彼女に連れられ、体感30分近く歩いた。
目の前に広がるのは、
地平線まで続く、青く澄んだ水だった。
まるで、空と繋がっているようにも見える。
空まで泳いで行けてしまいそうな … 。
そう、これが ── 。
お爺ちゃんが好きになった理由が、
なんとなくわかった気がした。
視覚だけじゃない。
岸に打ち付ける波の音、吹き抜けていく潮風、
そして、強く印象に残る、潮の香り。
思っていたよりもずっと、
海という場所は、気持ちいい。
手をティーの字に広げてみた。
さっきよりももっと潮風を感じることができる。
そして、ポーズが変わったおかげか、
はたまた呼吸法が変わったおかげか、
さっきよりももっと潮の香が強くなった。
片手で帽子を押さえながら、
彼女は俺の方を向いていた。
海を満喫する俺の様子を見て、
満足げに、でもどこか寂しげに微笑んでいる。
俺にできる、精一杯の笑顔で返した。
いや、自然と、笑顔になれた。
海って、こんなにもすごいものなんだ。
恋って、こんなにもすごいものなんだ。
きっと俺にとって、彼女の寂しげな表情は、
この景色は、音は、感覚は、匂いは、
一生忘れられないものになるだろう。
だって、初恋の君と、
一緒にみた初めての海なのだから。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。