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第3話

あなたの世界に
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2026/03/27 00:26 更新
ウンソク
ウンソク
おはよう
ウンソク
ウンソク
今日、来るの早いんですね



話しかけられて我に帰り、会釈と挨拶を返す。

あなた
あっ、おはよう
あなた
あっ、なんか、特に理由があって早く来たわけじゃないんですけど、たまたま目が覚めたので…。
ウンソク
ウンソク
なるほど
ウンソク
ウンソク
あなた
ウンソク
ウンソク
あなたの名字さんと話したの、初めてかも
あなた
あ、たし…か…に…
あなた
…え、ウンソクさんって、私の名前知ってるんですか?



普通のことなのかもしれないが、今まで会話をしたこともなく、クラスで目立っているわけでもない私の名前を当たり前に呼ばれたことに驚いた。


ウンソクさんは、意外なことを言われたとでもいうかのように、大きい瞳をさらに大きくさせた後、少し笑った。



ウンソク
ウンソク
知ってますよ笑
ウンソク
ウンソク
クラスメイトなんだから
あなた
それはそうだけど…
ウンソク
ウンソク
あなたの名字さんだって、俺の名前知ってるじゃないですか
あなた
いや、この学年にウンソクさん知らない人いないですよ…



今まで接点がなく、特別な感情を抱いているわけでもなかった私だって、どんな人なのか、ある程度は高1の時から知っていたのだから。


ウンソク
ウンソク
いや、絶対そんなことないと思います



彼はちゃんと自覚しているのだろうか。


その言葉が頭に思い浮かぶと、ふわふわした感情が、急に不安に変わった。


高校に入学した日から、学校中で話題になっていたこと。


"推し"だから恋愛感情ではないと言いながら、あわよくば隣を狙っている女の子が今までどれほどいたかということ。


朝、寝癖をつけて登校したって、女の子達にとってはプラスのポイントになっていること。


自分が普通ではないということ。



校内でずっとアイドル的存在だったにも関わらず、浮いた話の1つも聞いたことがない。


選び放題のはずなのに何故彼女を作らないんだろう。


そんな立ち入った事を今の関係で聞けるはずもなく、入り口で立ち尽くしていると、ウンソクさんはまた窓の外に視線を移した。




その日の会話はたったそれだけ。


それだけなのに、その一瞬が頭から離れない。


ウンソクさんの住む世界に、ただのクラスメイトとしてだとしても、私が存在しているということが嬉しくて、胸がいっぱいになった。


それからというもの、私は初めて言葉を交わした日と、同じ時間に登校するようになった。


なにか引力みたいなものに一定の距離を保って引き寄せられ続けている、そんな感じ。


顔がかっこいいから好きになったわけじゃないって言ってもきっと誰も信じてくれないよね。


あんな出会い方で、ましてや相手があのウンソクさんだなんて。


ウンソクさんに好意を持っているまわりの女の子達と、私は何も変わらない。


少しだけでも話せたら。
少しだけでも近づけたら。


少しずつでも、この関係が変化していきますように。


毎日、朝教室に入った瞬間にあがる心拍数。


その日も、その次の日も、その次の次の日も。


受験の年でお互い忙しいからと、別れる周りのカップルたちがいる中で、私は今日も初恋という熱に浮かされている。





卒業まで残り10ヶ月

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