第3話

7話 無力
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2023/05/29 11:23 更新



彼の話を聞き、俺は息を呑んだ。




『愛』。



これよりも俺が嫌悪しているものは無かった。


ぺんと
ぺんと
…俺は話したよ


えんちょう。
えんちょう。
え?


ぺんと
ぺんと
だからさ、君の話も聞かせてよ



えんちょう。
えんちょう。




彼は優しげな、でも有無を言わせない口調で言う。





俺はしばらく黙って彼の瞳を見つめていた。




ぺんと
ぺんと
話すの嫌?



彼は聞いた。




寂しげな瞳をしていた。



俺はふう、息を吐いた。



えんちょう。
えんちょう。
……なんで、ききたいんだよ



俺は言う。




呟くように。



ぺんと
ぺんと
…だって…



彼は何かを言おうとした。




だが、思い直したように口を閉じる。




ぺんと
ぺんと
……………興味がある、から…



長い、永遠にも感じられるほどの沈黙の後。





彼は曖昧な笑みを浮かべて言った。




えんちょう。
えんちょう。
……


俺は黙っていた。




息を吸う。



吐き出す。



彼の視線を感じた。




えんちょう。
えんちょう。
……わかったよ、話す



話したいわけではない。





あまり、話したくはない。





思い出したくないから。




でも、話そうと思った。





なぜだろう。




なぜだろうか…。







えんちょう。
えんちょう。
俺が、クラスの人たちに、犯罪者って言われてるのは…知ってるよな



ぺんと
ぺんと
…、うん



えんちょう。
えんちょう。
教えるよ、その理由




ぺんと
ぺんと
 



俺ははぁっ、と息を吐いた。





思い出す。




あの時の、ことを。











(モブは使い回してるけど全部別人だと思ってください…)




くらすめーと
くらすめーと
…うっせぇよ!



くらすめーと
くらすめーと
俺らに口答えするわけ?



えびす
えびす
っひ…



えびす
えびす
ごめ、ごめんなさいッ…




えんちょう。
えんちょう。
っ…?!




確か、俺が中2になったあたりだろうか。






弟が、いじめに遭っていると知った。




身体のでかい数人の男子たちに囲まれているところを。




見てしまったのだ。




俺は、建物のかげからそっと覗いていた。





スマホを取り出した。




その現場を撮影して、大人に言うつもりだった。





畜生。




許せない…。




どろどろした溶岩のような怒りを感じながら、俺はそれを見つめていた。




弟が、その場を1人で離れていった。




聞いたところ、飲み物を買いに行かされたらしい。




その時だった。



くらすめーと
くらすめーと
おい



ばし、と背中を叩かれる。



えんちょう。
えんちょう。
っ…!



くらすめーと
くらすめーと
何見てたのお前




くらすめーと
くらすめーと
あ?チクる気なわけ?




くらすめーと
くらすめーと
ざけんなよお前



俺は黙っていた。





そいつらは本当に年下かよってなるくらい、身体がでかい。




それに、威圧感。





勝てない。




喧嘩しても、絶対に勝てない。



くらすめーと
くらすめーと
痛い目に遭いたくなかったらよ、チクんじゃねぇぞ



どん、と胸元を押されて、後ろに倒れる。




えんちょう。
えんちょう。
っ…





見下ろされる。





この、威圧感、圧迫感。





凄まじい恐怖。




くらすめーと
くらすめーと
てか、こいつ、あれじゃね?


くらすめーと
くらすめーと
あ?




くらすめーと
くらすめーと
あいつの兄



えんちょう。
えんちょう。
……



くらすめーと
くらすめーと
あーーどうりで似てる!




くらすめーと
くらすめーと
なんかこの…なんて言うか、雰囲気?



くらすめーと
くらすめーと
そうそう。弱者の雰囲気っていうの?



くらすめーと
くらすめーと
それなー!



えんちょう。
えんちょう。
…くっ


唇を噛む。





何も、できない。




俺には…。



くらすめーと
くらすめーと
あ、なんだよ、文句あんのか?




えんちょう。
えんちょう。
…うっせぇ



くらすめーと
くらすめーと
お?やんのかよ…!




えんちょう。
えんちょう。
っ…いや




つい思わず心の中の声を出してしまった。





1人が、俺の胸ぐらを掴む。





そして、俺の頬を力任せに殴った。





乾いた音が響き渡る。



えんちょう。
えんちょう。
っは……




痛みに顔を歪める。






頭がくらくらする。







視界がぼやける。






耳鳴りがする。





口のどこかが切れたらしく、血の味がする。





えんちょう。
えんちょう。
い…たッ…




頬を抑える。





くらすめーと
くらすめーと
なんか、こいつの態度むかつくんだよな〜




くらすめーと
くらすめーと
わかる〜!あいつと似てるからかな?




えんちょう。
えんちょう。
………俺の…、俺の弟が、何したって言うんだよ




くらすめーと
くらすめーと
は?




くらすめーと
くらすめーと
べつに、何もしてねぇよな




くらすめーと
くらすめーと
ああ…いや、でも、したかも




くらすめーと
くらすめーと
見ててむかつくんだよなぁ、あいつ




くらすめーと
くらすめーと
なんか、のろまだし、色々無理




くらすめーと
くらすめーと
殴ってやったら泣きながら謝って…それはまじ面白かった




くらすめーと
くらすめーと
それなぁ!




えんちょう。
えんちょう。
……




俺は呆然としていた。





そこにあるのは理不尽な事実に他ならなかった。





そして、弟を守ることもできない、弱虫な兄だった。




俺の胸には、無力感と怒りが混ざり合って広がっていった。








珠那
珠那
どうも…



珠那
珠那
サボり続けてた珠那さんです。




珠那
珠那
なんかねぇやる気出なくて





珠那
珠那
気づいたらこんなたってたわ笑




珠那
珠那
これからは多分ちゃんとやるはず

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