遠くから誰かの声が聞こえる
ぼんやりと、意識の奥に響く。
少しだけ近くなった。
だんだんうるさくなってきて——
重たいまぶたをなんとか開けると、目の前に二人の顔。
ぼんやりしたままそう言うと、
ぽん、と頭を撫でられる。
侑にも、同じようにくしゃっと撫でられて。
そう言いながらも、少しだけ笑ってしまう。
こういうのには、昔から慣れている。
身支度を整えて、制服に袖を通す。
鏡の前で、少しだけ立ち止まる。
初めてきる稲荷崎の制服が新鮮で——
ほんの少しだけ、気分が上がった。
三人で家を出る。
朝の空気は少しひんやりしていて、でも心地いい。
そう答えた瞬間、
朝から騒がしい。
でも——
学校に到着しあなたの下の名前は転校生なので職員室へ
行き先生とのお話があるので廊下でバイバイした
ガラッ──────
先生と一緒に教室へ向かう。
ガラッ——
扉を開けると、一斉に視線が集まった。
休み時間。
クラスの何人かに声をかけられる。
質問攻めにあいながらも、なんとか答えていく。
やっと質問攻めを乗り越え少しだけ一息つく
机に軽く突っ伏しそうになった、そのとき。
2人が声をかけてきた
突然の質問に、顔をあげる
一瞬、言葉の意味を考える。
放課後。
体育館の前に立つ。
横から治が聞く。
軽く頭をぽん、とされる。
その一言で、少しだけ力が抜けた。
扉に手をかける。
新しい場所で。
もう一度——
自分の居場所を見つけるために。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!