昨日まであれほど降っていった雨が上がった今日。学園の空気はどこか澄んでいた。
昼休みの教室、いつものように皆が集まり、賑やかに購買のパンを囲んでいる。
抜き打ちテストだなんて誰が言ってたんだよぉ、俺受けたくないなぁ。
皆が笑い出した。
だって、別にあるかどうか分からないんだったら別に…する必要ないよね?
これは俺が常々思うことだけど、なんで抜き打ちテストなんてものが存在するんだよ!
勉強したくてもできないじゃん!!
と、毎回言い訳を並べる。
ちゃんと先生に相手されたことはないけど……
そんなことが頭に浮かぶ端で小さく何かが痛む感じがする。
ジンジンと俺の頭を殴りつけるようなそんな痛み。
別に誰かに言う必要のあるほどの痛みでもなければ、全然耐えることだってできる。
だから、できるだけ頑張ってみようと今日はルンルンで学校へ来た。
まぁ、あと数時間だし。
もうちょっとの辛抱だろうな。
リョウガが俺の額に素早く手を触れる。
リョウガの手って細いし冷たいって……ほんとにガイコツになるんじゃね?
そう思うが今はこの冷たさが気持ちよすぎてツッコむことなんて頭から等になくなっている。
そう元気なことを証明するためにバッと立ち上がると、体重を足で支えられなかったからか、フラッとしてしまった。
それをしっかりキャッチしたリョウガ。
リョウガのその自然な気遣いと距離の近さに、有難さと申し訳無さを感じる。
こういうところは気づかれちゃうんだから…笑
それもリョウガだっただなんて。
ふざけているようにみえて、ちゃんと周りを見てられる彼だからこそわかったのか。
将又わかりやすかったのか。
俺にはわからないけれど、こんなことをしてくれるまでなんだから俺はいい友を持ったのだろう。
リョウガに支えられて教室を出ていく。
タクヤにはバレてたのかな……
ばれて、ないといいな…
放課後。夕暮れの保健室は静まり返っていた。
ベッドで横になり、少し熱が引いてきた感覚があり、俺はゆっくりと目を開けた。
枕元にいたのは、カイだった。
頭がはたらかないのはいつものことだろ、なんて言われたらそれまでなんだけどそれ以上に動かない。
俺が来てほしいと思ってた人ってだれ?
カイがいてくれてとっても嬉しかったんだけど……
思うことはたくさんあっても言葉にするよりも先にカイが言葉を紡ぐ。
どうやら、カイにとっても都合がよかったみたい。
確かに今の季節、ちょっと暑いのにエアコン入れてくれないからなぁ。
待つのには保健室が丁度いいか
と勝手にカイが言った理由について納得をしていると刹那
表向き…?
表向きってことは裏になにかあるということなのだろうか、
そう思いカイに尋ねようとすると、
保健室の入り口のカーテンが、静かに開いた。
そこに立っていたのは、カバンを両手に持ったタクヤだった。
すでに放課後になり、他の生徒たちの気配はない。
普段聞かないような口調で、珍しい感じに見えるタクヤ。
持っていた2つの鞄を地面に置き、タクヤがカイに向かって目を見つめる。
カイはひらひらと手を振り、俺等の空間だけが保健室に残った。
静寂が戻った室内に、タクヤの制服の衣擦れの音だけが響く。
タクヤはベッドの脇に歩み寄ると、すぐに膝をつき、俺の目線に合わせて見上げた。
その瞳には、いつもの冷静なタクヤではなく、痛々しいほどの心配が溢れていたのがわかった。
ベッドから手を伸ばし、タクヤの制服の袖をそっと掴んだ。
何も考えずに、パッと無意識に出した手を俺は引き戻すこともしなかった。
そして、タクヤが振りほどこうともしないので俺は甘えることにする。
本当に久しぶり。
学校と屋敷ではやっぱり学校で話すほうが特別感があって俺は嬉しいし楽しいなって思う。
珍しく「村田」なんて呼んでくれるところとか、敬語じゃなくなる瞬間とか。
そういうのが「あっ普通の友達なのかも」と思わせてくれる唯一の瞬間。
こんなに話せるなら俺が我慢した甲斐があったかもっ。
そうまたニコニコとした顔をしていると「反省してないようですので…」としばらく説教を受けたのもまたいい思い出。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!