第18話

虹とブレーキ
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2020/09/18 22:52
楽しい修学旅行も終わり。

突然の豪雨で動揺した人も多かったが、

すぐに止んだ為、支障が出ることもなかった。

バスに乗り込む。

僕はデジカメに入っているカメラロールを

探って、この二日間を思い出す。

神戸のネスタリゾート、駅前の

夜景が綺麗なホテル、京都のお寺。

全部、全部、僕と美玲の大切な思い出だった。

今度こそは、失わないと思っていた。


バスが走り初めて数分。

先生がごそごそと動きだし、

バス内に曲が掛かることになった。

大半は最近のヒットソング。

ノリノリで歌っている子や、静かに

楽しんでいる子、本を読む子。

みんな自分の好きな時間を楽しんでいた。


そのとき、「ハルノヒ」が掛かった。

前に座っている美玲の肩がピクッと動く。

柔らかな歌声はバスを幸せな空気にした。

神様もそれに気づいたのだろうか。

また降りだした雨は止み、ワイパーが止まった。


そして、虹が掛かった。

七色で綺麗な虹の橋。

少しだけの時間だったが、久しぶりに

見れた虹に、美玲も感動していた。

「やっぱり虹綺麗やなぁ…」

彼女は少し涙ぐんだ目で呟く。


うまく撮れなくても良い。でも、残しておきたい。

僕は窓の外にピントを合わせた。






上手く撮れた。

綺麗な街並みに掛かる橋はとっても幻想的。

僕までも釣られて泣きそうになった。

それを誤魔化すように、視線をまた

カメラのレンズに戻した。



その五分後。


バスを包んだのは


急ブレーキの音と皆の悲鳴だった。

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