第5話

4.暗い部屋
15
2024/02/04 00:41
物心ついた時から僕はくらい部屋に1人だった。
そこには、汚れた布と古い本だけが置かれていた。
食事は1週間に1回。
水なんてものも、寝るところもあるはずもなく。
両親がつけた見えない鎖支配で繋がれていた。
ある日、両親が僕の元に来た。
その時、僕は小6だった。
両親は僕の部屋にあるものを置いていった。
それはぐるぐる巻きにされた毛布のようなものだった。
すると、突然毛布がガサガサと動いた。
得体の知れない生物。
僕は警戒しながら近づいた。
すると、中から小さい子供の声が聞こえてきた。
レル
レル
…だ、れ……?
顔には真新しい殴られた跡がついていた。
ラル
ラル
僕は…
ラル
ラル
……ラル…
僕に名前なんて無い。
適当に考えた名前。
男の子はどことなく僕に似ていた。
髪型や顔のパーツ。
違うのは、髪色と目の形だろうか。
分からないことだらけだ。
なぜ両親がこの子を置いて行ったのか。
でもひとつ、分かることがある。
この子は僕の弟ということ。
ラル
ラル
…君、名前は…?
レル
レル
…ううん……
ラル
ラル
じゃあ……
ラル
ラル
君は…レル、だ…
ラル
ラル
僕の弟。
レル
レル
…ニパッ僕は…レル…
レル
レル
よろしくね、ラルにぃ…
それから僕らはずっと一緒だった。
僕は兄として両親から弟を守った。
月日は流れ、冬から春へと季節が変わった。
いつものようにイライラしているアイツらが来て、
僕が弟を守る。
そうなると思っていた。
しかし両親は、僕を部屋から出した。
そして、父親が白い布を僕に当てた。
僕はどんどん薄れていく意識の中、レルが泣く姿が見えた気がした。

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