<炭治郎side>
曇った空の下、少し古びた家が並ぶ道を、殴られてボコボコになった狛治が歩いている。
その両手首はきちんと繋がっていて、何とか両手首を斬り落とすことは免れたことを知る。
狛治の顔はどこか生気を失っていて、何か酷いことをされたのは確かだが。
痛々しいその姿を見て、俺は思わず目を伏せた。
その時、俺達の後ろ、、、狛治が向かっている方向から、誰か大人の男の人が走ってきた。
狛治のお父さんかと思ったけれど、狛治が少し構えたところを見て、そうではないと悟る。
男の人は狛治を見ると、焦った顔で「狛治!!」と大声で呼んだ。
この距離なのだし、別にそんなに大声を出さなくても良いと思ったけれど。
でも、それほど重要なことがあったのだろうと思い、俺は身を固くする。
男の人は狛治のことを何度も呼びながら、ふらふらと覚束ない足取りで狛治に近づいていく。
そして、狛治の両肩を掴んで、今にも泣き出しそうな顔をした。
狛治は、その言葉を聞いてハッと目を見開き、硬直した。
何の反応もない狛治の身体を、男の人はゆさゆさと揺さぶる。
そしてそのまま、狛治を狛治の父親が死んだところに連れて行った。
俺達もそれについて行き、狛治の家だろう家の中を覗き込む。
そこには、首にくっきりと縄の跡がついた、酷く痩せた男の人が真ん中に寝かせられていた。
その顔には少し汚れた白い紙が乗せられ、もう亡くなっていることが示されている。
この場所一帯に住んでいる人達が気がついて、下ろしてくれたのだろう。
そして大方、あの男の人がこの人の息子である狛治を呼びに行ったんだろう。
狛治はポツリと呟いて、そのままふらふらと自分の父親の元へと寄っていく。
そして、ふわりと白い紙を避け、その顔を確認し、また白い紙を元に戻した。
きっちりと正座をし、足の上で両方の拳を固く握りしめて。
パラパラとこの家の屋根に雨が打ち当たる音がし始める。
ずっとどんよりとした灰色の雲があって雨が降りそうだとは思っていたけれど、とうとう降ってきたようだ。
半分夢の中のようなものだからか、雨の匂いはしなかった。
匂いはしないはずなのに、狛治からは深い悲しみと絶望の匂いが漂ってくるような気がした。
その報われない姿を見ていられなくて、俺は思わず目を逸らす。
ちょうどそちらに冨岡さんがいて、冨岡さんの様子が見えた。
冨岡さんは相変わらずの無表情で狛治を見ていたが、どこか憐れむような雰囲気を漂わせていた。
他の柱の皆さんも、みんな沈鬱な顔をしていて、狛治の父親の死を悼んでいるように見える。
おれが狛治に視線を戻すと同時に、俺の視界が白くなり始める。
場面が切り替わる。
どうかこの先で、苦労だらけの狛治が報われますように、と願いながら俺は目を閉じた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!