第68話

15 IF. ふたりは永遠に¦巡る春¦
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2025/09/29 15:00 更新















春の風はまだ少し冷たさを残していたけれど、日差しはやわらかくて心地よい。


週末の公園には、満開の桜が雲のように枝を覆い、人々の笑い声が溶け合っていた。





あなた
 わあ……きれいだね 
加賀美ハヤト
 写真よりずっとずっときれいだね 





広場に立ち止まり、ふたりは一面の桜を見上げた。


淡い花びらが風に乗り、雪のように舞う。


あなたの下の名前の髪にひらりと落ちた花びらを、ハヤトは指でそっと摘んだ。





加賀美ハヤト
 似合ってるよ 
あなた
 なにそれ 笑
 取ってくれたんじゃないの? 
加賀美ハヤト
 いや、可愛かったから見たかったんだ 
あなた
 ……まったく 






頬を赤らめるあなたの下の名前に、ハヤトは楽しげに笑った。















人の流れを避けて、桜並木の奥にある小さな芝生に腰を下ろす。


あなたの下の名前が持ってきた手提げから、大きな包みを取り出した。





あなた
 はいっ!お弁当 
加賀美ハヤト
 お、待ってました 






広げられた二段の重箱には、色とりどりのおかずがぎっしり詰まっていた。


卵焼き、唐揚げ、菜の花のおひたし、桜色のちらし寿司。春らしい彩りが目を引く。





加賀美ハヤト
 ……すごいなぁ、本格的 
あなた
 頑張ったんだよ?
 昨日から下準備したんだから 
加賀美ハヤト
 もっと自慢してもいいんじゃないか? 






ハヤトは箸を取り、卵焼きを口に運んだ。




加賀美ハヤト
 ……甘い、俺の好きな味だよ 
あなた
 よかった 
加賀美ハヤト
 唐揚げも……あ、おいしい 
 冷めてもおいしいのすごい
あなた
 やった、嬉しい 






褒められるたびにあなたの下の名前の表情が緩む。


あなたの下の名前の弁当を食べながら、ハヤトの胸の奥にも春の日差しのような温かさが広がった。














食後、あなたの下の名前がカメラを取り出した。





あなた
 せっかくだから写真撮ろうよ 
加賀美ハヤト
 お、いいね 








桜を背景に並んで座り、セルフタイマーをセットする。


ハヤトが肩を寄せると、あなたの下の名前は照れながらも笑顔を向けた。





あなた
 近いよ…? 
加賀美ハヤト
 桜よりもあなたの下の名前を撮りたくて 
あなた
 あとでからかったら許さないんだから 






カシャ、とシャッターが落ちる。


画面に映ったふたりは、春の光の中で自然に笑っていた。






あなた
 いい写真 
加賀美ハヤト
 思い出になるね 
あなた
 来年も同じ場所で撮ろ 
加賀美ハヤト
 約束だ 
あなた
 うんっ! 















夕方、桜並木がオレンジ色に染まり始めたころ。






あなた
 ねぇ、今日……これ描かない? 






あなたの下の名前が取り出したのはスケッチブックと色鉛筆だった。





加賀美ハヤト
 ここで? 
あなた
 うん、ふたりで一枚 






ハヤトは頷き、あなたの下の名前と並んで腰を下ろした。


白い紙に、まずはあなたの下の名前が桜の枝を描き出す。


その横で、ハヤトは川沿いのベンチを描き加える。


筆跡が交差するたびに、ふたりは顔を見合わせて笑った。






あなた
 桜の色、どうする? 
加賀美ハヤト
 淡いピンクで全体に
 花びらは少し濃い色を重ねてみよう 
あなた
 了解!
 私たち結構息ぴったりだよね 
加賀美ハヤト
 そうか?前からだったよ 
あなた
 いや、前よりも息ぴったりなのかも 
加賀美ハヤト
 自分で結論出しちゃうんだ 
あなた
 ふふ まあね 





あなたの下の名前は照れくさそうに頬を染め、色鉛筆を走らせた。





やがて紙の上に浮かび上がったのは、桜の下で寄り添うふたりの姿だった。


背景は川沿いの並木。


花びらが舞う空気感まで丁寧に描かれている。







あなた
 うん!めっちゃいい感じ! 
加賀美ハヤト
 そうだね 
加賀美ハヤト
 でも完成はまだだよ 
あなた
 えっ? 






ハヤトは絵の端に小さく題名と日付を書き添えた。





加賀美ハヤト
 これで今日の思い出がちゃんと残る 
あなた
 ……そういうとこ好き 






ハヤトは隣のあなたの下の名前の手を取って、ぎゅっと握った。














帰り道、スケッチブックを抱えるあなたの下の名前の横顔を見ながら、ハヤトはふと口を開く。





加賀美ハヤト
 思い出たくさんつくろうな 
あなた
 アルバムたくさんになるくらいね 
加賀美ハヤト
 アルバム作るの? 
あなた
 何十冊も作っちゃお! 
加賀美ハヤト
 それは楽しそうだ 笑 






重ねられた声は、春の夕暮れに溶けていく。


桜並木をあとにするふたりの背中は寄り添い合い、舞い散る花びらがまるで祝福するように降り注いでいた。


















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