あなたside
曇った空が私を見下ろす。
私はそっとヴィラン連合の拠点を離れた。
ただ、何処かへ歩き続けると共に
崩れた世界が私の視界に広がる。
誰かが落としたであろう血痕。
誰かの幸せな記憶が綿のごとく詰まっているであろう
破れ、はらわたが零れたように壊れてしまったぬいぐるみ。
瓦礫が道をふさぎ、避難所では誰もが怯え
誰もが苦しんでいる。
それは、まるで "地獄"
そんな時、何処から声が聞こえた。
声のするほうへと足を無意識に運び、ついた先は
泥にまみれ、雨に打たれて
行き場をなくしたであろう少年が居る、雄英高校だった。
少年、彼は確か緑谷出久と言った。
一度だけ、見たことがあった。
優しくて、自分よりも他人を優先できる
そういう男の子だった。
私はそう呟いて振り向き、この場を立ち去ろうとする。
私はこの時、初めて気づく。
嗚呼、雨が降っていたのだと。
あなたside end
相澤side
タオルを肩にかけ、苦しそうな顔で俯き
小さく肯定する女の子。
彼女は、夢想 あなた
約三年前から行方不明とされていた少女であり、
個性の悪用の可能性を重く考えられていた少女である。
彼女の個性のキャパシティは際限がない、ともいえるが
正確にはキャパシティが計測不可能なのだ。
どの範囲まで個性が効くのか
人から人へと伝播していくのか
全くの予想がつかないのだ。
目を泳がせながらうつむく彼女を見て
俺はやはりこういうのには向かないのだと改めて感じる。
緑谷はこういうのが上手い。
優れた観察眼をもち、
相手の感情をくみ取ったり感じたり
共感したり…
俺はそう言い、席を立つ。
取調室、というのだろうか。
なんだか少し違うがこの部屋から出て
当たりを見回すと、Tシャツに着替えた緑谷がそこに立っていた。
呼びに行こうとしていた俺が言うのもなんだが、
きいてみる。
相澤side end
next












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。