第65話

陸拾
4,104
2023/11/09 14:48 更新














鎮静した空気を気にもとめず、あなたは尾崎を凝視する。




尾崎もあなたから警戒されると思っていたのか、驚きを隠せない様子でいた。



















其れもそうだ。


あなたはポートマフィアに居た時の記憶がすっぽり抜け落ちている筈(はず)。




何故尾崎を、親しい者だけが口にする呼び名で呼んだのか。



武装探偵社の面子(めんつ)は勿論、後ろに控えるポートマフィアの構成員も混乱している。




尾崎紅葉
お主…私(わっち)の事を覚えておるのか……?
中原あなた
判らない…、けど、ッ知ってます…、!
姐さん、姐さん、……僕は………



あなたが言い切る前に、尾崎があなたを抱きしめる。



赤い紅の差された目の縁から一筋、涙が溢れた。





尾崎紅葉
…私(わっち)はあなたが今幸せならば何も云うまい……
私(わっち)を私(わっち)と認識されただけで嬉しいのじゃ、ッ




あなたも其れを聞き、涙が頬を伝った。


理由は自身にも判っていない。

だが、尾崎から伝わる温もりが何かを教えようとしていた。



























































中島敦
………2人のセカイ……
谷崎潤一郎
ボクら空気だね此れ…………



さて、此処でO²、CO²、N²etc(エトセトラ)……基(もとい)空気だった者達が口を開き始める。



そして、ポートマフィアの多勢の中から、光に当たっても尚黒い者が出てきた。







________芥川だ。




芥川龍之介
…尾崎さん、時間が押しています故……


そう声をかける。


周りも(敦に関しては不本意だったが)同じ事を思っていた為、芥川の声掛けはかなり有り難かった。


























____________________が。








尾崎紅葉
…嗚呼………あなたや…

芥川龍之介
………←




なんと耳に届いていない。




芥川、困惑。

周辺、困惑。

尾崎、あなた、気付かず。





流石の敦も、此の時ばかりは芥川が可哀想だと思った。





すると其の時。




































 ( )
姐さん、そろそろあなたを離してください。










酷く耳に馴染んだ声。













































中原あなた
中也さん………!?
























振り返って見れば、其処には紛れもない、自身の兄が居た。





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