第3話

第3話
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2026/08/03 09:33 更新





翌朝、学校のの教室は朝の陽光が差し込み、早くから登校した生徒たちの声で活気づいていた。
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あ、ユーキくん!おはよう!
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アロハ、おはよう! 今日何があったっけ?…


教室に入ると、いつもの友人たちが手を振って迎えてくれる。


彼らの前では、俺は由緒正しき”村田家の令息”ではなく、ただの「村田祐基」。
周囲に家柄を隠して通うこの学園は、俺にとって唯一、普通の高校生でいられる息抜きの場所でもある。


今日はなんの授業があるんだっけ。

準備したのに忘れてしまうのはいつものことだし、忘れ物をするのも珍しくない。
…たまぁに怒られるけど。


そして、席から少し離れた窓際の席。


俺がいつも見てしまう彼が座っている場所。


普段から人を近づけさせないような雰囲気を持ってるからか、誰かが「草川」呼び以外で呼んでいるのは聞いたことがない。


5
(みんなは『草川』って呼ぶけど……俺…だけなんだよね。『タクヤ』って呼べるのは)






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ユーキちゃん? ぼーっとしてどうしたの。リョウガの顔がそんなに珍しい?
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えっ!? あ、ごめんそんなんじゃないよ!


突っ込んできたシューヤに慌てて弁解する俺を見て、リョウガが伊達眼鏡を上げながら「おいお前ら、俺の顔をオチに使うな」と呆れている。
その賑やかな輪を、タカシが楽しそうに眺めていた。



そんな中、ふらりと教室の後ろのドアから入ってきたカイが、真っ直ぐに窓際の彼の席へと歩いていく。


タクヤとカイは何故か仲がいいイメージ。
なんでかは知らないけど。


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ユーキ!マーくんとシューくんが面白いことしてくれるって!!
5
え、まじ!?
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ちょっ、タカシくん!?
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タカシくんが言ったら断れないっすwww


賑やかな一日がすごく楽しい。

ここにタクヤも入ってくれたらな、そう思わない日はないのに。
俺から誘うことは今日もできそうにない。





NOside
2
よっ、草川くん。今日の小テストの範囲、どこだっけ
4
……世界史の12ページから……お前、また教科書忘れたの?
2
いや、持ってきたよ。ただタクヤの顔が見たかっただけ


カイがニヤリと笑って隣の席の椅子を引く。
周りから見れば、ただの仲の良い同級生の光景。
けれど、カイの口から小声で発せられた次の言葉は、完全に『タクヤ』に向けられたものだった。



2
昨日さ、ユーキから連絡あったんだよねぇ。
4
……
2
なんか落ち込んでたみたいだけど、またなんか言ったでしょ? 執事サマ
4
……私は、村田家の人間として、坊ちゃんに弁えるべき一線を引いただけですので


視線を教科書から動かさない。動かしたらきっとカイはすぐ探りにかかる。
そして見事に当ててみせるだろう、彼の本心を。

きっとそれを恐れたタクヤは顔を上げることはできない。


2
タクヤのさ、その『草川』って名前、いい名前だよね
4
急になに?


突然話をそらすようにカイが言ったひと言。

周りの生徒たちの声にかき消されそうな中、2人の間に静かに落とされた。


2
村田家に拾われて、怪しまれないようにってつけられた建前の名前だけどさ。
2
お前にとっては、大事な名字だもんな


カイの鋭い指摘に、タクヤの端正な横顔が微かに歪む。


その通りだった。

みんなが自分を「草川」と呼ぶたび、自分はユーキと対等な「友達」ではないと思い知らされる。
そして同時に、屋敷でユーキが自分のことを「タクヤ」と呼んでくれる瞬間の特別さが、甘い毒のように胸を突き刺すのだ。


4
……さっさと勉強しろよな
2
うわっ逃げた、……勉強なんて、いい子ちゃんになってる〜
4
…何回みてもさっぱりなんだけど
2
相変わらず勉強は嫌いなのね笑
4
……うっせ//









2
まぁ、相変わらず逃げ方が上手だけどさ、その綺麗な壁、いつまで保つかな
4
……



カイはそれだけ言うと、自分の席へと戻っていった。











遠くの席で、楽しそうに笑いながらも、時折不安そうにこちらに視線を送ってくるユーキ。


タクヤは、その視線に気づかないフリをして、ただ静かに教科書の文字を追う。

それでも、内容はさっぱり入ることはなかった。







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