マサカの爆弾に巻き込まれ、重体を負ったが全員命を落とすことは無かった。
戦を始めて早々、追い詰められてしまったが…【マサカ】の悪影響は私達のみならず 向こうにもあったそうだ。
その為、お互いに早速攻め始めようともせず、睨み合う時が過ぎていく。
日が彼方へ沈んでいくこの時間、電報を聞いたトルナム国からの援軍も来て…怪我を負った人達も次々と目を覚ました。
私は、塔の上で見張りをしているルナの元へ向かった。
ルナは、塔の上からずっとシオンのいるラザーラ国軍の方を見張っていた。
夕風が、そっと彼女の髪の毛を撫でていく。
ルナは、安堵の息を漏らして日が沈む方へ顔を向けた。
こんなにゆっくりしてて大丈夫なのか。って?
大丈夫。シキは、シオン側も大勢の怪我を負い…すぐに戦を再開出来ないことを推測出来ていた。
しかも、シオンがまた仕掛けてくるなら…日が暮れた夜の時だという推測も。
ラザーラ国 宮殿は、広くて前よりもややこしい造りへと変わっていた。イビルでさえも分からなくなるぐらい元を歪んで築いてあった。
きっと、シオンは分かっていたのだろう。
イビルが自分を倒しに来るのなら、ここだ。___って事。
だから、イビルでさえも分からなくなるぐらい作り直し…新たな建物も加えた。
それに気づいたシキは、攻め方を変えた。
向こうが夜から攻めてくるのなら、私達は日が沈んだら直ぐに立ち向かえるように用意しておこう。____と。
冷静に次の手段へと判断し出したシキを思い出しては、自分が不甲斐なく思えた。
顔に出ていたのだろうか、ルナは自分の隣にポンポンと手を叩き…『座って。』と私に手招きをした。
私は、頷いて ルナの隣に座った。
そう、シキは私よりも先に意識を取り戻し…シオンの考えに秒で追いついた。
そして、シキの能力で化け物と取り引きをして…この宮殿の仕組みを得た。それをシキ、グレイ、ルナは 全て頭に叩き入れたらしい。
シキのおかげで、私達は今シオンが何処にいるのか…いつ、何処から攻めてくるのか把握済みだ。
ふふ。とルナは柔らかく微笑んだ。
後ろから声がし、振り返ったら湯気が漂うコップを持ったジアンがいた。
持ち物検査の時に、皆に告げるよう命令した護衛のことを思い出した。…ちゃんとやり遂げてくれたみたいで良かった。
___ならば、後は私が間に合うように頑張るだけだ。
温かいお茶を飲み終えたルナが、そう呟いた。
ジアンは、陽気に笑って立とうとするルナに手を貸した。
ジアンの手を借りて立ち上がったルナと3人で、私達はゆっくりと沈んでいく太陽を見届けてから塔の下へと降りた。
____________
シキが、化け物を通して得た情報で間取り図を描いていた。
空は、薄暗くなり…向こうの街並みに光が灯る頃 眼帯をしたシキは立ち上がって時計を見た。
日の出まで、あと9時間________。
その間、睡眠も取れず…ずっと戦い続けることになるのかもしれない。
イビルは、短剣を強く握って顔を上げた。
聴覚が優れているアッシュが、そう呟いた瞬間 私達は塔から外へ出た。
シキからくれたラザーラ国 宮殿の間取り図は大雑把にこんな風になっていた。
玉座の間は、先程の爆弾【マサカ】のせいで潰れて通れない状態になっている。
私たちが今いるのは、下の方の見張り塔だ。ラザーラ国軍は、その反対側の監視塔にいるとの情報だ。
確かに、今その方向から兵隊がウロウロと見えてきた。
シオンが居るのは、庭園。
厄介だ、そこに行くには中庭、監視塔と繋がるサロンに応接間までも通らないといけない。
まるで、簡単には来れないように仕掛けているようだった。
私は、そう言うシキの顔を見てみた。シキは、何とも言えない顔で監視塔の方を見つめていた。
駆け寄ってきたグレイの声で、シキは頷いた。
シキの一声で、トルナム国軍は 声を上げてラザーラ国軍のいる監視塔へ向かって踏み出した。
爆弾の影響で怪我をし、痛む包帯の腕を触れながらも私は、その軍中へと混じり込んだ。
見上げた空にはもう…真っ黒な夜空が広がっていて、少しずつ明かりをついていく外灯と共に私達は、走った。
先頭を走るアッシュ、ロン、グレイの方から早速武器を当て合う音が中庭に響いた_______。
そして、恐怖を抱えながらも剣を握り…私の方へ叫びながら襲いかかってくる護衛が視野に入った。
私は、ゆっくり目を閉じて短剣の鞘を抜いた______。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。