春の風はまだ少し冷たさを残していたけれど、日差しはやわらかくて心地よい。
週末の公園には、満開の桜が雲のように枝を覆い、人々の笑い声が溶け合っていた。
広場に立ち止まり、ふたりは一面の桜を見上げた。
淡い花びらが風に乗り、雪のように舞う。
あなたの下の名前の髪にひらりと落ちた花びらを、ハヤトは指でそっと摘んだ。
頬を赤らめるあなたの下の名前に、ハヤトは楽しげに笑った。
人の流れを避けて、桜並木の奥にある小さな芝生に腰を下ろす。
あなたの下の名前が持ってきた手提げから、大きな包みを取り出した。
広げられた二段の重箱には、色とりどりのおかずがぎっしり詰まっていた。
卵焼き、唐揚げ、菜の花のおひたし、桜色のちらし寿司。春らしい彩りが目を引く。
ハヤトは箸を取り、卵焼きを口に運んだ。
褒められるたびにあなたの下の名前の表情が緩む。
あなたの下の名前の弁当を食べながら、ハヤトの胸の奥にも春の日差しのような温かさが広がった。
食後、あなたの下の名前がカメラを取り出した。
桜を背景に並んで座り、セルフタイマーをセットする。
ハヤトが肩を寄せると、あなたの下の名前は照れながらも笑顔を向けた。
カシャ、とシャッターが落ちる。
画面に映ったふたりは、春の光の中で自然に笑っていた。
夕方、桜並木がオレンジ色に染まり始めたころ。
あなたの下の名前が取り出したのはスケッチブックと色鉛筆だった。
ハヤトは頷き、あなたの下の名前と並んで腰を下ろした。
白い紙に、まずはあなたの下の名前が桜の枝を描き出す。
その横で、ハヤトは川沿いのベンチを描き加える。
筆跡が交差するたびに、ふたりは顔を見合わせて笑った。
あなたの下の名前は照れくさそうに頬を染め、色鉛筆を走らせた。
やがて紙の上に浮かび上がったのは、桜の下で寄り添うふたりの姿だった。
背景は川沿いの並木。
花びらが舞う空気感まで丁寧に描かれている。
ハヤトは絵の端に小さく題名と日付を書き添えた。
ハヤトは隣のあなたの下の名前の手を取って、ぎゅっと握った。
帰り道、スケッチブックを抱えるあなたの下の名前の横顔を見ながら、ハヤトはふと口を開く。
重ねられた声は、春の夕暮れに溶けていく。
桜並木をあとにするふたりの背中は寄り添い合い、舞い散る花びらがまるで祝福するように降り注いでいた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。