第8話

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2026/02/14 12:39 更新

今日はいつもの挨拶は無かった。
確か「用事がある」と言っていたか。



... 本当にそうなのか ?

一瞬その言葉が脳をよぎる。
ぐしゃりと音を立てて書き置きのメモを握った。
カルエゴ

 ......



あのSDは平気で嘘を吐く。
主人の俺に対しても他の悪魔に対しても。
全員に平等に、そして不公平に嘘を吐くのだ。

カルエゴは少し考えた。
シワが入ったメモを広げ、見る。
「理事長室に居ます」と、一言だけかかれたメモ。


____ そして 、またメモからぐしゃりと音がした。
あなた

 ... 〜〜 。 
 〜〜〜 ? ...... 。 

書き置きにあった「理事長室」という文字に従い
理事長室まで出向く。
中に入る事はせず、カルエゴは扉の外で
なるべく自然に中の会話を聞いていた。
あなた

 何故私なのですか ...
いえ、文句ではありませんよ。 
 ですが私である必要は 、 

サリバン

 あなたくんにしか頼めないんだよ! 
 お願い、この通り!! 

あなた

 いい加減面倒......

あなた

 .........

唐突にあなたは口を閉ざす。

じっとサリバンを見つめてから
一瞬だけちらりと扉に目を向けた。


そして酷くゆっくりと頷く。
あなた

 分かりました 、 
 承りましょう 。 

あなた

 その代わり、
 もうこの話は終わりです。 

サリバン

 本当 !? 
 いや〜、やってくれると思ったよ! 


ころりと悲しげな表情から
嬉しそうな表情に変わるサリバン。
あなたはそれにも一切表情を変えずに
もう一度、今度は普通の速度で首を縦に振った。

そしてサリバンに背を向け、
にこりと笑顔を浮かべて扉の方を向く。
あなた

 さて 、我が主君 。 

あなた

 お早う御座います 。 
 
サリバン

 え゛、 

カルエゴ

 ......

元から不機嫌そうだった顔を
さらに歪ませたカルエゴが扉を開けて姿を現す。
あなたは笑顔を崩さずに礼をした。
あなた

 もう用は終わりました 。 
 今日はまた職員室で資料整理 、 
 あとは...

カルエゴ

 何を言われた ? 

言葉を遮るように発されたカルエゴの言葉。
あなたは驚いたように目を見開いた。

遮られるほどだとは思っていなかった。

その考えがありありと顔に浮かんでいる。
だがあなたは直ぐに表情を戻し微笑んだ。
あなた

 主君の嫌いそうな仕事を 
 貰っただけです 。 

カルエゴ

 内容は 。 

あなた

 ... 答える必要が ? 

その返答に理事長室の空気が冷え切る。

微かに喉を空気が通る音。
怯えたようにその音を鳴らしたのはサリバンで、
あなたとカルエゴは一切表情を変えず、
ただ目線を交錯させていた。
サリバン

 あの ... あなたくん ? 
 カルエゴくんには言わないでとは 
 言ったけど ...

その言葉にカルエゴの眉がぴくりと動く。
「ひっ」と小さく声を漏らしたサリバンは
その大きな体には見合わない縮こまった体制で
あなたの後ろに隠れた。
あなた

 ... 孫の護衛を頼まれました 。 

カルエゴ

 ... は ? 孫 ? 
 貴様のか ? 

あなた

 そんな訳が無いでしょう 。 
 理事長様の孫です 。 

当然のことのように言い切るあなたに
カルエゴは混乱を隠そうともせずサリバンを見る。
あなたは少し考えるような仕草を見せてから
にこりと笑顔を浮かべた。
あなた

 まあ私の孫なら
 面白そうでしたけど。 

あなた

 単純に考えて私が2倍ですよ? 
 つまり私の持つ
 この『味覚脱却ラムネ』も2倍...

カルエゴ

 要らんわ !! 
 何だそれは !! 

あなた

 なら毒味に理事長様に
 与えてみましょう 。 

何か嫌な予感を察知したのか後ろに下がろうとした
サリバンの上着の裾をあなたが踏んでいる。
何の躊躇もなくその足を床を引き摺る様に滑らせ、
流れる様な動作でポケットから出した手を使い
サリバンの口に何かを入れた。
サリバン

 何で !? 
 あっ 、ちょ 、待っ ...


そして絶叫が響き渡る理事長室。


とうのあなたは何か悦に浸る様な顔で、
カルエゴは先ほどの怒りすらも無くなった
混乱と微かな怯えで目と口が開いている。
あなた

 失礼 。少し苛立っていました 。 

いつの間にかカルエゴの隣に戻っているあなた。
カルエゴは一瞬目を細めた後、
すぐにいつもの不機嫌そうな顔に戻った。
カルエゴ

 それならそうと言え 。 
 
あなた

 いえ ... 言ったら怒りのままに 
 恐らくこのラムネは主君の口に 
 入れていましたので 、 

カルエゴ

 やっぱりいい、
 何も言わずに落ち着くまで 
 そっとしておくことにする 。 

あなた

 おや ...

「残念です」と付け加えながらあなたは
サリバンから足を離して解放する。
そして先程サリバンの口に入れたものと同じ、
ミントグリーン色をした物を口に入れた。
あなた

 次の一年間...否、六年間は
 騒がしくなりそうですね 。 

カルエゴ

 そう言えば入学式ももう 
 一週間後だったか ...

サリバン

 ノータッチ!? 
 
あなた

 私に新たな仕事を押し付けた 
 対価だと思って下さい 。 
 それに意外と美味しいでしょう? 

カラン、とあなたの口の中のもの、
そしてサリバンに食べさせたものと
同じラムネが音を立てる。
カルエゴとサリバンは、揃って少し身を引いた。

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