<炭治郎side>
義勇さんの切羽詰った声で俺は足を止め、どこから鬼が迫っているのか辺りの匂いを嗅ぐ。
上だということはわかるけれど、、、こっちに向かって迫ってきている、、、?
ここは無限城。
鬼舞辻無惨が鬼殺隊本部に現れ、俺たち鬼殺隊は無限城に落とされた。
この長い長い、1000年にも渡る鬼と人間との戦いが終わるかもしれない、鬼舞辻無惨との最終決戦。
その場に、俺らは居合わせていた。
嗅いだことのあるような、そんな匂いが俺の鼻をついた途端、俺は咄嗟に後退していた。
俺が立っていたところに落ちてきたのは、薄紅の髪に黄金の瞳を持つ、、、上弦の参。
煉獄さんの仇である、猗窩座だった。
ふと、前に猗窩座の過去を見たことがあることを思い出し、俺は刀を構えながらも少し目を細める。
確かにこうして見れば、猗窩座が人間だった時の、『狛治』の時の面影が残っているような気もする。
そして、猗窩座の全身の刺青は罪人の刺青の進化系、猗窩座の術は恋雪さんにちなんだもの。
構え方は、素流道場で慶蔵さんから狛治が習っていたものだということがわかった。
記憶では覚えていないけれど、身体が無意識に過去のことを覚えているのだろう。
煉獄さんの仇だけれど、どうしても猗窩座には向こうに逝って恋雪さん達に会ってほしい。
お父さんや慶蔵さんや恋雪さんと再会して、少しの間かもしれないけれど、言葉を交わしてほしい。
そんな情が出てきた。
だけどそれは結果的に、猗窩座を倒すことになるわけで。
俺はゆっくりと深呼吸し、刀を構えたまま猗窩座を睨みつける。
義勇さんもまた、猗窩座に向かって刀よりも鋭い視線を投げかけていた。
俺と義勇さんは一瞬だけ視線を交わし合い、そして、迫ってきた猗窩座の攻撃を受ける。
金属が、猗窩座の固い拳と擦れ合って、火花を散らす。
上手い具合に義勇さんと入れ違いながら、猗窩座と戦い、怪我を負っても攻撃する。
だが、流石は上弦の参。
常に浮かべた笑みを崩すことなく、俺にも、義勇さんにも話しかけながら戦う。
猗窩座の挑発とも取れるその言葉に、義勇さんは顔色ひとつ変えずに応える。
その間にも、激しい技のぶつかり合いが繰り広げられていた。
───それにしても義勇さん、、、話すのが嫌いだなんてまたそんな嘘を、、、!
義勇さんは話すのが苦手ではあるけれど、話しかけられるのはそれなりに好きな方だと俺は知っている。
いや、、、人を喰う鬼と話すのは嫌いなのか、、、?
なんて考えていてもどうにもならないので、俺も刀を持って加勢する。
しばらく攻撃をしてされてを繰り返していると、猗窩座が脚式で、義勇さんを吹っ飛ばした。
義勇さんはその衝撃で背中から壁に突っ込み、遠くまで飛ばされる。
咄嗟に呼んでしまった名前を拾われて、俺は近くに猗窩座が迫ってきていたことを知る。
刀で弾くようにして後退し、俺は呼吸を落ち着かせた。
義勇さんはきっと戻ってきてくれるはずだ。
しかし、それまではひとりだけで猗窩座の相手をしなければならない。
そう考えると眩暈がしたが、それでも俺はやり切るつもりでいた。
煉獄さんのためにも、鬼殺隊のためにも、、、猗窩座自身のためにも。
殺される、と思った。
猗窩座の腕が迫り、俺はそれを避けきることができなくて。
だけどその腕は、俺に届く寸前で、水の幻影を纏った刀に切り落とされた。
義勇さんが、戻ってきてくれたのだ。
だが、その姿はボロボロだった。
遠くまで背中から飛ばされたせいか、背中から大量の血を流しており、他にも怪我がたくさん。
それで怒っているようで、義勇さんの顔は険しかった。
義勇さんが、飄々として無傷で立っている猗窩座を睨みつける。
空気が変わる。
義勇さんの頬に、、、波のような模様の『痣』が浮かび上がった。
義勇さんの速度が上がる。
猗窩座はそれに少し驚いていたが、すぐに面白そうに笑って順応した。
俺も加勢する。
戦う。
命を懸けて。
しばらくして俺は、猗窩座の羅針盤は、闘気というものに反応していることに気がついた。
だから、植物のようだった父に倣って、俺は闘気を消し去って猗窩座の背後から近づいた。
猗窩座は俺に気がついていない。
義勇さんが俺に気がついたけれど、相変わらずのポーカーフェイスで上手く誤魔化してくれた。
だけど俺はバカ正直で。
言った瞬間、義勇さんが頭を抱えそうになった。
流石に戦いの最中なので堪えていたが。
───すみません、本当にすみません、義勇さん。
そんなことがあったが、見事に俺は猗窩座の首を斬ることに成功した。
そのまま俺は気を失ってしまった。
そんな義勇さんの言葉が、俺の意識の浮上のキッカケになった。
だけど、すぐに意識が戻るわけではなくて。
猗窩座と義勇さんが打ち合っている音を、しばらく遠いところから聞いていた。
だが、ハッと意識が覚醒して目を開けると、そこには首を再生しかけている猗窩座がいた。
義勇さんが猗窩座の前に立ち、刀を構えているが、もう限界が近い。
俺も、、、俺も加勢しなければ!
