第13話

7.110%は地獄の始まり(後編)
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2024/01/20 07:13 更新
廃墟は木造建ての3階建てだった。
とりあえず、最上階に行った。
暗くて何も見えない。手に抱えているネウラを見るのも困難だ。
ネウラ
真っ暗ー。
愛奈
うん。そうだね。
これほどの暗さで、人を見つけることができるのだろうか。
ただ、競ってしまった以上、勝たなければいけない。
もし負けたら、どうなるかわからないから。
愛奈
炎、使っちゃダメ?
ネウラ
当たり前でしょ。
即却下されるので、楽しめることもなかった。
愛奈
(海華の能力なら幽霊を払えそうだけど。)
いや、無理か。妨害特化の海華がそれ以外の魔法を操れることはない。
勝負に伸らないほうがよかったな。
あのとき、ムキになって言わないほうがよかったと、今更遅い後悔をしていた。
お~い、愛奈~。
あのクソガキの声が響く。
愛奈
なに?
そいつからは、ライトのような光が放たれていた。
暗い視界が、光で少し明るくなる。
このクソガキの能力ってもしかして……。
愛奈
光属性!!?
ちげぇ! その光はクラフトで作ってもらったライトだ。暗視の魔法は持ってるけど、他の人は使えない可能性の方が高いからな~。一応用意してもらったんだ。
暗視。
つまりこのクソガキは。
愛奈
闇属性持ち⁉
あぁ、それだ。
闇属性。
ミステリアスな人が与えられる印象がある。とにかく「暗」に対する魔法が豊富で、魔法に頼り切るのではなく、自分の知識をフル活用して成り立つ属性だ。
攻撃魔法が少なく、使用難度は高い。
ただ、中にはその逆で____。
おれの魔法での攻撃は人形のハートの黒いとこしかないんだけどな!
逆ではなかった。
ただ、あまりにも弱すぎる。
ネウラ
闇属性は魔法少女系のものを上手に使うからね。魔力回復もできる強い能力だよ。
だからか。
わたしは、雪くんがライトをおおかみに作らせた理由がわかった。
愛奈
(いつでも攻撃できるようにするためだったんだ……!)
こいつと戦ったらマズい。
わたしの直感が警告していた。
愛奈
ねぇ、何の用でここに?
見つかったから。5人。その前に愛奈と海華を連れてこようと思って。
愛奈
逃げられない?
きっと大丈夫だろ。
雪くんは自信満々だった。
信用することはできなかった。
愛奈
海華⁉
しばらく捜すと、海華の姿が見えた。
海華
愛奈! そしてクソガキ! 捜してたんだよ?
だれがクソガキだ‼
海華
おまえ。
あぁ~~~!!!
またケンカが始まってしまった。
わたしとネウラは仲裁をしようとしたが、2人の勢いで話しかけることすらできなかった。
救いを求めておおかみに。
当のおおかみはお手上げ状態。
いつもこんな風に動いているのか???
ネウラ
雪くん。君はボクたちに5人の居場所を教えようとしたんじゃないのかい?
そうだけど、もう教える気がなくなった。
この短気め。
なに海華とケンカしておいて、こちらには何も教えない?
女の子のようなかわいい見た目をしておいて、中身は面倒なやつだ。
思わず握っていたハンマーで頭を叩きたくなる。
おおかみ
あ。あー、オレが案内するから、お2人さんは少し黙ってもらえますかね。
おおかみ⁉
おおかみ
これはおまえたちの「仕事」だ。教えないなんて仕事を達成できねぇだろ。
うっ。
おおかみ
わかったなら、ちゃんと仕事をこなすことだな。
ぬいぐるみのおおかみに、3人と1つはついていく。
おおかみの案内は正しく、そこに5人の男たちがいた。
その男たちは、変な人たちが入ってきたとでも思ったのか、わたしたちを非難するような目で睨んでくる。
海華
やっていい?
ネウラ
ダメだよ。依頼未達成だけは。
そう、依頼未達成は自分の首を絞めることになる。
それだけは、絶対に回避しなければいけない。
愛奈
魔法少女ってわかりますか。
男たちは首を横に振った。
愛奈
この世界に、魔法少女にまつわる噂とか都市伝説って。
海華
都市伝説⁉
愛奈
海華。
声をかけると、海華は口を閉じた。
もうしばらく黙っていてもらおう。
愛奈
では、今からこの建物を壊します。
男たち
……呪われるぞ。
男たちは霊に怯えていた。そうでないと、「呪われる」という言葉は使わないだろう。
そのときは海華ってやつが何とかしてくれるから心配無用だ!!!
男たちに説得したあと、ハンマーで廃墟を壊す。
廃墟を壊してそこから出ると、海華はすぐにステッキを取り出し、籠を作った。
廃墟は、少し濁っている鳥かごにすっぽりと覆いかぶされた。
わたしは首元にある召喚石をステッキに変え、籠の中に入った。
無言でわたしはステッキを振る。
大量の炎がステッキから放り出された。
愛奈
(久しぶりにステッキを使ったな……。)
まだ魔法少女として活動するようになってから2週間もたっていないのに、昔の出来事を思い出しているかのような気持ちだった。
廃墟には、もう炎が広がっていた。
辺りは煙でもうもうとしていて、頭がクラクラしてきそうだ。
愛奈
(ここから出なきゃ。)
わたしたち__魔法少女たちと男5人は廃墟を後にした。
依頼者はあの男と同年代くらいの若者だった。
ただ、顔はその5人と一致しない。
心霊スポットに行くと伝えられた友人だろう。
依頼主
はい、魔力瓶。
その人は魔力瓶を渡すと、手を振って帰っていった。
愛奈
ネウラ。
ネウラ
ん?
愛奈
今更って思うだろうけど、魔力瓶って、どうやって出てくるの?
ネウラ
あ~、それね。依頼料としてお金を払ってもらって、その分の魔力瓶があとで依頼者に届くの。
おおかみ
ちなみに、魔力瓶を作るのはまだパートナーがいない人形たちだ。
海華
へぇー、見習いはどんな世界でも大変なんだね。
おおかみ
そうだな。
雪くんは8本の魔力瓶を大事そうに抱えていた。
あのときの勝負に勝ったからだ。
半分以上魔力を使ったわたしたちは、魔力瓶をすべて入れても、ネウラのハートマークが白色で埋め尽くされることはなかった。
雪くんは1本ずつ、おおかみに魔力瓶を渡していく。
海華
全部入れるの?
海華は雪くんの行動が気に食わないらしい。
愛奈
(勝った時の景品なんて、聞いてなかったからなー。)
海華の気持ちも納得できる。

