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第3話

現実
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2023/11/05 14:47 更新
「ー、ーシディ、起きろ」
「…」

体を揺らされる感覚に目を開けた。
眩しさに瞬きした拍子に涙が頬を伝う感覚がする。

「…カゲチヨ?」
だんだん意識が覚醒してきた。寝てしまっていたのか。
「あ、シディ起きた?」
後ろから声がかけられ振り返るとヒサメが何やらお菓子を持って来ていた。
「すまない、寝てしまっていた」
「いや別にいいけどよ、特に依頼もねぇし」
「そうか、ならよかった」
「あぁ。…いや、ごめん、気になるわ。」
「?」
カゲチヨが困ったような表情になる。
躊躇うように口を開いた。
「お前、なんで泣いてんだ」

「…?」
泣…?確かめるようと向かいのソファに座ったヒサメの方を見る
「シディ、さっきからずっと泣いてたから、心配になって起こしたんだよ」
ね、とヒサメがカゲチヨに同意を求める。
「でお前はなんでピンと来てねぇんだよ」
「泣いて、るのか?」
「あぁ、…聞かなくても感覚でわかるだろ」
カゲチヨが意味がわからないと言うように呆れて言った。
それはそうだ、泣いてるのに自分でわからない訳がないんだが、いまいち実感がない。確かにあまり泣くことはないがそれが原因というわけでもないだろう。
「…そうだな…」
手で触ると濡れているのがわかって、初めて実感した。
「変な奴だな…で、なんで泣いてんだ。珍しいなお前が、泣いてるなんて」
「うぬ、…なぜだろうか、」
「いや俺らが聞いてんだって」
意味がわからないといったように言う。
「、夢を見た」
一つ、心当たりがある。二人が俺の方を見るのがなんだか申し訳なく感じて目線を落とす。
「昔のことと、…知らない出来事だ、母さんが、俺を逃がしてくれた時を見た。もう一つ、二人の夢を見た」
「二人は死んでいた。俺のせいで。あんなの、見たことないのに、やけに鮮明で、本当にあったみたいだった」
ただ思い出したことを淡々と、言葉に落とすだけだった。それに悲しさや、辛いなどの感情は乗らない。俺が何か思うべきことではないからだ。
「夢でも泣いていた気がする。だから泣いているのかも、しれない」
黙って俺の話を聞く二人に居た堪れなくなる。
「終わりだ、特に他に何もない」
思わず、無理矢理そう言って話を切ってしまった。
「シディ…大丈夫?」
「?」
二人の表情が曇る。何故、二人が何か思う要素はなかっただろう。
「何がだ?」
「お前、いや…そんな淡々と泣きながら話されたら怖いに決まってるだろ。とりあえず泣くなよ」
「そうは言われてもな…」
さっきから止めようとはしている。だがいざ意識的に止めろと言われると、どうすればいいか分からない。
「止められないんだ。すまない、気にしないでくれ」
「…無理にとは言わないけどね、見てると心配になるから…」
「すまない」
「…シディ、さっきのその夢?の事、どう思ってんだ?」
予想していない質問に口籠る。どう思っているか、
「…よく分からない。母さんのことは、もう受け入れている。ただ、…二人が死んでいたのも見て、まるで自分が責められている、ような気がした。…所詮夢だ。気にする事じゃない」
ただ、今まで会った人皆、俺の力で守りきれなかったなと、実感しただけで。
「シディ、…あー…なんだ、俺らを守る事だけがお前の価値じゃないからな?」
「…む?」
それは、どう言う意味の言葉なのだろうか。ヒサメもそうだねと同調しているが、
「俺らを第一に考えなくてもいいし自分を責める必要なんてない。」
「そうだよ、理由とかなくて、シディはここにいる意味があるんだよ。居場所が」
「…」
いまいち、二人のいう事がピンと来なかった。ただ、二人が優しいのは分かる。
「…二人は優しいな」
「んだよ、急に…」
「ただ思っただけだ」
「そうだねーカゲは優しいもんねーシディのこと心配してたし」
「二人はって言ってたの聞こえてねぇのかよ!俺だけいじんな!」
二人が軽く言い合いになる。側から見たら、仲がいいなとしか見えないが。

「…」

俺の、居場所か…。初めから、心配しているつもりのあるものではない。二人は、優しいんだ。居場所がなくなると、心配するのは失礼だと思った。

そう、優しいんだ。二人は。俺と違って。俺に二人の優しさに守られる居場所は必要ない。いずれ、居なくなるのだから。二人の気持ちをうまく受け取れない俺は優しくないんだ。





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