街並みがだんだん、昔のあの治安の悪い場所へと変わっていく。
車が止まると、不破さんは私の手を離さずに降りては、不破さんの住む家の中へと連れ込んでいった。
彼は私の通学鞄を丁寧に置くと、リビングの真ん中にあるソファに座った。
不破さんがそう指示する場所は、彼の太腿の上。
跨るように触れと指示して来た。
そんな命令に反抗するように私はただそこに立ち尽くしたまま、何も言わないでいた。
目も合わせたくない。
フイッと目を逸らした私が多分気に食わなかったのだろう。彼は私の腰に手を回しては無理矢理跨らせて座らせてきた。
ふにゃっとした顔で笑いながら彼は言う。
顔を強張らせている私の頬に手を添えてくる。
その手が酷く冷たく思えた。
睨みつけるように彼を見ていると、彼の胸ポケットから私のスマホの着信音が聞こえてきた。
その瞬間、空気が一変した。
不破さんは声を低くしてそう聞き返してくると、私のスマホの画面を確認する。
きちんとスマホには「ハル」と表示されていた。
どんなに怖くても、それだけは否定したくない。
なんで?なんでそうなるの?
そう懇願するけど、不破さんは止まらなくて自身のスマホを取り出しては仲間である雲雀たちに電話をかけていた。
その言葉を聞いた瞬間、不破さんは表情を緩ませては奇襲の指示を本当に取りやめてくれた。
通話を終えると、私の頭を優しく撫でてはこう呟いた。
大丈夫、また抜け道作って逃げる道を確保すれば、いつだって出られるから。
すると不破さんは私のスマホを私に渡して、ハルに電話をかけるよう促してきた。
震える手でハルに通話をかけると、ワンコールで出た。向こうはとても心配そうな声色で通話に出てきたのだ。
『あなたちゃんっ、大丈夫!?ギャングに連れ去られてたところを長尾が見たって言うから心配でっ』
こんなに心配してくれてるのに
こんなに優しくしてくれるのに
こんなにあたたかい人を、私は裏切るんだ。
『……え?』
『泣いて……ちょっと待ってどこにいるの』
『はっ、ちょっ____』
そう言って無理矢理通話を終わらせた不破さんは、私のスマホで何か操作をし始めた。
なくなっちゃった。
学校の友達の連絡先も
ハルたちの連絡先も
思い出も
全部____
私のスマホをローテーブルの上に置いた不破さんは、優しく私を抱きしめてきた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!