後ろから誰かに声をかけられて振り向くと、
声の主は真っ白なパーカーを身にまとい、深くフードを被っていた。
なんとなく似ているとは思った。
関西弁で少し高く優しい声。
俺が好きな、大好きな人の声。
本物だ、画面越しに見るだけでも迫力がすごくて
今日初めて自分の目で直接歌ってるところを見れたのに
さっきから会話してるなんて…
初めて聞いた。
確かにおらふくんは動画のコメント数も多くて人気なのに
今思えば今回のライブの最後の方、合いの手が減ってた気がする。
それでもお金目当てでしか見てないなんて酷すぎる!!
おらふくんが自分の名前を言えと言わんばかりの真剣な目付きで俺を見る。
暗くてよく見えないけど、顔が少しだけ赤くなってる気がする。
こんな表情もするんだと、特別なものを見れた満足感で心が満たされる。
今思えば、こんなに自然に笑っているのを見るのは初めてだ。
ライブの時とは笑い方が全然違うから。
もう会えないと思うと、
さっきまで幸福で満たされていた心が一気に打ち砕かれた。
もっと話していたい、そう欲が出てしまう。
おらふくんが顔の横でヒラヒラと手を振りながら笑顔で去っていく。
もう二度と、会えないかもしれない。
お礼を言う為に歩みを止め、再び笑顔を浮かべるおらふくんは
どうしようもなくカッコよくて、それでいて優しい。
また会えるだろうか。
そう考えていると、不意におらふくんの言葉を思い出す。
"また会おうね"
わずかな期待を胸に、俺は会場を出た。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!