第2話

【長編】午前2時にバターの香り
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2026/01/17 04:46 更新
※全部捏造 全てご本人様とは関係ありません

伊波と壊れた氵宀IIの話。
もしくは、甘い、思い出の話
午後10時
疲れた。今日はとにかく疲れた。

伊波は今年が始まってから一番なのではないかというほどの疲労を感じていた。"それ"は単なる任務によるものとは比にならなかった。
だって今日は、いつもの4人ではなく単独で、しかも上からの嫌がらせで明らかに自分に向いていない任務だったのだから。

西ではメカニックヒーローである伊波をよく思わない輩もそれなりにいる。だからそれなりの頻度で悪意のある任務が回ってくる。

つい先月なんて、大型の小賢しいやつの討伐任務で。組んだ相手は指示を出されるのが気に食わなかったらしく伊波の状況把握用のドローンを壊してしまった。
当然、そんな状況でうまく捌けるわけもなく。
いつもより討伐に時間がかかってしまい、報告書もいつもより多めに書く羽目になってしまった。

今日の任務は…
あまりにひどかったのでもう思い出したくもなかった…

そんなわけで、伊波はものすっごーく疲れていた。
もう、本当に疲れていた。

そのせいだろう、やはり人間というものは疲れたら甘いものが食べたくなっちゃう生き物なんだよ。

鼻から脳に直接訴えかけてくるバターの香り。
手足が痺れるくらい甘くて…それでいてやさしい。
煮詰めて溶かした砂糖の色が目に浮かぶ。

あぁ、もうダメだ!ここを何食わぬ顔で通り過ぎるなんて今の俺にはできないね!!

「シュークリームひと、いや…よっつで!!」
午後11時
いつもは何気なく通り過ぎていたシュークリーム屋さん。ただいつかは食べたいと思っていた。
それがたまたま今日だっただけ。いや、にしても四つは買いすぎか…?

と、取り留めのないことを考えながら歩を進めているのは俺たちDyticaの拠点。

4人にはそれぞれの家がある(ルベイエとかね!)ので任務前や後に会議なんかをする時は拠点に集まるがそれ以外で拠点にわざわざいる必要はない。だから、今日他の3人がいるとは限らない。
特に小柳ロウ、あいつは2週間ぐらい連絡が取れないこともザラにある。
まぁ、副業もあるだろうし仕方ないっちゃ仕方ないのかもしれないが…。

一つだけ残ったら喧嘩になっちゃうかなぁ…ああ見えてるべも譲らないところあるし…いや、るべは甘いの得意じゃないっけ、一応甘さ控えめの買ったけどさぁ。

あぁ、また取り留めのないことを…今日はもうだめだ、1人でいるにはあまりにも冷たい。
早く拠点に戻ろう。そう言うことは戻ってから考えればいい。どうせなら本人に聞けばいい。
午前11時30分
「ただいま〜」
「あ、おかえりなさい、…ライ。」

声の主の方をふっ、と見る。
いつも通り、淡い紫色の髪。だが、
「あれ、今日任務って言ってなかったっけ?」

「あ、うん。そうだったんだけど、なんかキャンセルになったので…臨時営業で鑑定士を。」
なるほど、だからいつもの腰まである長い髪じゃなくて左にまとめた髪にキャスケットを被った鑑定士スタイルなのか。

「ところでライ、…なんか甘い匂いがするんだけどそこの紙袋は…?」

「あ、あぁ、カゲツとロウいる?ほしるべお茶淹れてよ。」
「わかりました。ちょうど今日いい紅茶頂いたのでそれ淹れますね。」
「それから、カゲツは部屋で寝てます。お昼ちょっと後ぐらいに寝たからそろそろ起きてくると思うけど…どうだろう、お疲れだったからもしかしたら朝まで寝るかも。小柳くんはわかんないです。」
「でもライに用事があるみたいだったから今日中には帰ってくるんじゃない?」

そういって彼は台所に向かった。
自分も流石にずっと玄関にいるわけにはいかないので重い腰を上げてリビングに向かう。

「なんやぁ…?」
「あ、カゲツ、ごめん起こしちゃった?」
今起きましたと言わんばかりにおおきなあくびをして自室から降りてきたのでうるさかったかな、と少し反省。

「いや、ご飯食べずに寝たからお腹空いて、て」

「いな、み…?」

「ん?うん、伊波だよ。」
「あ、いや…うん、そうよな。うん。」
…?どうしたんだカゲツ、寝ぼけてるのか?
「何カゲツ、寝ぼけてるの?お腹空いてたんだっけ、ほしるべが今お茶淹れてくれてるよ。」
「あ、あぁ…。」

