他愛もない、たった2ターンちょっとの短い会話。
でも、私はこのたった一瞬ために毎日、この時間に学校に来ているのだ。
あと15分もすればクラスメイトが続々と登校し始め、すぐに賑やかな教室になる。
今だけ。
この静かな朝の15分だけ、ひそかに思いを寄せているクラスメイト、ソン・ウンソク君と私が教室に2人きり。
今だけは2人きり。
クラス替えをして、なんとなく、今日は早く行ってみよう、なんて思って初めて7:30に学校に登校した、5月の半ば。
その日、彼は静かに窓際にある自分の席に座り、窓の外を眺めていた。
初夏の痺れるように暑い、しかし爽やかな風が吹き込み、教室を支配する。
自分の体がこんなに熱を持っているのは、夏の気温のせいだけなのだろうか。
初恋だった。
その日を境に、私の高校生活最後の一年は、急速にスピードを上げて進み始めたように思う。
ウンソク君を目で追い始めてから、あまり変化のないクールな表情の内側に秘められた、暖かい部分を知った。
誰が見ているわけじゃなくても、そっと廊下に落ちているゴミを拾ってゴミ箱に入れるところ。
しれっと友達の罰掃除を手伝うところ。
電車で親子連れが乗ってきた時、こっそり席を立って隣の車両に移動するところ。
周りをよく見ていて、でもそれを周りには悟られないように振る舞っている。
小さなことの積み重ねだけど、そういう部分を幾つも知る度に、私の想いも加速していった。
でも、こんなにあなただけを見つめていたって、当のウンソク君は私の好意にたったの1㎜だって気づいていない。
不毛な恋。
初めて教室で言葉を交わしたあの日から、今も何一つ変わらない。私たちの関係は
"ただのクラスメイト"
卒業まであと4ヶ月。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。