鎮静した空気を気にもとめず、あなたは尾崎を凝視する。
尾崎もあなたから警戒されると思っていたのか、驚きを隠せない様子でいた。
其れもそうだ。
あなたはポートマフィアに居た時の記憶がすっぽり抜け落ちている筈。
何故尾崎を、親しい者だけが口にする呼び名で呼んだのか。
武装探偵社の面子は勿論、後ろに控えるポートマフィアの構成員も混乱している。
あなたが言い切る前に、尾崎があなたを抱きしめる。
赤い紅の差された目の縁から一筋、涙が溢れた。
あなたも其れを聞き、涙が頬を伝った。
理由は自身にも判っていない。
だが、尾崎から伝わる温もりが何かを教えようとしていた。
さて、此処でO²、CO²、N²etc……基空気だった者達が口を開き始める。
そして、ポートマフィアの多勢の中から、光に当たっても尚黒い者が出てきた。
________芥川だ。
そう声をかける。
周りも(敦に関しては不本意だったが)同じ事を思っていた為、芥川の声掛けはかなり有り難かった。
____________________が。
なんと耳に届いていない。
芥川、困惑。
周辺、困惑。
尾崎、あなた、気付かず。
流石の敦も、此の時ばかりは芥川が可哀想だと思った。
すると其の時。
酷く耳に馴染んだ声。
振り返って見れば、其処には紛れもない、自身の兄が居た。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。