――その星が降る夜を、忘れられなくなる。
夏休みに入ってすぐにある、
希望制の2泊3日の勉強合宿。
山の上にある宿舎は、夜になると空気が澄み、
星が驚くほど近く感じられた。
基本は学年別に授業が行われるけど、自習の時間は学年関係なく1つの部屋でわいわいと勉強している。
ジュンソ先輩もゴヌ先輩も、
説明が丁寧で分かりやすい。
シンロンは二人のノートを覗き込みながら、
何度も助けてもらっていた。
すぐ横に、真剣な瞳でノートを見つめるゴヌ先輩。
並んで座る距離が近くて、ペンの音やページをめくる
気配まで意識してしまう。
今日からは、昼も夜も、ゴヌ先輩とひとつ屋根の下。
その事実がシンロンの心をそわそわと浮き立てた。
初日の夜の消灯間際、
シンロンは早足で大浴場へ向かっていた。
タオルを腰に巻いて中に入ると、
湯気の向こうにあったのは、見慣れた2人の姿。
ジュンソ先輩とゴヌ先輩が並んで座り、何気ない会話を交わしながら背中を流し合っている。
その空気はとても自然で、ゴヌの身体を愛おしそうに
見つめるジュンソも、終始照れた表情のゴヌも、
なぜか親密な空気を漂わせている。
そう思った瞬間、視線に気づかれた。
2人は少し慌てた様子で距離を取り、
お互いの身体に触れるのをやめて、はにかむ。
その様子が逆に、胸の奥に小さな引っかかりを残した。
ゴヌは少し残念そうに、ジュンソ先輩を送り出した。
2日目の夜、自習を終えたあと、廊下の灯りが落ち、
3人の足音が響くたびに胸が高鳴る中、
ジュンソ先輩が小声で言った。
夜中、ジュンソ先輩の一人部屋に集まって、
薄明かりの下、畳の上にお菓子を広げる。
ジュンソ先輩は壁にもたれ、柔らかく笑っている。
ゴヌ先輩はその隣に座り、
何気なくシンロンに肩を寄せる。
学年は違うけれど、兄弟のように気兼ねなく
色んなことを喋った。
非日常のドキドキ、気になる先輩と、同じ布団の上。
廊下から足音が聞こえた瞬間、
ジュンソ先輩が指を口に当てた。
3人は慌てて頭まで布団に潜り込む。
気づけば、シンロンは真ん中で、
2人にぎゅっと挟まれていた。
ガチャ、とドアの開く音。
布団越しでもわかる、先生のため息まじりの声。
「.....お前ら、次来る時までには寝てろよー」
明らかにバレているのに、3人は必死に頭を隠す。
おかしくって、くすぐったくて、
クスクスと小さく笑いが漏れた。
ジュンソ先輩も小さく笑って、囁く。
指先がシンロンの頬に触れる。
もちもちと優しく押されて、胸がくすぐったい。
すぐ後ろから、ゴヌヒョンの腕がふわりと回り込む。
背中に触れた腕の重みに、心臓が飛び跳ねた。
両側から視線を感じて、落ち着かない。
この時間が、ずっと続けばいい。
天井の見えない暗がりの中で、
シンロンはそっと息を吐いた。
優しい手が、子どもみたいに頭をポンポンと叩いた。
――……。
返事がない。
もう一度名前を呼んでも、答えは返ってこなかった。
代わりに、静かな寝息が聞こえてくる。
ジュンソ先輩が小さく吹き出し、
シンロンは、そっと隣を向いた。
薄暗い中でも、ゴヌ先輩の肩がゆっくり上下しているのが分かる。
ジュンソ先輩とコソコソ話をしていると、
ゴヌヒョンがもぞもぞと動いた。
距離がさらに近くなって、
シンロンの心臓はバクバクだった。
寝息を、何度も確かめてしまう。
今なら、ちょっとくらい、大胆なことをしても、、、
ゴヌヒョンの、ゴツゴツした男らしい手の甲に
そっと手を伸ばした。
あと30cm、20cm、10cm、、、
2人の手が少しずつ近づいて、、、
低く、穏やかな声。
ジュンソ先輩が、シンロンの手首をそっと掴んだ。
叱るでもなく、ただ静かに。
シンロンは小さく頷いて、手を引っ込めた。
3人はそのまま、何も言わずに横になり続ける。
窓の外では、星が瞬いている。
この夜の距離と沈黙が、
シンロンの中で、確かな想いへと形を変え始めていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。