――母の日――
朝のリビングには、今日も元気いっぱいな声が響いていた。
どたどたどたっ!!
謙杜は車のおもちゃを両手に持ちながら部屋中を爆走している。
その後ろを、ぬいぐるみを抱えた駿佑がのんびり追いかけていた。
キッチンでは、大吾が味噌汁をよそいながら笑っていた。
その瞬間。
ぴょんっ!
謙杜がソファへ飛び乗ろうとする。
少し低い声。
謙杜の動きがぴたりと止まる。
次の瞬間には、ひょいっと抱き上げる。
でも、そんな騒がしい朝が、大吾は好きだった。
――朝ごはん中――
駿佑はいつものように大吾の膝の上。
謙杜は丈一郎の腕にぴったりくっついてパンを食べている。
ぽと。
笑い声が広がる。
そんな中、丈一郎が何気ない顔で口を開いた。
大吾は少し驚いた顔をする。
真っ直ぐ言われて、大吾は少し照れくさそうに笑った。
大吾はそんな3人を見ながら、ふっと笑う。
内心ガッツポーズ。
実は昨夜から、丈くんはずっと考えていた。
どうやったら自然に大吾を外に出せるか。
今日は母の日。
いつも家族のために頑張ってくれている、大吾に、ちゃんとありがとうを伝えたかった。
玄関で靴を履く大吾。
その背中を見送りながら、丈くんはそわそわしていた。
ガチャ。
しかし開始5分。
風船を持ったまま、全力疾走する謙杜。
駿佑はテープを自分の服に貼ってしまい困っている。
完全に大混乱。
ぺたっ。
少し斜め。
ぺたっ!!
部屋中に笑い声が響く。
なんとか飾り付けが完成してきた。
壁にはいつもありがとう。
周りには子供達の絵。
駿佑の絵は丸がいっぱい。
謙杜の絵はほぼ勢い。
でも丈くんには世界一可愛く見えた。
すると突然。
謙杜が駿佑のクレヨンを取った。
空気が少しだけピリッとする。
丈くんは2人の前にしゃがんだ。
2人をぎゅっと抱き寄せる。
その直後。
ピコン。
スマホが鳴る。
【そろそろ帰るわ〜】
部屋の電気を消し、3人で待機。
外から足音。
そしてーー
ガチャ。
真っ暗な部屋。
静か。
不思議そうにリビングへ入ってくる。
その瞬間。
パッ!!
驚いて固まる大吾。
目の前には飾り付けされた部屋。
そして満面の笑みの家族。
2人がぎゅーっと抱きつく。
大吾はゆっくり部屋を見回した。
少し曲がった飾り。
落ちてるテープ。
ぐちゃぐちゃな絵。
でも全部が愛おしい。
大吾は2人を抱きしめる。
丈くんはそんな3人を見ながら、優しく笑った。
その瞬間。
結局は最後はいつもの大騒ぎ。
でも、その騒がしさは何より幸せだった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!