前の話
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その日の夕方。
くたくたになった私と、すこぶる快調になった傑を見て__
そう言って、硝子はあっさりと帰宅許可を出した。
むしろ、早く帰ってくれと手を振っていた。
傑の呪霊で家に帰り、ベランダに降り立つ。
久しぶりに2人で帰宅した我が家。
ずっと一人だったから、嬉しくてニヤけてしまう。
窓を開けて、室内に入る傑。
それに続いて、私も入ろうとしたが___
突然、傑が動きを止めた。
傑の背中に思い切り顔をぶつける。
鼻を摩りながら、目前の大きな背中を見る。
何となく、不穏な空気を察して__
恐る恐る、背後から傑の顔を覗き込んだ。
傑の眉間に深い皺が寄っている。
たぶん、怒っていると思う。
怪訝そうに足元のフローリングを見つめている。
え…
な、なんで分かったの…
背後の私を、ギロッと睨む。
見に纏う空気に殺気が混じってる。
疑いの眼で私を見る。
いや、愛の巣って__
あー、そう言えば…
記憶を思い返す。
そう伝えれば、諦めたように吐息を漏らす。
傑が私の手を引いて室内に入る。
そのまま傑は浴室へ向かおうとする。
そう言って、ニヤリと口角を吊り上げる。
何か、目論んでいる感じだった。
控えめに言えば__
傑は楽しそうに笑っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。