ついにこの時が来た。
緊張しているからか、手は汗で滲んでいる。
“指名された戦闘要員は、各々出発するように。”
聞き慣れたアナウンスの声。
だけど、今はそれさえ恐怖に感じた。
ついに覚悟を決め、
指定されたステージへ足を運ぶ。
その時、あの言葉を思い出した。
『大丈夫。君は真剣に勉学を努めてきた。』
『私とあなたはずっと友達さ。
たとえ、君が殉職しても。』
ゾネスの言葉が頭を過ぎる。
固く結ばれた絆は、簡単に解けやしないんだと、
あなたの一人称は思った。
そして、誰にも聞こえないような、小さな声で
いってきますと呟いた。
ー3年後…
今のあなたの一人称は、任務を難なくこなしていく
オクタリアンになった。
でも、続けるうちに、これは
正しいことなのかと疑ってくる。
なんのために?
イカからナワバリを守るため。
個人的には、
また大きいナワバリ争いで、勝てるようにするためでもあるのかなと思う。
オオデンチナマズを何故盗むのか?
最近知ったことなんだけど、
タコの世界は、エネルギー不足らしく、
機械を動かすことが難しくなってるらしい。
でもそれって…あなたの一人称達タコが、
地上に出れば解決するんじゃないか…?
……あ、でも、オクタリアンは、
大ナワバリバトルで負けて、
地下に追いやられたんだっけ…?
いつもは、タコ達が勝っていたらしいけど。
こんなこと考えていてもしょうがないと、
あなたは次の任務に足を運ぶ。
そう。全てはここからだった。
—タコツボバレーにて
その時——、
2人は、得体の知れない何かにさらわれた。
あれから何時間経ったのだろう。
あなたは、冷たい地面で寝転がっていた。
…すると、
大きい、しわがれた声が辺りに響く。
あまりに活発な声で、目を覚ます。
状況が掴めてないためか、頭が整理できず
自分の名前が思い出せない。
数秒の沈黙が続いたあと、
アタリメ司令が口を開いた。
そういうわけではないけど、
確かになにかを忘れている気がする。
あなたの一人称自身…?
分かんない、分かんないよ。
自分のことも分かんない。
怖いよ…
※あなたの名前はあとから出てくるから大丈夫だよ。
でも、なんとなく、なんとなくだけど、
自分の姿なら覚えてるような…?
目の色は赤色で
肌は…誰かから色白って言われてたな…
誰…だったっけ…?
厳しいけど優しいトモダチの………
あと少しのところで思い出せず、
あなたは、少し混乱していた。
ずっと考えていても仕方ないと、
あなたは気持ちを切り替えた。
何を言ってるのかと困惑したのか、言葉が詰まる。
でも、アタリメ司令の言ってることは、
間違っていないと思った。
何故かは分からないけど
なんかよく分からないけど、
ちょっと面倒くさいので
YESってことにしとくか。
こうして、あなたの一人称とアタリメ司令との
出口さがしが始まった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。