俺の誕生日パーティーには、たくさんの人が来てくれる。
俺の友達と、兄ちゃんの友達。
お父さんの知り合いの、偉い人たちもたくさん来る。
お父さんにドレスを着せられる。
兄ちゃんの誕生日は、こんなことやらないのになぁ。
なんで俺だけなんだろう。
いつもチクサおにいちゃんは、俺が1人だと言う。
周りに友達、たくさんいるのに。
チクサお兄ちゃんの言っていることが、何も分からなかった。
俺が友達を傷つけると、思ってるのかな。
そう思うと、少し……悲しかった。
チクサおにいちゃんがかがんで、俺の頭をなでる。
優しいけど、苦しくて、辛そうな顔。
兄ちゃんの友達は、みんなそんな顔をしていた。
泣きそうな顔をして、立ち上がる。
ヒナタお姉ちゃんと、チクサお兄ちゃんが、並んで帰っていく。
追いかけようとしたけど、やめた。
早く会って、いとちゃんのことを話したい。
いとちゃんとも、会ってほしい。
そう思って、ずっと待ってた。けど。
また会えることは、なかった。
2人が入った入れ物が、骨だけになって出てくる。
土に埋められる。
いとちゃんの話、話せなかった。
もっと、甘えたらよかった。
夏なのに、お腹が冷たくなった。
眩しい朝の光で、目が覚める。
少し顔が濡れている。
忘れていたことを思い出す。
2人は、死んだ。
嫌な夢を見てしまった。
お腹が痛い。
苦しい。
なんで大切な人は、すぐ失ってしまうんだろう。
2人だけじゃない。
大切だと思った人は、みんな、離れてく。
いなくなる。
千草さん、ごめんなさい。
俺、傷つけちゃったよ。
いとちゃんのこと。
違う。本当は、そんなこと思ってない。
なにも、信じられなくなっただけで。嫌いなわけじゃない。
本当は、ほんとは……!
ぁ……
……そっか。もう朝か。
学校、行かないと。
ベッドから降りて、洋服が置いてある方を見る。
隣の家のピンクのカーテンが、目に入った。
学校、行きたくない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!