今日はいつもの挨拶は無かった。
確か「用事がある」と言っていたか。
... 本当にそうなのか ?
一瞬その言葉が脳をよぎる。
ぐしゃりと音を立てて書き置きのメモを握った。
あのSDは平気で嘘を吐く。
主人の俺に対しても他の悪魔に対しても。
全員に平等に、そして不公平に嘘を吐くのだ。
カルエゴは少し考えた。
シワが入ったメモを広げ、見る。
「理事長室に居ます」と、一言だけかかれたメモ。
____ そして 、またメモからぐしゃりと音がした。
書き置きにあった「理事長室」という文字に従い
理事長室まで出向く。
中に入る事はせず、カルエゴは扉の外で
なるべく自然に中の会話を聞いていた。
唐突にあなたは口を閉ざす。
じっとサリバンを見つめてから
一瞬だけちらりと扉に目を向けた。
そして酷くゆっくりと頷く。
ころりと悲しげな表情から
嬉しそうな表情に変わるサリバン。
あなたはそれにも一切表情を変えずに
もう一度、今度は普通の速度で首を縦に振った。
そしてサリバンに背を向け、
にこりと笑顔を浮かべて扉の方を向く。
元から不機嫌そうだった顔を
さらに歪ませたカルエゴが扉を開けて姿を現す。
あなたは笑顔を崩さずに礼をした。
言葉を遮るように発されたカルエゴの言葉。
あなたは驚いたように目を見開いた。
遮られるほどだとは思っていなかった。
その考えがありありと顔に浮かんでいる。
だがあなたは直ぐに表情を戻し微笑んだ。
その返答に理事長室の空気が冷え切る。
微かに喉を空気が通る音。
怯えたようにその音を鳴らしたのはサリバンで、
あなたとカルエゴは一切表情を変えず、
ただ目線を交錯させていた。
その言葉にカルエゴの眉がぴくりと動く。
「ひっ」と小さく声を漏らしたサリバンは
その大きな体には見合わない縮こまった体制で
あなたの後ろに隠れた。
当然のことのように言い切るあなたに
カルエゴは混乱を隠そうともせずサリバンを見る。
あなたは少し考えるような仕草を見せてから
にこりと笑顔を浮かべた。
何か嫌な予感を察知したのか後ろに下がろうとした
サリバンの上着の裾をあなたが踏んでいる。
何の躊躇もなくその足を床を引き摺る様に滑らせ、
流れる様な動作でポケットから出した手を使い
サリバンの口に何かを入れた。
そして絶叫が響き渡る理事長室。
とうのあなたは何か悦に浸る様な顔で、
カルエゴは先ほどの怒りすらも無くなった
混乱と微かな怯えで目と口が開いている。
いつの間にかカルエゴの隣に戻っているあなた。
カルエゴは一瞬目を細めた後、
すぐにいつもの不機嫌そうな顔に戻った。
「残念です」と付け加えながらあなたは
サリバンから足を離して解放する。
そして先程サリバンの口に入れたものと同じ、
ミントグリーン色をした物を口に入れた。
カラン、とあなたの口の中のもの、
そしてサリバンに食べさせたものと
同じラムネが音を立てる。
カルエゴとサリバンは、揃って少し身を引いた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。