廃墟は木造建ての3階建てだった。
とりあえず、最上階に行った。
暗くて何も見えない。手に抱えているネウラを見るのも困難だ。
これほどの暗さで、人を見つけることができるのだろうか。
ただ、競ってしまった以上、勝たなければいけない。
もし負けたら、どうなるかわからないから。
即却下されるので、楽しめることもなかった。
いや、無理か。妨害特化の海華がそれ以外の魔法を操れることはない。
勝負に伸らないほうがよかったな。
あのとき、ムキになって言わないほうがよかったと、今更遅い後悔をしていた。
あのクソガキの声が響く。
そいつからは、ライトのような光が放たれていた。
暗い視界が、光で少し明るくなる。
このクソガキの能力ってもしかして……。
暗視。
つまりこのクソガキは。
あぁ、それだ。
闇属性。
ミステリアスな人が与えられる印象がある。とにかく「暗」に対する魔法が豊富で、魔法に頼り切るのではなく、自分の知識をフル活用して成り立つ属性だ。
攻撃魔法が少なく、使用難度は高い。
ただ、中にはその逆で____。
逆ではなかった。
ただ、あまりにも弱すぎる。
だからか。
わたしは、雪くんがライトをおおかみに作らせた理由がわかった。
こいつと戦ったらマズい。
わたしの直感が警告していた。
雪くんは自信満々だった。
信用することはできなかった。
しばらく捜すと、海華の姿が見えた。
またケンカが始まってしまった。
わたしとネウラは仲裁をしようとしたが、2人の勢いで話しかけることすらできなかった。
救いを求めておおかみに。
当のおおかみはお手上げ状態。
いつもこんな風に動いているのか???
この短気め。
なに海華とケンカしておいて、こちらには何も教えない?
女の子のようなかわいい見た目をしておいて、中身は面倒なやつだ。
思わず握っていたハンマーで頭を叩きたくなる。
ぬいぐるみのおおかみに、3人と1つはついていく。
おおかみの案内は正しく、そこに5人の男たちがいた。
その男たちは、変な人たちが入ってきたとでも思ったのか、わたしたちを非難するような目で睨んでくる。
そう、依頼未達成は自分の首を絞めることになる。
それだけは、絶対に回避しなければいけない。
男たちは首を横に振った。
声をかけると、海華は口を閉じた。
もうしばらく黙っていてもらおう。
男たちは霊に怯えていた。そうでないと、「呪われる」という言葉は使わないだろう。
男たちに説得したあと、ハンマーで廃墟を壊す。
廃墟を壊してそこから出ると、海華はすぐにステッキを取り出し、籠を作った。
廃墟は、少し濁っている鳥かごにすっぽりと覆いかぶされた。
わたしは首元にある召喚石をステッキに変え、籠の中に入った。
無言でわたしはステッキを振る。
大量の炎がステッキから放り出された。
まだ魔法少女として活動するようになってから2週間もたっていないのに、昔の出来事を思い出しているかのような気持ちだった。
廃墟には、もう炎が広がっていた。
辺りは煙でもうもうとしていて、頭がクラクラしてきそうだ。
わたしたち__魔法少女たちと男5人は廃墟を後にした。
依頼者はあの男と同年代くらいの若者だった。
ただ、顔はその5人と一致しない。
心霊スポットに行くと伝えられた友人だろう。
その人は魔力瓶を渡すと、手を振って帰っていった。
雪くんは8本の魔力瓶を大事そうに抱えていた。
あのときの勝負に勝ったからだ。
半分以上魔力を使ったわたしたちは、魔力瓶をすべて入れても、ネウラのハートマークが白色で埋め尽くされることはなかった。
雪くんは1本ずつ、おおかみに魔力瓶を渡していく。
海華は雪くんの行動が気に食わないらしい。
海華の気持ちも納得できる。
5本目。
おおかみのハートマークは、すべて白色へと変わっていた。
6本目。
それでも、雪くんは魔力瓶を入れ続ける。
7本目。
おおかみは魔力瓶を拒む。
それでも、雪くんは強引に押し込んだ。
そして8本目__。
わたしも海華と同じ答えだ。
ネウラは雪くんに大きなため息を返していた。
妙だ。
嫌な予感がした。
それは当たっていた。
おおかみの体は、虹色にたって光をまとっていた。
雪くんはおおかみを抱えて走り出した。
ネウラの言葉を聞き、わたしはおおかみから雪くんに視線を移す。
__走っていた雪くんも、虹色の線が体中に流れていた。
雪くんはようやく異変に気付いたらしく、足を止めて固まっていた。
言葉が出ない。
バーーーーーーーン!!!!!!!!!!
耳が壊れるような爆音。
おおかみは__いなくなっていた。
雪くんは倒れだした。
うつろな目をしていて、倒れているのに起き上がる様子もない。
バーーーーーーーーン!!!!!!!!!!
さっきと同じような爆音が聞こえるとともに、虹色の光が雪くんの周りで放たれた。
雪くんの姿が確認できないほどの光だった。
雪くんは__いない。
あの爆音が、2人の最期を示していた。
ネウラの対応は冷たかった。
それが当たり前かのようだった。
海華は問う。
ネウラは黙っていた。
ネウラはようやく説明を始めた。
言っている意味がわからなかった。
信じられなかった。
とにかくここから逃げたくなって、わたしはその人形に触れた。
愛くるしかったぬいぐるみは、恐ろしい存在へと変わり果てた。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。