さっきからなにやら歯切れの悪い返事を繰り返している。まぁ、寝起きだしそんなこともあるか。

2人でリビングのソファに腰掛ける、隣のカゲツが時折口を開きかけては閉じる。

「っあ"〜疲れた!」
低い、狼の唸るような声に振り返る。
「ロウ!おかえり!!」
「お、おぉ…ただい、ま?」
…なんで疑問系?何かがおかしい、今日帰ってきてからずっと…カゲツやロウはわかりやすかったけどそう言えばほしるべもなんとなく受け答えに妙な間があったような気がする。

もしかして
「お茶入りましたよ〜」
「ありがと!」
暇を持て余していた頭を手遊びをする容量で回していた思考は御茶会議の合図で打ち止められた。

「伊波、その紙袋なんだ?」
「ふっふっふっ…これはね〜…。」

「うわ、なんやコレ!」
「え〜この時間に?太りそう…。」
「甘い匂いがすると思ったけど、コレか…。」

ロウはともかくカゲツはシュークリーム初見なの?ていうか誰だ太りそうとか言ったやつ。いいんだぞ別に食べなくたって。

「「「「いただきまーす」」」」

柔らかいシュー生地を口に入れるとバターにたっぷり砂糖を入れたバタークリームが口いっぱいにとろける。

「甘いな。」
「感想うっす!」
「濃い感想を求めるなら俺じゃなくてカゲツを見ろよ、初見のシュークリームに目キラキラさせてんぞ。」

「え、カゲツマジで初見?」
「ん、里じゃこんなのなかったし、自分でこういうのあんま買わんから。」

「どう?おいしい?」
「おいしい!!」

まぁ勢いで買っちゃったけど、カゲツがここまで喜んでくれたなら買ってきた甲斐があるというもの。

「るべの紅茶もおいしいね。」
「なんかどっかの国でしかとれない茶葉でたしかすっごい希少でとんでもなく高いらしいですよ。」
「…ふわふわしすぎじゃない?本当に鑑定士か?」
午前0時
「ふー、ごちそうさま。」

「なぁ、いなみ。」
「言うかずっと迷ってたんやけど、言っていいんかなこれ…。」
二度、瞬きをして息を一つ。
「…お前いつから寝てないん?」
「えっ」

何を言い出すかと思えば、それは。
「あと伊波、飯もそんな食ってないだろ。」
「えーと…」
「もしかしてライ、隠してるつもりだったの?」
「ハッ、無理があるだろ目の下にそんな隈作っといて。」

「まぁ最近大学の課題とか任務の報告書とかあって寝れなかったのはそうだけど…!」
「はー、それだけちゃうやろ!ここ最近夜な夜な機械いじってんのぼく知ってるんやからな!なぁ?タコ!!」
「そうですよ、防音とは言え気配で起きてるのは分かるし、こないだの任務帰り大量に壊れた部品持って帰ってきて…。」
「それは…!」

それは、あの時アイツに壊されたドローン達を直してて…

「なぁ伊波。」
「オレたち機械のこと、お前のこと、全部わかってるわけじゃないけど、一応、仲間なわけだし。」
「友達やから!」

「少しぐらい、手伝わせてください。」

3人の顔がずいっと近づいてくる。…目を逸らしてはいけないような気がして、ちょっと怖い。でも心配してくれてたのはわかった。
「…ごめん、心配かけて。」

「実は今日もね、もう、疲れてて。本当に、疲れてて。何も、したくないんだ。」

それぞれが頷きながら俺のぐちゃぐちゃした単語を並べただけのような話を聞いてくれる。

「でも、今日も、ドローンとか、俺のメカ達、壊されちゃって、戦ってる時に壊れちゃうことはある、し、自爆機能もついてるけど。」

「それでも、目の前で、壊されると、それは、違うじゃん。」

「みんなに認めてもらいたかった。」
「それだけなのに。」

「俺は、いつまで…!」

「いなみは頑張っとるやん。」
カゲツが言う、2人が少し目を伏せて同調の意を示す。
「ぼく達だって、最初からいなみの機械全部信用してたわけちゃうやろ?流石に壊したりはせんかったけど。」
馬鹿正直に伝えるカゲツにロウが少しバツの悪そうな顔をする。それをるべが笑う。

