第4話

過去_未来
1,767
2023/06/18 21:30






ああ、遂に悟られてしまっただろうか。



今まで、ずっと隠し通してきた。
"おれ"のこと。



仕事場でも誰にもバレたことがなかった。

なのに、どうして。




気の緩みだ。
気の緩みが全てを台無しにした。



これから、どうしてくれようか。



あなた
……ッふぅ………




恐らく、まだ甚爾さんは確実には気が付いていない。


勘づいてきているというのが正しいだろう。




"おれ"のことをどこまで隠し通せるか。
そこが、"おれ"がどこまで生きられるかの分かれ道。




あなた
(このまま仕事行かないのは駄目だ
せめて、今まで通り、当たり障りのないようにしなければ…)






悟
…………
傑
どうしたんだい、悟。
随分と考え込んでいるようだけれど
悟
ん、あー………うん、まあな、色々
傑
……。

悟、自分の中で解決しようとするのもいいことだけど、誰かに相談したりすることで解決策が見えることもあるんだよ
悟
そう、なんだけどよ……。
これはまあ、俺の家の問題というか…
傑
へぇ。その話、私興味あるね
悟
はあ?
傑
聞かせてくれないか?

悟の家の話
悟
………………

も、わーたよ。話す話す。





悟
まあ、きっかけは大した事じゃなくて、たまたま家の家系図を漁ったんだ。

別に、特に目的があったわけじゃない。でも、漁るならうんと古くて隠されてるやつの方がおもしれぇだろ?
傑
まあ、そうだね。
悟
だろ?

だから、家の蔵で漁ってたんだよ。
悟
そしたらよ…………
傑
うん
悟
俺の両親、叔母おば叔父おじ祖父母そふぼまではいいんだ。
問題は、そこから。








悟
なんでか、居ないはずの俺の従兄弟いとこの名前が書かれていて、尚且なおかつ、その名前が上から墨で書き消されてたんだ。
傑
………つまり、悟にはそもそも居ないはずの従兄弟がその家系図には書かれていた。

しかし、その名は確認できないほど上から墨で書き消されていた……ということだね
悟
そーいうこと。

変だろ?
傑
両親に話してみたのかい。その従兄弟の両親とかにも
悟
まあな。その家系図をケータイで撮って見せてやったよ
傑
そしたら?
悟
「お前に従兄弟なんて居ない。なにかの勘違いだ」

「それはただの書き間違えだろう」

って言われたよ。もうお手上げ
傑
……それは怪しさ満点だね。
で、悟はその従兄弟について調べて見たのかい?
悟
ああ、当たり前だろ。

ただ、あの家系図を見せたのが悪かったのか、五条家からはその従兄弟の情報は全部消されてたね。
傑
ほう……。それで、誰か分からず悩んでいたのか
悟
まあー、そういうことになるな
悟
何かいい案浮かんだ?
傑
うーん…………。

例えば、その従兄弟が存在したとして、家から追い出されたとされる。

いや、そもそも家で殺された可能性こそ低いな。それなら両親達が隠す必要性も感じられない
悟
そうなんだよな
傑
まあ、存在しているだろう。

で、外の世界で生きていけて、尚且つ御三家でもある五条家に見つからないためにはどうすればいいと思う?
悟
はあー?んなもん俺が知るわけねぇだろ

ま、せめて言うなら、
……呪詛師になってるとか?あとは、海外逃亡?
傑
うん。そうなるね。

まず、海外逃亡は金がなければできないだろうから、海外逃亡の可能性は低い。
傑
次に呪詛師。

五条家の出だからスタートはそれこそ苦しいだろうけど、才能さえあれば呪詛師の世界に入っていてもおかしくはない
悟
──ってことは、俺の従兄弟は呪詛師になったってことか?
傑
あくまで可能性の話だけれどね



傑
どう?混乱はまぬがれただろう
悟
……おう。さんきゅーな傑。






傑
──で、私としてはその話が随分と気になるのだけれど
傑
悟はその従兄弟を見つけたらどうするつもりなんだい
傑
まさか、五条家に連れ戻す気はないだろう
悟
五条家に連れ戻すことはないな。

もしかしたら、追い出されたんじゃなく、逃げたのかもしれないし
傑
それもそうだね
悟
俺としては、……理由が聞きたい
悟
会ったこともねぇ奴だけど、見つけちまったもんは仕方ない。
放っておくのも俺の性分じゃねーし
傑
ははw。それもそうだ。

じゃあ、乗り掛かった船だ。私も何か手伝えることがあれば手伝うよ。
傑
今みたいに、話すだけでもいいからさ
悟















その日は妙に、屋敷が慌ただしかったのを覚えている。



いつも、どれだけ幼くとも
「静かにしなさい」
「大人しくしていなさい」
と口煩く言われてきたのに。



今日は、たとえ畳の上で転がっていたとしても、屋敷の下女達には何も言われない。


心は楽だった。



なのに、どこか不穏な気がしたんだ。





嫌な、どれだけ振り解こうとしても、纏わり着いてくる。




───
───
聞きました?当主様のご子息のお話



襖の先の話が聞こえた。







彼女らは、おれを忌み嫌う。




何故だろう。




あの冷ややかで憎悪に満ちたような目は、おれは見たくない。




───
───
ええ、もちろんです。

あの話でしょう。
















───
───
悟様が無下限術式を習得したって話。











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