お兄さん……
私ね、謝らないといけないことがあるの。
私結局死ねなかった。
ああ、謝らなくていいって?
そうだね。
お兄さんはもともと私が生きることを望んでた。
私なんかよりお兄さんの方が生きる価値があったのに。
お兄さん、いい匂いするでしょ?
今ね、暁人さんがホットケーキ作ってくれてるの。
朝ごはんだって。
いつもは私が作ってたから、作ってもらうのって新鮮だね✨
ねぇ、私のこと、ずっと見守ってきてくれたんでしょう?
ねぇ、ママ。
お兄さんから聞いたの。
ママが死んじゃったのは、私が追い出されてすぐだったんだね。
ママがお父さんに怒って、そのまま……って感じ?
ごめんね。
私が追い出されなかったら、ママは今も生きれてたのに。
あの日ママが死んでから、私のことずっと見てきてくれたんだね。
だって、おかしいもん。
橋で私が自殺しようとしてることを知ってる人はいなかったし。
暁人さんは鈍感だから私の考えてることなんてわからないはずだし、その場に人もいなかった。
なのに何故か暁人さんはあの場にいた。
だとしたら、考えられるのは……
それだけだもん。
私が自殺をやめた本当の理由、聞きたい?
あの日ね、飛び降りようとしたら暁人さんの声が聞こえてきて、焦って降りようとしたらさ……
ママとお兄さんがいるんだもん。
びっくり。
あんなに苦しそうな顔されたら私は……
生きてくしかないじゃん。
お兄さんとママを死なせた罪、私は”生きること”で償っていきます。
ねぇ、ママ。
なんか言ってよ。
そんなに悲しそうな顔で見ないで。
最初から気づいてたよ。
あの時、私が「見ないで」って言っても目を離さなかったのは、
どうして?
そんなに私が死ぬのが見たかった?
そう思ったよ。あの時は。
でもね、今ならわかるの。
きっとさ、暁人さんが来るまで時間稼ぎしてくれてたんだよね。
ママとお兄さんは似てたもんね。
優しいところとか…病気にかかってたこととか……
ねぇ、お兄さん。
私をここまで育ててくれてありがとう。
私気づかなかった。
両思いだったんだよ。私たち。
まぁ、お兄さんは気づいてたよね。
さっすが!!
ねぇ、置いてかないで。
それ以上行ったらダメ。
もう会えなくなっちゃう。
このまま時間を止めてたいの。
それ以上下に行ったらっ、
ああ、そっか。
お兄さんとママは私に自立してほしかったんだね。
ありがとう。
ねぇ、お兄さん、
この前さ、遊園地で見た茜色の空の話したよね。
その時思い出したんだ。
お父さんと昔茜色の空を見て、「綺麗」だって話したの。
でもね、私、
お父さんと見た空よりも、
あなたとみた茜色の空は、世界で1番、
綺麗だった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。