5本目。

おおかみのハートマークは、すべて白色へと変わっていた。
6本目。

それでも、雪くんは魔力瓶を入れ続ける。
7本目。

おおかみは魔力瓶を拒む。

それでも、雪くんは強引に押し込んだ。

そして8本目__。
海華
どうしてそんなに瓶を入れるの?
持ってるのも面倒だろ? 海華はそう思わない?
海華
思うよ。けど、すべて白になったら入れないかな。
わたしも海華と同じ答えだ。
ネウラは雪くんに大きなため息を返していた。
愛奈
(ん……?)
妙だ。
嫌な予感がした。
それは当たっていた。
おおかみの体は、虹色にたって光をまとっていた。
な、なんだよ! これ!!!
雪くんはおおかみを抱えて走り出した。
ネウラ
雪くん! 君は君の変化もわからないのかい!!?
ネウラの言葉を聞き、わたしはおおかみから雪くんに視線を移す。
__走っていた雪くんも、虹色の線が体中に流れていた。
あ……。
雪くんはようやく異変に気付いたらしく、足を止めて固まっていた。
愛奈
(……っ。)
言葉が出ない。
バーーーーーーーン!!!!!!!!!!
耳が壊れるような爆音。
おおかみは__いなくなっていた。
おお。
雪くんは倒れだした。
うつろな目をしていて、倒れているのに起き上がる様子もない。
バーーーーーーーーン!!!!!!!!!!
さっきと同じような爆音が聞こえるとともに、虹色の光が雪くんの周りで放たれた。
雪くんの姿が確認できないほどの光だった。
海華
雪?
雪くんは__いない。
あの爆音が、2人の最期を示していた。
ネウラ
死んじゃったね。
ネウラの対応は冷たかった。
それが当たり前かのようだった。
海華
……なんで?
海華は問う。
海華
最初の日のこと、ぼくは覚えてるよ。男はぼくたちに「命が人形に取られることはない」って言ってた。じゃあ、どうして雪はいなくなった?
ネウラは黙っていた。
海華
__答えてよ、ネウラ。
ネウラはようやく説明を始めた。
ネウラ
命が人形に取られているわけではないよ。
言っている意味がわからなかった。
ネウラ
ただ、君たちを道連れにしただけだから。
信じられなかった。
とにかくここから逃げたくなって、わたしはその人形に触れた。
海華
愛奈!!
愛くるしかったぬいぐるみは、恐ろしい存在へと変わり果てた。

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