いつもと同じように目を覚ました。
昨日まであった僕の荷物はもうほとんどない。
数人での共同の部屋なんだけど
いつもより広く見える。
今日なんだなぁ。
一緒に住むって決めてからの一週間。
長かったような、短かったような。
部屋を出てからいつも通り顔を洗った。
そして、ご飯を食べ終わった時に、
先生が話しかけてくれた。
「おはよう、翔太くん。」
こんな何気ない先生との会話も今日で最後。
なんか寂しい気もする。
そんなこと思っていたら
施設で遊んでくれた小さい子たちが
僕のところに集まってきた。
「今日、行くんだよね?」
「またね!」
そう返したけど、
僕に一番仲良くしてくれてた男の子が
いないことに気づいて、
辺りを見渡したら
少し離れたところにうつむきながら立っていた。
僕はその子のところへ近づいてから、
目線に合うようにしゃがんだ。
「...。」
「今日で、ばいばいっ...いや」
「翔太お兄ちゃんともう遊べないのっ...」
「...また一緒に遊びたいよぉ」
その言葉を聞いて、胸がじんわり温かくなった。
こんなに僕と遊ぶことが楽しいって思ってくれて、
僕との時間、大切にしてくれてたんだ。
「...ほんと?」
「じゃあ、遊べるの?」
「うん!」
さっきまでの顔からぱあっと明るくなった。
「やくそく!」
そう小さな指に僕の指を絡める。
「翔太お兄ちゃんも!」
そう笑ってみんなのところへ戻っていく。
僕はその背中を見送った。
それから一回部屋に戻って身支度してから、
先生と玄関前でお兄さんたちが来るまで待っていた。
「...そういえば、翔太くん知ってた?」
先生がぽつりと言った。
「私ね、この仕事についてから初めに担当になった子が翔太くんなの」
「うん。」
先生は少し恥ずかしそうに笑った。
「だから、最初は私も分からないことばかりで」
「どう声をかけたらいいのかとか、どうしたら安心してもらえるとか」
「でも、翔太くんと関わっていくうちに分かった気がする」
「今は何人か担当につかせてもらってるけどね」
「それでも、一番初めに翔太くんの担当で良かったって思ってる」
「頼りなかったかもだけど、」
そう言うと一瞬先生が黙った。
「...もう。」
笑おうとした先生の目に涙が浮かんだ。
「そんなこと言われたら、泣いちゃうじゃん。」
「ごめんね。最後は笑って見送ろうって思ったんだけど」
先生は涙を拭った。
「でも...ありがとう。」
そんな話をしていたら先生が、窓を見た。
「あっ、来たかな。」
外を見るとお兄さんの数人が車から出てきた。
「じゃあ荷物、車に乗せようか」
それから、お兄さんは施設のドアを開けて入った。
「はい。」
「あと、これから翔太くんのこと、お願いします。」
そう頭を下げて言った。
それからお兄さん達と荷物を持って、
車に全部乗せ終わった。
いよいよ出発だなって実感が湧いてくる。
「こちらこそ、ありがとう。」
先生の目にまた涙が浮かぶ。
「...行ってらっしゃい。翔太くん。」
先生は泣きながらも優しい笑顔で僕を見送ってくれた。
そう行って、お兄さん達と車へ向かった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。