第15話

もう夢の中でしか会えないね。
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2024/05/11 13:27
幼少期の葵
あ!ヒナタおねえちゃんとチクサおにいちゃん!
チクサ
あおい!誕生日おめでとーう!!
ヒナタ
おめでとー!葵くん、ドレスちょー似合ってるよ!!
幼少期の葵
えへへ、ありがとう!
華宮蓮
葵。このドレス、ヒナタとチクサが作ってくれたんだよ。
華宮葵
やっぱり?!うれしい!このいろだいすき!
ヒナタ
ホント?よかったぁ。
チクサ
トウカ達も作るの手伝ってくれたんだ。喜んでたって伝えとく。
華宮蓮
うん。また会いたいって言っといて。
チクサ
うーん……まあ、言うだけ言ってみるよ。
華宮蓮
ありがとう。
俺の誕生日パーティーには、たくさんの人が来てくれる。
俺の友達と、兄ちゃんの友達。
お父さんの知り合いの、偉い人たちもたくさん来る。

お父さんにドレスを着せられる。

兄ちゃんの誕生日は、こんなことやらないのになぁ。
なんで俺だけなんだろう。
幼少期の葵
あ!ねえチクサおにいちゃん、きいて!
チクサ
んー?どうした?
幼少期の葵
きょうね、いとちゃんっていうともだちできたの!すっごくやさしいんだよ!
チクサ
おー!よかったじゃん!葵は友達いっぱいだね〜
幼少期の葵
でね、そのこにあのリボンあげたんだよ!チクサおにいちゃんに、もらったやつ!
チクサ
……え?そうなの?
幼少期の葵
うん!よろこんでくれた!
チクサ
そっか……よかった。大切な友達、できたんだ。
ヒナタ
へえー。チクサ、リボン渡してたんだ。
チクサ
うん。葵、ずっと1人だったから。大切な友達できたら渡せって。
ヒナタ
そっか……葵くんよかったじゃん!仲良くするんだよー
幼少期の葵
はーい!
いつもチクサおにいちゃんは、俺が1人だと言う。
周りに友達、たくさんいるのに。
チクサ
でもさ、葵。一つだけ、約束できる?
幼少期の葵
んー?なぁに?
チクサ
誰も、傷つけたらダメだよ。悪いこと言ったり、無視したりするのはダメ。もし葵や、周りの子がいじめられたら……兄ちゃんとか、周りの大人に言うんだよ。
幼少期の葵
いじめ……?なにそれー?
チクサお兄ちゃんの言っていることが、何も分からなかった。
俺が友達を傷つけると、思ってるのかな。
そう思うと、少し……悲しかった。
ヒナタ
ちょっと、葵くんにそんなこと言って分かるはずないでしょ。まだ知らなくていいの。
チクサ
でも俺、怖いんだよ。同じ思い、するんじゃないかって。だって、
ヒナタ
いいから。その時気づいてあげればいいんだよ。
チクサ
……分かった。分かったよ。……れん先輩!俺達もう行くわ。
華宮蓮
おう、分かった。みんなによろしく。
ヒナタ
じゃあね、葵くん!
幼少期の葵
……うん!ばいばい!
チクサ
……葵。
チクサおにいちゃんがかがんで、俺の頭をなでる。
優しいけど、苦しくて、辛そうな顔。
兄ちゃんの友達は、みんなそんな顔をしていた。
チクサ
兄ちゃんが言ったこと、ずっと忘れないで。分かった?
幼少期の葵
……わかった。やくそく!
チクサ
ん。約束。
泣きそうな顔をして、立ち上がる。
ヒナタ
葵くん!次会えた時、その子のお話聞かせてね!
幼少期の葵
うん!またきてね!
ヒナタ
……うん、じゃあね。
チクサ
じゃあな、葵。
ヒナタお姉ちゃんと、チクサお兄ちゃんが、並んで帰っていく。
追いかけようとしたけど、やめた。




幼少期の絃音
じゃあこのリボン、そのチクサさんってひとが、あおいにくれたの?
幼少期の葵
うん、そう!チクサおにいちゃん、こういうのつくるのじょうずなんだよ!
幼少期の絃音
ほんとに、もらっていいの?おれ……
幼少期の葵
うん!だって、おれピンクすきじゃないし。いとちゃんは、ピンクすきでしょ?
幼少期の絃音
……うん、ありがとう。チクサさんってすごいね。これ、うりものみたい。
幼少期の葵
でしょー?ヒナタおねえちゃんもすごいんだよ!あーあ、はやくあいたいなー
早く会って、いとちゃんのことを話したい。
いとちゃんとも、会ってほしい。
そう思って、ずっと待ってた。けど。


また会えることは、なかった。
幼少期の葵
にいちゃん、チクサおにいちゃんとヒナタおねえちゃん、なんでずっとねてるの?おはなしできないの?
華宮蓮
……ん?うーん……2人共、たくさん疲れちゃったんだって。休ませてあげよ、ね?
幼少期の葵
うん……
2人が入った入れ物が、骨だけになって出てくる。
土に埋められる。

いとちゃんの話、話せなかった。
もっと、甘えたらよかった。
夏なのに、お腹が冷たくなった。
華宮葵
……あ……
眩しい朝の光で、目が覚める。
少し顔が濡れている。

忘れていたことを思い出す。
2人は、死んだ。
嫌な夢を見てしまった。

お腹が痛い。
苦しい。

なんで大切な人は、すぐ失ってしまうんだろう。
2人だけじゃない。
大切だと思った人は、みんな、離れてく。
いなくなる。
チクサ
『誰も、傷つけたらダメだよ。』
千草ちくささん、ごめんなさい。
俺、傷つけちゃったよ。
いとちゃんのこと。
百瀬絃音
『……そう。葵、俺のこと嫌いなんだ。』
違う。本当は、そんなこと思ってない。
なにも、信じられなくなっただけで。嫌いなわけじゃない。
本当は、ほんとは……!
絃音の姉・理奈(エリナ)
……葵様。起きていらっしゃいますか?
ぁ……
華宮葵
……うん、起きてるよ。
絃音の姉・理奈(エリナ)
おはようございます。お食事用意できてますので。
華宮葵
分かった。着がえたら行くよ。
絃音の姉・理奈(エリナ)
かしこまりました。失礼します。
……そっか。もう朝か。
学校、行かないと。

ベッドから降りて、洋服が置いてある方を見る。
隣の家のピンクのカーテンが、目に入った。


学校、行きたくない。
作者かもしれない
作者かもしれない
めちゃめちゃうれしいです、ありがとうございます😭

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