そう思って刀を持って斬りかかるも、握力がなくなって刀が手からすっぽ抜けた。
義勇さんがギョッとした顔で俺を見る。
だが、駆け出して来てしまった勢いは止められず、俺はこの石頭で猗窩座に頭突きした。
その少し後、猗窩座は術式を展開させる。
あの構え、、、煉獄さんに致命傷を与えた時に使っていた滅式を出すつもりだ。
『俺に構うな』。
その言葉はもう、柱稽古の時に散々聞いた。
だけど、その時とは違う意味が含まれている。
俺を心配するから、俺を死なせなくないから、そうやって言ってくれているんだ。
────だけど、すみません。
────俺だって貴方を死なせたくない!!
俺は義勇さんの言葉を無視して義勇さんに飛びつき、攻撃の範囲外に逃げる。
そして、猗窩座を振り返る。
すると、猗窩座は少しだけ再生した頭に再生した表情で、笑って見せた。
猗窩座の口が、そう動いた気がした。
その後、猗窩座は攻撃を自分に打ち込み、再生しようとする身体を殴り続ける。
俺と義勇さんは、呆気にとられてその様子を呆然と見ていた。
しばらくして、ボロボロの身体で、猗窩座はどこかに向かってフラフラと歩き出す。
再生した箇所を、片っ端から殴り潰しながら。
ある場所で立ち止まり、猗窩座はまた歩き出し、また立ち止まり、を繰り返す。
そして、、、ある瞬間、猗窩座はガクリと膝をついて、両腕を斜め上に向かって伸ばした。
その先に、、、恋雪さんが立って猗窩座を、、、抱きしめているような気がした。
バサリ、と猗窩座の身体が崩れる。
恋雪さんと並んで光の中に消えていく狛治の姿が見えたような気がした。
こんにちは。作者の「藤」です。
今回は猗窩座の小説だったので、こういう『鬼滅の刃』の物語的には中途半端なところで終わらせていただきます。
今回のチャプターで完結なのですが、どうでしょうか?
過去を知らずに猗窩座と戦った時の炭治郎と、知ってから戦った時の炭治郎の違いが出ていたでしょうか?
さて、今回の話は第10話目です。
もう少し長くなる予定だったんですが、、、いざ書いてみるとこれ以上に何もないですね、はい。
何もない、というが、何も出ない、というか。
猗窩座、あっちに逝っても地獄に逝くしかないよかもしれないけど、一瞬でも恋雪さんと幸せな時間を過ごせていれば良いな。
それとも、累の時みたいに一緒に地獄で暮らすのかな。
なんて思ったり。
そんなことを考えながら書きました。
今回は過去返りの鬼は出さなかったのですが、一応『もしも柱達が○○の過去を知ったら…』シリーズの番外編です。
無限列車の直後に猗窩座の過去を見て、それから、、、って感じで考えています。
さて、こちらの番外編もまたシリーズ化しそうな雰囲気がありますが、シリーズ化します。
(;; °ω° )マジデスカ(←作者の心)
本編の方の『もしも柱達が○○の過去を知ったら…』の方をリクエスト停止しておりまして。
本編のシリーズの方で最終的に過去返りの鬼を殺そうと考えているので。
こういう感じで過去返りの鬼を出さないと、別に死んでても良くね?、、、みたいな感じですかね。
(;´∀`)…ァハハハ…ハハ…ハ…
とにかく、第2弾は決まっているので。
公開しましたらお知らせいたしますので、楽しみに待っていてください。
それでは、最後までお読みくださりありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
(*>∀<)ノ))またねー













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。