「みんな、がどのくらいなのかわからんけど、少なくともぼく達はいなみのこと、認めてるし、仲間として、友達として、そんけいもしてる。」

「それだけで満足しろってわけじゃないですけど、頼ってほしいよ。」

「ん、ごめん、ありがとう。」
「それじゃあ!3人に頼みごと!!俺久しぶりに寝れそうだし明日非番だからここで寝る!あとは頼んだ!!」



「「「はっ、はぁ!?」」」
ライー、こんなソファで寝たら体バキバキになっちゃいますよー。
確か仮眠用にマッドレスあるけどさぁー出すの?仮にも成人男性だよ?移動させるの?疲れるよー、俺たちだって寝たいよー。

「じゃんけん…ですか。」
「あ?何を。」
「ライ、こんなソファじゃ可哀想でしょ。布団に移動させなきゃ。」
「今日はええよ、ぼくの術で移動させるから。」

…あぁ、術ね、ふぅん。そう…。

「…え、それできるならなんで今までやってくれなかったんですか?」

今日はイレギュラーではあるけれども、ライがこんな風になるのは初めてではない。
好奇心の塊で機械オタクの彼は一度火がつくと燃え尽きるまでやり続ける。突然作りたいものができると自室にこもって7時間ぐらい出てこない時もある。そうなるといる人でじゃんけんして運んでやるのだが…。

「おれ結構運ぶのキツかったんですけど、140億歳には腰痛が…。」
「あれってタコがやりたくてやってたんちゃうの?じゃんけんしたいだけやと思っとった。」
「違いますよ!最初に言い出したのは…!」
・・・
「…小柳くん?何逃げようとしてるの?」
「カゲツが使える術なら小柳くんも使えるよね?」

「ははは!!バレてやんの…そんじゃ、いなみ起きちゃうから静かに争ってくださいねー!」



「さて、小柳くん…ライもカゲツももういませんよ?どうしますか?」
「…さーせんした…」
「とりあえず一発殴らせろイキリ隠キャオオカミ。」
ひゅ、小柳がと息を呑む音だけが拠点に残された。
午前1時
「小柳くん、明日っていうかもう今日だけど、なんか用ありますか?」

タコの吸盤の形が赤く、くっきりとついた頬に湿布を貼り、「他に怪我は?」と聞くとゆるゆると首を振った。

「…別にねえけど。」
「カゲツは?」
「ぼくも非番やね。」

「俺も今日は一日暇なんですよね。」
「ふーん、Dyticaみんな暇なんや。」
「それで、なんでタコはそんなこと聞いたん?」

「今日は一日ライ労りDAYとか、どう?」
「ハハッ、それはまた随分と楽しそうなことで…」
目が笑っていない狼となんやそれ?と目を丸くする白いふわふわ。

「今回のことは、俺たちじゃどうしようもなかったけど…普段Dyticaってライとライのメカに頼りっぱなしで、ライがいなかったら今頃とんでもないことになってませんか?」

「あー、まぁそうか。あいつが自分からやってるとはいえ俺たちって普段…。」

「いやや、いなみがおらんかった時のことなんて考えたくない。」

カゲツがふるりと身震いをしつつボソッと呟いた。ちょっとカゲツには酷な質問しちゃったかな。

「ね?だから今日はいつもありがとう。ってライにいう日にしましょ?」

昨日、誰も口には出さなかったものの、伊波の無茶に気づいたのは隈があるとか夜な夜などうのこうのと言うよりも一目見た時の伊波の顔のせいだったと思う。

立ち居振る舞い自体はいつもと何ら変わらなかった。けれど大きく丸い朝焼けの空のような緋い瞳にはいつものような光が一縷もなかった。

どれだけのストレスが、あの小さな体に溜め込まれてたのか。小さくて細くて、でもあのバカデカハンマーを振り回すぐらいの筋力はある、あの体に。
そう考えるだけでも身震いする。
彼はあんなかわいい顔をしているのに中身は誰よりも漢なのであった。だからちょっとやそっとじゃへこたれない。

(だって伊波ライはみんなのスーパーヒーローなのだから。)

「あ"〜、伊波には感謝してるし、いいやつだと思ってるけど」

小柳くんが隠した怪我はライが一番早くに見つけて手当てをする。逆にライが怪我を隠した時は小柳くんが手当てをする。あの狼はおそらくライが怪我を隠そうとしていたこと自体に気づいていないのだ、怪我を隠そうとしてることには気づけないが怪我には気づく、鈍いんだか鋭いんだか。
カゲツがよく言うもちもた、持ちつ持たれつの関係。

ねぇ、小柳くん。感謝は伝えないと伝わらないんだよ。その長〜い命でよーくわかってるでしょ?

