第3話

【三話】
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2026/01/08 08:00 更新
小さな手にクレヨンを握り、白く大きな画用紙をカラフルに彩っていく。

ふと、頭を誰かに撫でられる。
見上げると、口元が優しく微笑む母親だった。

描き終わった画用紙を元気よく母親に見せると、笑顔で褒めてくれる。
その笑顔が心地よくて、はしゃぎながら、もっと、もっと描いた。

気づけば、新品のクレヨンは短くなっていた。
どれも、もうすぐ使い切ってしまいそうだ
フワリと、浮くように意識が上がる。

目を開けてしばらく天井を眺めていた。

久しぶりに、幸せな夢を見た気がする。
この幸福感のまま二度寝でもしてしまおうかと思うが、今日は月曜だ。
学校がある。

体を起こそうと寝返りを打つと、
ベッドの縁に手をかけ、下から覗き込むような二つの目と目が合った。

カフちゃんだ。

「やっと起きたか、寝坊すけ。」

「うわっ!?」

まさかの人物に、驚きと、顔の近さに顔を赤くする。

「な、何でいるの?」

「窓から入った。」

視線を窓に向けると、開いていて、涼しい風が入ってきていた。鍵開きっぱなしだったのか…。

「それより、そんなに呑気にしてて大丈夫なの?」

首をかしげると、カフちゃんはスマホを指さす。
咄嗟に電源をつけると、画面には七時半の数字。

遅刻だ。

ベッドから飛び出し、急いで着替えて荷物をまとめる。
朝食は取れない。昼の給食まで我慢するしかないが、特に問題はない。

頭の中で学校へ早くいくルートを考えながら、一階へ降り、靴を履いて玄関を飛び出た。

「行ってきまーす!」


急いで家を出て、近道などを駆使し、どうにか遅刻は免れた。
気づけば、もう6時間目の授業だ。

今は体育。
これが終われば、あとは帰宅するだけ。

校庭に並べられたハードルを飛び越えながら走る内容で、今は自分の番が来るのを待っている。

待っている間、ふと体育倉庫に目が向いた。

倉庫の隅から、またあの影がこちらを見ている。

あの不快感を覚える。

影は動かず、ただ、じっとこちらに視線を向けてくる。

クラスメイトが走る足音も、風の涼しさも、全てを取りあげられたような。
そんな、ただ見つめ合うだけの時間が過ぎていた。

「ハル?お前の番だぞ。」

クラスメイトが声で、スッと意識が戻ってくる。

俺は特につまずくこともなく走り、また列へ戻った。

もう一度、体育倉庫の方を見ようとしたが、
授業の終了を告げる笛が鳴り、クラスメイトに腕を引かれてそのまま戻される。

振り返った一瞬、体育倉庫の隅には、まだこちらを見つめる影がいた。

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