第2話

出会いの5月
49
2026/03/24 05:16 更新
あっつー…。本当にまだ5月上旬なの…?
今日の最高気温27度ってやばいでしょ…。
早く夏終わって欲しいなー。


夏の本番はまだこれからだというのに、自転車を漕ぎながらそんな言葉が頭に浮かんだ。

通っている高校は自転車で20分の距離にある。


この信号を渡れば学校は目の前。なのに、運悪く手前で赤信号になってしまった。


うわー…今日全部の信号引っかかってるなー…。
ここの信号長いのに、ついてない。


自転車を漕いでいる間は、風を感じられるからまだマシなのだが、止まった瞬間に一気に汗が吹き出してきて、上昇する体温に夏の到来を感じる。


制服のシャツが素肌にペタッと張り付く感じがなんとも不快だ。


朝早く家出たの失敗だったかな…。


全部の信号に引っかかるなんて、高校に入学して以来、初めてのことだ。
やはり、慣れないことはするものじゃない。


今日は珍しく朝早く目が覚め、いつもなら二度寝をするところを、ベッドから出て制服に着替えたのだった。


早起きは三文の徳。


そんな言葉があるぐらいだしと、今日は何かいいことが起こる、そんな期待を抱いていたのに朝からこれで、すっかりやる気が削がれてしまった。



肌にまとわりつく、蒸されるような暑さに辟易していると、信号が青に変わった。


額を伝う汗を手で拭いながら、自転車のペダルを踏む足に力を入れる。


とっとと教室に入って、クーラーをつけて涼もう。




学校に着くと、駐輪場に自転車を停めて、昇降口に向かう。


見える範囲には誰1人いない、静まり返った校舎。


まぁそうだよね。まだ7:30だし。


靴を履き替えようとうちのクラスの下駄箱を見ると、黒いスニーカーが入ったボックスが1つあった。
まさか先客がいるとは。


でも、私達は受験生だし、朝早く学校に来て勉強している人がいても何も不思議ではない。


ラッキー。もしかしたら、もうクーラーついてるかも。


特にその人物が誰であるということは深く考えず、靴を履き替えると足早に階段へと向かった。


教室、涼しいといいな…。


2階まであがり、すぐ正面にある3-3の教室前方の扉を開ける。


ガラガラッ


途端に心地よい冷風が私を包み、体の温度を下げてくれる。


先客のクラスメイトにお礼を言おう。


そう思って教室を見渡すと、一番後ろで窓の外を眺めていた男子生徒がこちらに振り向き、目が合った。





その瞬間、本当に時が止まったかのように錯覚した。





不意に、以前友達に言われた言葉を思い出す。




高3で初恋がまだだからって、絶対焦らない方がいいよ
この人だ!って人が現れたら、自然に好きになるんだから大丈夫




ありえない。


当時、そんな運命の出会い、なんてことあるわけないと話半分で聞いていたし、ましてや毎日同じ空間で生活しているクラスメイトなんて、一目惚れですらないのに。


冷静になろうと、そう自分に言い聞かせる。


そんな私の考えとは裏腹に、火照った胸が心臓をドクンドクンと跳ねさせて、その温度が体全体に波紋のように広がっていく。


クーラーによって一度冷まされた私の体は、みるみるうちに熱をぶり返していった。


もう認めるしかない、その答えに辿り着くのにそう時間はかからなかった。


目を逸らすことができないでいると、その相手は小さく会釈をした。


ウンソク
ウンソク
おはよう

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