俺たちは、後悔の方が多いんだからさ。

「…わあったよ、今回は付き合う。」
「そうは言うても何するん?ぼくたちができることなんてゲームか、ゲームか、ゲームくらいやろ?」

「カゲツぅ〜もっと頭柔らかくして考えてくださいよぉ〜」
「うわ、タコキモい。」

「…お前、あれ作ったらいいじゃん、こないだリトとウェンと作ってたやつ。」
あれ…って、あぁ。なるほどね

「なんやぁ、なんか作ったっけ?」
「ほら、持って帰ってきたじゃないですか、4人で作ってさ。」
「え、あれ作るん?この3人で?」
「別にあれぐらいの難易度だったら4人いなくても余裕でしょ?」
「無理やで、僕はともかくオオカミをキッチンに立たせるとかよくないで。」

「ちょ、舐めすぎ舐めすぎw」

軽口を叩き合いつつそろっと材料を確認する。
うん、砂糖、卵、小麦粉…。
「バターがないな。」
「カゲツ、バター買ってきてくれる?」
「ん、他になんかいる?」
「うーん、いや、大丈夫。一応ライ寝てるか確認だけしてきて。」
「ん、じゃあいってきます。」

はぁい、いってらっしゃあい___

「で、小柳くんはちょっとこっち来て。」
「…はい。」
「これ混ぜといて、縦に、サックリと。」
「縦に…?さっ、さっく?」
「サックリ。」
「さっくり。」

少し心配だが彼も料理が全くできないわけではない。…ないよな?いつかの味無し卵焼きは見た目は悪くなかったし…混ぜるだけならできるよな…。

では俺は型を探しに…よいしょっと。
「おぉ、残ってた。」
所狭しと並ぶ木箱の中に入った銀色に光るクッキー型。星、飛行機、シンプルな丸に柄ではないけどハートなんかもある。リトとウェンがノリで買ったのかよくわからない型が何個かある、ていうか多いな…なんでこんな多いの。使わないよこんなに…。

木箱ごと持ち上げてキッチンに持って行く。
ついでに棍棒も。

「混ざった?」
「ん、多分。」

ふむ、悪くない出来。あとはカゲツが帰ってくるまでは何もできることはないか…。

「たこ!買ってきたぞ!」
「うわっ!びっくりした、おかえりカゲツ…早くない?」

「急いだ方がいいかと思って…。」
「ううん、それでいいよありがとう。」

生地はもうすでにできている。あとはラップに包んで冷蔵庫で寝かせる。

「30分ぐらいか…。」

キッチンタイマーのピ、ピ、という小気味のいい電子音が響く。

「ふぁっ…ぁあ。」
眠い、欠伸って酸欠状態の時にするらしいですね、眠い。

カゲツもくあっと口を開けて欠伸をする。欠伸ってうつるよね。
「カゲツ眠い?」
「んー、うん。」
「はは、流石に眠いか。」

ふわふわとした適当な言葉の交わし合いをしながらソファに座り込む。

ふ、座った途端に、も、う…
午前1時30分
…落ちたな。
星導とカゲツの寝息が聞こえる。
流石に俺ももう寝たいが型抜きして焼かなきゃいけない…らしい?多分、そう。タイマーがなったら起こしてやらねば。

成人男性2人が肩にもたれてくるので右肩がとても重たい。

「…。」

ソファを離れ、2人の頭がぶつからないように適当にクッションを挟んでやる。
伊波の様子でも見に行くか。

ノックはしない方がいいか、起きるほどじゃないが聞こえる程度の声量で断りを入れる
「伊波、入るぞ。」
ここ、本部の待機場には部屋らしい部屋はなかったけれど各々が好きに改造して適当に自分のスペースを確保している。
伊波の部屋は彼の作った機械たちが所狭しと並んでいる、もちろん彼のオトモもそのうちの一つ。床には設計図、壁には工具といった具合にどこまでも機械、機械、機械。
その中に丸まってすやすやと寝息を立てている21歳大学生。

ギシッと音を立ててベッドに腰掛ける。
ふと、すっかり小さくなった成人男性を見やり指先で目元の生温かい雫を拭ってやる。

俺が彼の夢に干渉することは流石にできない。だからこれは、ただの気休め。"おまじない"だ。

「_________。」

「あんまり根詰めすぎるなよ。」

ぱた

リビングに戻るとキッチンタイマーが残り10秒を示していた。耳障りなアラームを聞くのは嫌なので早めに止めて、ソファの上のガキどもを起こしに行く。

「おいほしるべ、起きろ。」
「…あと5分。」
なんだこのタコ、その無駄に長い髪引っ張って文字通り叩き起こしてやろうかと思ったけれどその前に…
「カゲツ。」
「んぁ?なんやぁ?」
「星導、起こして。」

