【 注意事項 】 ジャンル … コメディ(感動系?)←?
・元ネタ ⇒ 第五人格
・前回の続きでござんす。最終回。
・第五人格を知らない人でも解説する((
・⚠︎キャラ崩壊の恐れあり
・⚠︎解釈不一致の恐れあり
・⚠︎口調、性格迷子
・キャラの背景推理(過去)のネタバレを含みます
・感動系書くの下手くそです。
お義父さんからの陰湿な意地悪は、全て夫が居ないときだった。
私と一緒にいる時だけ、気を許した様子では無かったが手を出そうとはしなかった。
でも私のことがよほど気に食わなかったらしい。
そりゃそうだ、まさか自分の息子が異国の人を連れてくるなんて思いもしなかっただろう。
夫は秀才ってわけでもなかったけど、それでも優秀な方だった。
お義父さんは、良いお嫁さんに嫁いでほしかっただろうに。
それなのに、私が―――
荷物をきちんと整えて、別れを告げてから出ていくなんて、
顔を紅に染められたときの私にはそんな考える冷静さは無かった。
一刻も早くここを出たい、夫にこの顔を見られる前に。
逃げるように寝室へ行き、最低限の荷物だけを詰め込むように鞄に入れた。
そのまま顔をタオルで抑えて、人目につかないように家から飛び出した。
幸い目は傷つかなかったが、私の顔には心と同様に深い傷を追った。
逃げるように見知らぬ国をさまよっていた最中に、風の噂で彼のことを聞いた。
どうやらお義父さんは、『雇い者と浮気していて罪悪感で出ていった』と、
仕事から帰ってきた夫のマールスに、悲しみを装うように言ったのだと。
もちろん、内心では喜んでいるだろう。
忌々しい異邦人を追い出せて、自分の息子を救えたことに……
私は悪者でいい、だから、せめてこの無駄だった時間を、
これからの将来のために、夫には、同じ国の綺麗な人と初めから歩み始めてほしい――
私の顔が貼られたポスターを見た。
詳細には、『この女性を探しています』と。
ああ、マールス、お義父さんの言葉を信じなかったのね。
きっと私のことを信用して、私が別の理由で出ていったと信じているのね。
なんて私は幸せ者なんだろう、こんなに愛してくれる夫がいたなんて。
きっとやり直せる、彼に事情を話して、
まだ努力すれば、きっと明るい未来の光が差すはず―――
この傷が、なければ。
顔を傷つけるのは、女性にとって非常に残酷な事。私も例外では無い。
それに、大きなこの傷。おでこから左耳にかけてまでの、深く大きな傷。
おしろいでなんとか隠している一方だが、きっと夫には気づかれてしまう。
あの人は私をよく見てくれる人だから。
だからこそいけないのよ、この傷を見られればきっと見放されてしまう。
彼はそういう人じゃないって分かっているけど、私は信じることができなかった。
今でも私を探している彼には、面目が立たない。
だけど、最初は自分の事を悲観していたけど、いつしか鬼が宿った。
彼が私の事を探してくれる嬉しさに、
どうしてもっと早く気づいてくれなかったのかという怒り。
彼を愛していた、それはもう本当に。
でも、自分の境遇を見ると、どうしても被害者面をしてしまう。
私は努力していた、だからこそ言い訳がしたかった。
指から離れた蝶が、花を求めて他の所へ飛んでいってしまった。
憂いた目を伏せる芸者……いや、美智子に対して、
私はいつの間にか涙が乾いた、強い眼差しで瞳を向けた。
口調を少し強くして、更に眼差しを強くする。
少し強く言い放った後に、ベンチにうずくまるように膝を上げる。
眉を下げて笑う私に、美智子が問いかけるように静かに零す。
私はそれに、少し黙った後に小さく返事をした。
「世間で言うDVってところかしら?」と私はおかしそうに笑ってみせるが、
美智子は表情を少しも変えずに、真剣そうに話を聞いていた。
なんだか浮かれている自分が途端に恥ずかしくなって、真剣な顔に戻す。
過去の記憶が、ムービーのように脳内で再生される。
背中の傷を抑えるように、私は自身の背中に手をあてて顔を歪めた。
長いまつ毛を伏せて、涙の跡がついた頬に髪がたなびく。
あっはは、とおかしそうに笑う私に、美智子は黙りこくったままだった。
訴えるように、思い出すように大声で喋る。
頬を何かがつたる、けれど口角は上がったままだった。
そこまで喋って、美智子がすっとベンチから立ち上がる。
綺麗に背筋を伸ばした、気品に満ち溢れた美智子の後ろ姿は――
――息を呑むほどに美しかった。
その瞬間にざあっと風が吹いて、思わず目を閉じてしまう。
髪が目にかかる、はっとして目を開けるが、そこに美智子の姿は無かった。
蝶のように、どこかへ行ってしまった。
ベンチにぽつんと一人残された私も、少し呆けた後に立ち上がった。
その意味はよく分からないけれど、
昔の不満を話せて、少し心が軽くなったかもしれない。
心のモヤが、消えはしないけど、微かに霧が晴れた。
館に戻ると、さきほどの四人と遭遇してしまった。
しまった、今朝の事で気まずいんだった……
「あの、その……」とモゴモゴとしていると、
突然エマがこちらに来て手を引く。
まさかハンターと会って話していた、なんて言えるわけがない。
意思を決めて、顔を上げてきちんと目を合わせて言う。
特にエマに目線を合わせると、キョトンとした表情をされた。
忘れていたようで、数秒間黙った後に「あー!」とパッと顔をあげた。
人の好意に気づかなかった。
こんなにも愛されていたのに、私は過去の事ばかり目を向けて、
今に目を見つめようとしていなかった。
そうだ、時間は経つんだから、当然世界も変わるんだ。
こんなに大切な人たちが、すぐ側にいたなんて。
変なの、なんだか心があったかくなって、
涙が止まらない。でもこれは、悲しみからじゃなくて、嬉しさからの涙。
その日に食べた昼食は、いつもに増して美味しかった。
第五人格ってとっても感動するゲームですね!!
ホラゲーなのに!!!!!!!!!!!!!!!!!
米ください飢えちゃうよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。