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第5話

誘い
32
2026/02/21 13:03 更新
エリー
いやぁ、疲れた疲れた
隣でエリーが身体を伸ばし、あくびをしている。パーティーのようなものに疲れはつきものだ。辺りはすっかり静かな闇の中である。
あなた
まぁ、楽しめたしいいでしょ
エリー
私明日授業入ってるのに〜
あなた
何で今日参加したのよ…
苦笑しながらエリーの肩をつつく。
程良い酔いを夜の冷たい風が吹き飛ばしてくれる。それが心地よい。
エリー
にしても、今日のビックニュースは…
またこの話題か。

私はあの人の顔を思い浮かべた。いつでもどこでも噂の的で疲れそうだな、なんて他人行儀なことを考える。
エリー
アラスターが恋人持ちってことね
何故か誇らしげな表情をするエリー。彼女の恋愛話に対する熱情といったら、何と表せばよいのやら。

アラスターが恋人持ちなのには驚いたが、別に意外なことではない。それは誰もが思っていたことだと思う。
あなた
結構年上なのが意外
エリー
それはそう
20代後半の女性……。もしかして、ラジオ局の人でひょんなことから付き合ったとか?

いろんなパターンを考えてみるが、どれもしっくりはこない。アラスターが恋愛をするのもどこかしっくりこないが。
あなた
ま、本人が幸せなら何でもいいでしょ
エリー
そうだね、次会う時お祝いでもしてあげようか
あなた
いいね、賛成ー
エリーと別れ、一人で静かな街路を歩く。風邪で木が揺れる音が邪魔にも聞こえるし、心地よくも聞こえる。

私はアラスターの目を忘れられなかった。あの睨むような、殺気を含んだようなあの目……。

もしかして、それだろうか?私がアラスターに関することを過保護の親のように心配する理由は。あの目が、私をどこか不安にさせるのだろうか?
あなた
(それにしても、何であの時睨んできたの……?)
誰に対しても平等に笑顔を振り向く彼が今日、私を睨んだ。何も心当たりないのが悲しくなってくる。
あなた
はあぁ
右の角を曲がれば家だ。私は今までの、考えを捨てて軽々と曲がりかけた。その時、

ドンッ


誰かとぶつかった。肩を手で抑え、相手にお辞儀する。
あなた
すみません、前見てなくて……!
……。



頭を下げたまま数秒が経つ。相手からの返事がなく、もしかしたらとんでもなく怒らせてしまったのかと疑問に思い出した時、予想外の声が聞こえた。
アラスター
いえいえ、こちらこそ申し訳ない
あなた
ア、アラスター!?
私の近所に小さな公園がある。
ベンチが2つほど並んでいて、滑り台とブランコ、砂場がある小さな公園。子供たちが時々使用している。

その公園のベンチに私とアラスターは腰掛けていた。
あなた
……
何だか気まずい。せっかくすれ違ったのだから少し話でもしていこうということで、今に至る。話なんてすることはないが。
アラスター
今日は踊らなかったのですか?
あなた
え?あ、うん
突然な質問に拍子抜ける。
アラスター
失礼しました、「今日も」でしたね
あなた
は、はぁ!?
アラスターが私をからかってくる。少しムッとしながらも、それは場の緊張を慰めるための彼の気遣いだと気付いた。何だか気を使わせてしまって申し訳ない。
あなた
そういえば、そっちは?踊ったの?
私意外とすぐにエリーと帰ったので、あの後アラスターがどうなったのか知らないのだ。
アラスター
いえ、今日は踊りませんでしたよ
やけに「は」を強調してきた気がする……。
あなた
あれ?一緒にいた女の人と踊らなかったの?
思わず疑問に思ったことを口走ってしまう。あまりプライベートなことを聞くつもりなかったのだが……。
アラスター
いえ、アレはただのビジネスの相手です
ビジネスの相手をアレ扱いしても大丈夫なのだろうか?
やっぱりラジオ局の人か……。私は妙に納得した。
あなた
なんだ、そうだったのか
少し残念だ。エリーとお祝いがどうのこうのと話していたのに。
アラスター
……



まただ。アラスターがあの目で見つめてきた。

それは数秒の間で、またすぐいつものアラスターに戻った。不快感や恐怖心を覚える。
アラスター
まさかお互い踊っていないとは!
あなた
確かに、ダンスホールに行ったのに踊らないなんてね
できるだけ笑顔で応える。

それを見て、アラスターは無言でベンチから立って私の前に手を差し伸べた。
あなた
なに?
アラスター
もちろん、ダンスの誘いですよ
あなた
は……
本当に拍子抜けてしまう。
アラスターと踊るのはいつぶりだろう?しかも、ここは公園だ。
アラスター
ダンスホールの次の舞台はここです

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