夜になった。
秒針の音がうるさい。
そろそろ、3時を回る。
待つと決めたんだ。
あの子に寄り添うと決めた。
でも、いつまで経ってもあの子は帰ってこない。
最初はバイトが忙しいから、帰ってくるのが遅いと思っていた。
…流石に遅すぎる。
こんな時間に帰ってきても、まともに寝れないし、なによりこんな時間まで寝ずにやれるわけがない。
昨日はころちゃんが話していたらしいから帰ってきてはいた。
なぜ今日は帰ってこないのか。
なにか、帰れない理由があるのか、それとも、ただ単純に帰りたくないのか。
とにかく、こんな時間まで帰ってこないのはすごく心配だ。
だが、待っていてもできることはなにもない。なにか、さとみくんのこれまでの行動を思い出して、場所を特定できないか。
さとみくんはよくパソコンを触っていた。
そこになにか手掛かりがないだろうか。
俺はさとみくんの部屋にあったパソコンを持って、さっそくたちあげた。
…よかった、パスワードは設定されていない。
どうやらさとみくんのパソコンはスマホの方と連動しているらしく、SNSやLINEもパソコンに入っていた。
LINEには特に手掛かりは無い。
SNSには?と思い、数個あるSNSのアカウントを片っ端から見ていく。
でも、なかなか見つからず、もしかしたらどこにも手掛かりがないのかもと思った。
残り1つのSNSアプリを開く。
そこには、驚くべきことが書かれていた。
『親を探しています』
体が動かなかった。おや…?どういうこと?
読み進めていると、本当に親探しをしているアカウントだった。
親の見た目の情報が書かれていて、見つけたら連絡をしてくださいと書かれている。
どういうことなんだ…。
もしかして、さとみくんだけ、血が繋がっていないということか。
ただ、この親探しというものが、最近のさとみくんの様子がおかしいものの正体と言うことはわかった。
…あれ、DMにもなにか残っている。
見たところ、昨日連絡した後が残っていた。
開いてみると、誰かと連絡してる?
『君の本当の親』
『ぼくの家に来ればいいさ』
DMの内容にはさとみくんの『本当の親』との会話が残っていた。
しかも、家に行ったという証拠も残っている。
昨日の2時ごろ。
…間違いない、さとみくんはこの人物の家に行ったっきり帰ってきてない。
なにもないなら、それでいい。
でも、明らかに怪しいこの『親』という人物が、さとみくんになにかした。と、思ってしまう。
とにかく、今すぐ家に行かなければ。
でも、どこにあるかは書かれていない。
…弟が、ピンチかもしれない状況なのになにもできない。
大切な弟が帰ってこないのに、なにもできない…。
なにも、…なにも…っ、
ぷるるるる
俺のスマホが鳴った。
誰だよ、こんな時間に。
スマホを開いてみると、ある人物から。
『さとみくん』
電話の相手はさとみくんだった。
俺は迷う暇なく通話ボタンを押した。
どこにいるの?さとみくん…!
さとみくんの声はか細くて、今にも死んでしまいそうな声だった。
さとみくんの声はすごく小さくて、聞き取ることができなかった。
な?て?どういうことなの?
『助けて』
確かにそう聞こえた。
やっぱり、本当の親になにかされたんだ。
なら、いますぐに助けに行かないと…!
でも、どうしたら…
さとみくんや、他の兄弟にもつけたはず、
もしかしたら…、もしかしたら、必要かもしれないと思って。
俺は位置情報アプリを開き、さとみくんの場所を探す。
通話をしたあとだ、スマホは起動している。
どこだ?…どこだ、?
さとみくんは隣町の、アパートの中にいる。
俺は、急いで家を飛び出した。
頭は真っ白、ただ、さとみくんの無事を確認しなければという思いでいっぱいだった。
ごめん…!まったく、気づいてあげられなくて。
自分だけ血が繋がってないって、分かったら、兄弟たちと一緒にいるのは、辛いよね…、なのに、なにも気づいてあげられなくてごめんね…
もう、1人にしないから…!
また、抱きしめるから…、
また、一緒にゲームするから…、
君をもう、ひとりぼっちにしないから…、
だから、死なないで、さとみくん。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!