死にたかった
別に誰かに虐められてた訳では無い
でも、生きてるのが辛かった
呼吸が、心臓の鼓動が、血の巡りが
全て嫌になった
消えたかった、という方が正解かもしれない
だけど私にそんな魔法は使えないし
せめて、空でも飛びながら死のうと思った
のに、
.
響いた声は、聞き覚えがあるような無いような
低くて気だるそうな声
私を見上げて手を振っている
時計の針午前2時を回った
こんな真夜中にうろつく男はろくなやつじゃない
一重の切れ長な目で、ジトーっと視線を浴びさせられる
『居心地が悪すぎる____』
そう言って、その人は消えた
.
_ガチャッ
マンションの屋上の、立て付けが悪いドアが開いた
足音が聞こえた、でも
振り返る気がしなかった
引き止められたら終わりだ、負けたらダメだ
人の優しさ、善意ほど怖いものは無い
どこか切ない表情は、隠しきれていなかった赤い人____.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!