まだ表情はぽやぽやとしているけれどやはり忍者、名前を呼べばすんなり起きる。

「んー、えいっ!」
脇腹に折り曲げた人差し指をぐいっと入れ込む。
「い"っだぁあ!?!?」
…スマン、流石にコレは同情する。

「ん、30分たったぞ。」
「あー、じゃあ冷蔵庫から出してぇ…。」

「はぁ?それぐらいしろよ。」
「…イキリ陰キャ狼」
「へー、へー。」

軽口を叩き合いつつ重い腰を上げ冷蔵庫を開ける。
扉を開けた先、ひやりとした空気が鼻腔をくすぐる。バターの香りが喉を通る。

バットを出してテーブルに運ぶとカゲツが興味深そうに覗き込んできて
「これぼくがカタヌキしていいん?」
と葡萄と麝香葡萄の色をした瞳が落っこちてしまいそうなぐらい大きく見開いて言うもんだから。
「型抜きじゃなくて、粘土みたいに丸めて形作るのもあるぞ。」
カゲツの前で手本を見せてやろうとバットの上の生地を切り出す。別に俺だって得意なわけじゃないけれど、blenderでやってることを現実でやるだけだと言い聞かせて(思い込んで)簡単に伊波の工具を作る。

うわ、思ったよりむずい、カゲツにゃできんかね?

「…ぼく伊波のオトモ作りたい。」
「おぉ…また難儀なもんを…。」

「何やってるんですかー?」

…よし、あとは星導に任せよう。
俺は寝るぞ。
午前2時

「…ん、んぅ…。」
矢っ張りしばらく碌に寝てなかった分あんまり長い時間は寝ることはできなかった。
「ふ、あぁ…。」

…。

バターの匂いがする。

ふわり、やさしく、あまい香りについていくようにキッチンに行く。

「おはよう、ライ。」
「…おは、よ、るべ。」
寝起きなので声が思い通りに出なかった。

「いなみ!口開けて!!」
「ea?」

「あふっ、、は、うま!」

これは…クッキー!バターと砂糖のスタンダードなやつ。調理担当は星導か。普通に美味しい。

「どうしたのコレ。」
「ほくとタコで作った!!」

「一応俺も手伝ったわ。」
「…と、オオカミ。」

「ふは、ありがと、うまいよ。」
口に入れると軽く心地よい音が鳴る。
こういうのでいいんだよ、こういうので。
焼きたてだからなのかところどころ香ばしいところもあるが食べれなくはないし。

「…これは?」
「いなみのオトモ、作ろうとしたんやけど…あんまうまくいかんかった。ごめん。」

「…」
朝焼けのような瞳を大きく見開いてすっかり小さくなった白いふわふわの末っ子を見据えている。
ふっ、はは!鳩が豆鉄砲を食ったような顔とはまさにこのこと!
「違うんだよ、すごい似てる。本当にカゲツがこれ作ったの?すごいね。」

末っ子にはやっぱり甘い伊波ライ。
ここぞとばかりに褒めまくるので
「まぁな!結構うまいと思っとったけど!」
ほれ見たことか、調子に乗った。

「ありがとう。」

は?
「ロウも、るべも、カゲツも。」
「ぜんぶ、ほんとうにありがとう。」

何言ってんだよ、お前がいなきゃ俺たちはここにいない。感謝してるのは…俺たちの方で!

「…ありがとな、伊波も。」

あぁ、そんなに驚愕びっくり した顔をするな、落っこちちゃうだろ?

「ほら、いなみ!ゲームしよ!コントローラー持て!」

「えぇ?何時だと思ってんだよ!…やる。」

午前5時
午前5時

結局あの後某カートレースゲームで言い争ったり麻雀やって飛ばしあっては笑って何時間か過ぎたころ、まずはカゲツが、そのあとは気づいたらみんな夢の中。
俺はみんなと違って寝た後だったからこうやって目が覚めてしまったわけだが。

「あ。」

全員バラバラな場所で寝たのに気がついたらみんなでソファで並んで座っていた。
…成人男性4人が、こんな小さなソファに!
あぁ、あたたかい。今だけ、今だけ許してくれないか?

「おやすみ」
眠れない夜に甘い思い出を込めて
▽あとがき▲
ここまで読んでいただきありがとうございます!
小説を書くのはほとんど一年振りなので温かい目で見ていただけると嬉しいです。また、伊波さん以外の解像度かなり低めなので解釈違い等々お許し下さい。誤字脱字等、見つけたらぜひ指摘していただけるとありがたいです。
それではまた、ここではないどこかで。
ご来店ありがとうございます
ご来店ありがとうございます
宣伝です、もしよろしければお星様ぽちっとしていただけると励みになります!

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