒しているが、後々、警戒は解けていく。それまで俺達は見守る事にした。
その時、太宰が不気味な…気色の悪い笑みを浮かべたのを気付いていた者は誰一人として、居なかった_。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。