お兄さんが返事を聞きに来る日まで、
あと一日。
あれから毎日考えてたけど
それでも答えはまだまとまらなかった。
「翔太くん、あの件どう考えてるのかな?」
先生がみんながいなくなった時に僕の隣に座って
話しかける。
「そっか、じゃあ一緒に考えようか。」
「翔太くんは、住んでみたいって思う気持ちと施設に残るって気持ち、どっちもの気持ち話せる?」
「まとまってなくていいから」
「思ってることをそのまま。」
それから僕の今の心の中を話した。
その先がなかなか出てこない。
先生は急かさずに待ってくれてる。
そして、僕はうつむいたまま小さくつぶやいた。
声が震えて上手く言えなかった。
「ごめんね、翔太くんが思ってることわかったから」
「それ以上は大丈夫だよ。」
そう言って、僕の背中にそっと手をおいてくれた。
しばらくしてから先生の口が開いた。
「翔太くん、」
「一つだけ聞くね。」
僕はゆっくりうなずいた。
「もし、施設を出て、お兄さんと住んでみたら」
「楽しいこと、嬉しいこと」
「思い出も出来ると思うの。」
「でもね、その先で悲しいことがおきるかもしれない」
「そういう未来も絶対にないとは言えない。」
先生は間を開けて続けた。
「それでも」
「大きな決断するには、その不安も、怖さも全部抱えないといけないかな」
「もう傷つきたくないからって何もしなければ、きっと後悔することもあるの」
「もちろん、無理に踏み出さない選択肢でもいいんだよ」
「だけど、翔太くんがこの人たちと過ごしたいって心から思えるならこの気持ちを大事にしてほしいかな」
「それに、」
「翔太くんのお母さんも」
「翔太くんに寂しい思いしながら生きてほしいなんて」
「思ってないはずだよね」
「誰かと笑って、楽しい毎日を過ごして、時には悲しい時もあるかもだけど」
「幸せになってほしいって」
「そう願ってるよ」
「翔太くんのこと大事にしてくれてたもんね」
今、ここにお母さんがいたら
"翔ちゃんが幸せになるならその一歩、応援するよ"
そう言って笑ってくれる気がした。
先生の話を聞いていたら、
気づけば目には涙が溜まっていた。
また、大切な人を失って
一人になるのは怖い。
でも、怖いからってこのまま立ち止まっていたら
何も変わらない。
お兄さんたちはたしかに
僕のこと、助けてくれて
たくさん考えてくれた。
もう、ずっと前から決まっていたのかも。
ただ、その一歩を踏み出す勇気がなかっただけ。
僕は小さく息を吸って先生を見た。
涙をぬぐってもう一度息を吸う。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。