水side
ガヤガヤとうるさいゲーセンでの騒音。
それに負けないくらい、こさめたちの声は大きいと思う。
久しぶりになつくんとゲーセン来たし、熱い勝負繰り広げるしかなっしょ!
ゴール前直前、青甲羅が飛んできて、画面には4位の文字が。なつくんは、金色の文字で1位と表示されている。
このゲームこさめ得意なのに悔しいんやけどぉ〜、!
いくつものゲームをして、今日だけでも11回勝負をしてるんか。感覚的には5回くらいに感じてたけど、時間の流れは早いみたい。
ゲームセンターを見渡し、ピタリと動きが止まるなつくん。
「どうしたん」と声をかけ、なつくんの見つめる方を見ると、見た事ある人影が見えた。
なつくん顔怖…何、何が見えたん、
訳も分からず、走っていったなつくんの背中を追いかけた。
名前を呼ばれて振り返ったみこちゃんは、酷く窶れた表情をしていた。
…あれ、他のみんなは?
なんでそんな表情してるん?
こさめたちがいない間に何があったん?
次々と出てくる疑問を飲み込み、みこちゃんの背中を摩った。
ポロポロと泣き出したみことくん。
現状どうしたらいいのか分からず、ただただ背中をさすることしかできなかった。
多分、ゲームセンターでは環境音がうるさく、みことくんに害を与えると思ったんやろう。なつくんは冷静に、離れようとの提案をした。
先を歩いてて、表情は見えないが、柄にもない優しい言葉をかけるなつくん。
みことくんも意外だったのか、少し目を見開いている。
得体の知れない焼かれた感情がジワジワと押し寄せてくる。
可愛らしいみこちゃん。
涙で、キラキラと光る睫毛が綺麗で惹かれる。
全てが儚くて、それすらも羨ましくて。
今のこさめの気持ちを当ててしまえば、簡単に壊れてしまう
自分勝手なこさめへの嫌悪感。
自分のことなのにどこか他人事な、心が尚更嫌だ。
どんどんと奥深くに沈んでいく気がして、歩く足取りが遅れをとる。
苦しい、気分の悪い気持ちに蓋をして、飲み込んだ。
これは言葉にするものでも、こさめのなかに閉まっておくものでもない。
…もう捨てよう。
パキンッと音が鳴ったのと同時に、頭の中が墨のように真っ黒に染った。
赤side
みことの声はまだ震えていて、喉の奥から絞り出したようにか細かった。
こさめはさっきまで焦っていた様子だったが、冷静に対応をしている。
水を両手で握り、俯いて話し始める。
ペットボトルは少しへこんでいて、みことが無意識に力んでいるのがわかる。
淡々と話し始めた、みことは話している途中どんどんと声のトーンが下がっていった。
元々、すちはみことの友達が告白したと勘違いをしていたらしい。それで今日誘われたのもその告白のことで、聞きたいことがあったからだとか。
俺とこさめはただ静かに話を聞いてた。
みことも少し落ち着いてきたのか、声のトーンがだいぶ安定してきた。
ついさっき、みことは告白の返事をどうするのか聞いたらしい。そしたら答えはNO。
一緒にいたら自分が告白したことがバレそうでつい逃げてきてしまったとのことだ。
こさめが普段より少し尖った言い方で、質問を投げかける。
ニコニコとした笑顔だが
心做しか、怒っているような態度に俺もみことも驚いた。
こさめの連発した正論により、みことはどんどん小さくなっていく。
正直、俺もこさめの意見に同感でしかない。
振るっていうのはあくまで、すちが勘違いしているみことの「友達」に対してだし、みことが告白したとなると話は変わってくる。
すちは、みことに気があると俺は思っているし。
変に深く考えすぎだろと呆れの言葉しか出ない。
すちとの合流に背中を押しても、そのまま進もうとしない。
と思ったら、うじうじと
走ったからどうとか、嫌われたとか、会う資格がないだとか
…なんだこいつ、めんどくせぇ、
こさめはやっぱり笑顔で、励ましてるけど多分結構ピキってる。
…なんにせよこっちから見たら、両思いにしか見えないんだから。
お互いに曲げて曲げてを繰り返して、すれ違いが起きすぎとる。そんな焦れったいこと、俺らが我慢できると思うか?
笑わせるなよほんとに。
早く告ってくっつけよと内心叫ぶ。
やっとケジメをつけたのか、とため息が出る。
少し言い方が強いが、それもお前のためだと言ったら許してくれるだろうか。
俺としてはさっさとくっついて欲しいんだよ。
誰に聞かせる訳でもない言い訳を、頭でグルグルと回していた。
緑side
どうしよう。
俺は何をやらかしたんだ。
ずっと、ずっと、考え続けても、
なにもわからない。
みこちゃんが何に傷ついて、何から逃げたのか。
どうして俺はこんなにも察しが悪いんだ。
いくらさっきの出来事を巡ったって、浮かぶのはみこちゃんの辛そうな苦しそうな表情だけ。
…謝りたい。けど、きっとみこちゃんは会いたくないだろう
パッと花が咲くような笑顔を、守りたくて、それで…
…俺は告白を断ろうとして、
君の隣に立ちたかっただけなのに。
ごめんね。
こんな俺が君のことを好きになっちゃって。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。