第123話

❀ 屋上で交した言葉 ❀
215
2025/08/25 11:48 更新
教室から飛び出したあと、私は一人、屋上の手すりに背をあずけて空を仰いでいた


放課後のこの時間は下校する生徒や部活に向かう生徒など廊下も校庭も人で賑わい、1人になれる場所が屋上しかなかった


夕焼けに滲んだ雲は、少し泣きそうな空の色だった


そして突然扉は錆びた音を立てる


そこからゆっくりと歩いてきたのはカナヲだった
カナヲは私の隣に来ると、屋上の柵を手に持ち、私とは反対向きに立った
栗花落カナヲ
やっぱり帰ってなかったんだ
栗花落カナヲ
高所苦手なあなたがこんなとこに自らくるなんて変
私
……そうかな
栗花落カナヲ
………私にくらい話してくれても良かったのに
私
え?
栗花落カナヲ
1人で悶々と悩むくらいならってこと
カナヲは頬を少し膨らませて言う
告白したこと、蒼葉くん知られたくないかなとか


こんなこと話しても興味ないかなとか


色々考えてたら、なんとなく言えなかった
私
違うの。
信頼してないわけじゃなくて…
栗花落カナヲ
分かってるよ
それから静かな時間がしばらく流れた


カナヲは待ってくれているようだった


私はずっと、ずっと、人を待たせてばかりだな…











































……ちゃんと話したい


聞いて欲しい
私
好きって言われて、びっくりしたけど嬉しかった
私
でも、その瞬間怖くなったの
私
私と蒼葉くんの関係が一気に崩れた気がして
私
今も、どう話したらいいのか分からない
私
蒼葉くんのことは好きだけど、私の好きは蒼葉くんとは違うと思うから
ぽつぽつと纏まらない言葉をカナヲは隣で聞いてくれた
栗花落カナヲ
好きって……いろんな形があると思う。焦がれる気持ちも、優しさも、嫉妬も、安心も……みんな“好き”の一部
栗花落カナヲ
今までの関係が壊れるかもしれないって、三上くんだって分かってたはず
栗花落カナヲ
それでも勇気をだして、あなたに告白した
栗花落カナヲ
だからあなたも逃げるんじゃなくて、ちゃんと向き合うべきなんじゃないかな
私
……どうしたら、いいの…?
栗花落カナヲ
正直に話せばいいんだよ。戸惑ってることも、どうすればいいかわからないことも、全部
栗花落カナヲ
……きっと、それを受け止めたいから三上くんは告白したんだと思う
正直に


その言葉に喉がきゅっと詰まった


正直、素直、潔白


この辺りの言葉は私には合わなすぎる


自分に、親に、友達


いつも欺いて、誤魔化して


そんな私だから蒼葉くんの真っ直ぐな気持ちにも逃げ出した
私
……私にできるかな
栗花落カナヲ
大丈夫
栗花落カナヲ
あなたなら出来る
カナヲはふわりと微笑む


そして私たちの間を風が吹き抜け、灰色の雲の間からわずかに光が差し込んだ


あまりにも穢れのない瞳でしばらく目を離せなかった

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