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第12話

⚡︎ 9
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2026/05/30 14:54 更新
あなた

 まず、あちらが講堂です 。 
 新入生は入学式を行うので 
 最初はあそこですね 。 

イルマ

 入学式なら悪魔も
 沢山いますよね ...? 

あなた

 おや、心配ですか ? 

少し目を見開きイルマを見る。
イルマは頰をかきながら眉を下げて微笑んだ。
イルマ

 おじいちゃんは
 匂いは消したって言ってましたけど...
ほんとにあの香水で無くなってるのかな ...

考えるようにあなたは顎に手を当てた。
あの理事長の事である。
恐らく大した説明もせずに香水をぶっかけて終わりだったのだろう、とあなたは限りなく答えに近い回答に辿り着き溜息をついた。
あなた

 伝えられていなければ 
 私も気付かなかった程です 。 

あなた

 余程の言動をしなければ 
 バレることはまず無いでしょう。 

イルマ

 あんな適当な方法で ... ?  

やはり合っていたようである。
あなた

 ええ 。 
 特に甘すぎる香りはしていません。 

その言葉に安心したように息を吐くイルマ。
あなたは微笑みを返したが
その目は細められていた。

あのサリバンが連れてきた人間の子供 。
何か特別なものがあるのか 、と 。
あなた

 ( 平凡な少年にしか見えないな。)

新しい環境に戸惑っているであろう人間 。
悪魔に食われるかもしれないと怯える人間 。

____そして、自分を警戒しない人間 。



彼の中で、まだイルマはただの人間だった 。



講堂に近づくにつれ人が増えていく 。

そんな時、あなたの耳に嵌めていた
通信機が小さく音を立てた。
本人にしか聞こえないほどの小さな音。
あなた

 ... 付きました 。 
 席まで案内したい所ですが ...


音の種類は三つ 。

・不審者発見
・怪我人発見
・救援要請

その中で鳴った音は 。
あなた

 助けを求められているようでして。 

イルマ

 何かあったんですか !? 

あなた

 大した事ではありませんよ 。 
 貴方は講堂で入学式を 。 
 席はあちらです 。 

入り口からは離れた位置にある椅子 。
周囲にはすでに大型の生徒が座っていた。

びくっと肩を揺らすイルマの背を優しく押す。
あなた

 何かあればいつでも
 名をお呼びください 。 

あなた

 私はあなた 。 
 忘れないで下さいね 。

イルマ

 は 、はい ... っ 、 


極度に緊張したガチガチの歩き方。
あなたは浮かべていた笑顔を消し、
通信機に指を当てた。
あなた

 向かいます 。 

あなた

 ( イルマ ... イルマ 、ね 。 )

あなたに人間に関する知識は
無いと言えば嘘になる。
だがあると言っても微妙なほどのものだ。
聞き馴染みのない名前を頭の中で
繰り返して強制的に慣れさせる。

1分も経たず救援要請を送った主 _____
ブルシェンコ

 あなた先生 !! 

あなた

 ブエル様 。 状況は ? 

ブルシェンコ

 見た通りです ... 生徒がッ 、 

その言葉を遮るように響いた轟音。
ひょい、と一歩右に寄るだけであなたが
かわした武器____大きな斧が地面に突き刺さった。

あなたの背後から舌打ちの混ざった笑い声。
視線を向けず、あなたは薄笑いを浮かべた
あなた

 おやおや ...
 生徒からの暴行ですか。 

あなた

 舐められたものですね 、 
 バビルス教師も 。 

ブルシェンコ

 っ ... 面目無い 、 

あなた

 謝罪は結構です 。 

ぴしゃりと言い切ったあなたに
ブルシェンコは一瞬息を呑んだ。
怒気ではない。寧ろ無関心に似たもの。
普段、微笑を浮かべているあなたの姿は
そこには一欠片も残っていなかった。
あなた

 言い方がキツかったなら改めます。 
 ですが、生徒に一撃を貰うような
 事は控えて頂きたい 。

あなた

 特に ___ ...
 
あなたの体に大きな影が落ちる。
斧を振りかぶった、体格のいい男の影が。


その影の中で、あなたの頰の紋章が光った。
あなた

 ... あの男の血縁者には 。 


サブロ

 ハハハッ ... 貴様 、 
 先程の教師よりも強そうだな!! 



二度目 。

また轟音が響き渡る 。
あなた

 見ないうちに生意気に 
 なりましたね 。 
 ... あの頃は純粋に 
 強さを求めていたというのに 。 

斧の上に立っていた。
腕は背中で組まれたまま。
その瞳は冷たい光を宿し、
サブロを見下ろす__否、見下すように見ていた。

反射的にサブロの肩が強張る。
地面に埋まった刃先を持ち上げ、
乱暴にあなたを振り払った。
あなた

 今更怯えますか 。 

トン、と軽い音を立てて地面に着地。
そして散歩をするような穏やかさで、
サブロの目の前まで歩いた。

指先でサブロのこめかみを伝う冷や汗を拭う。
あなた

 貴方が嫌いだとは言いませんが...
少し、苛つく 。 

無表情だった。
だが限りなく怒りを抑え込んだような顔に近い。


その顔を見て、
サブロは何かに気がついたように目を見開いた。
サブロ

 ... 貴様 ... いや 、貴方は 、 

あなた

 .........


小さく首を傾ける。
自分よりも背の高いサブロを見上げて。
下から睨め付けるような瞳だった。
指がこめかみからサブロの首元のネックレスに移る。
あなた

 正解です 。 
 「お前」と言わなかった事は 
 評価してあげましょう 。 

ぐ、と細い部分を引いた。
かちりと音を立てる金属を見て、
何か安心したように寄せられていた眉が緩む。
だがその瞳は元には戻らなかった 、筈だが 。
あなた

 ... いえ 。 


ぱっと手を離した 。

二歩後ろに下がり、傾けていた首を戻して
にこりと微笑を浮かべる 。




あなた

 八つ当たりです 。 
  

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