第4話

一章「開幕ノ宴」1文
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2024/06/28 08:00 更新
天鳴紗
それじゃ、皆んなまたねー!
こももん
バイバイー!
ヒューガ
また明日なー
長すぎた部活動が終わって、校門を出る。
いやはやあの先輩、厳しすぎだ。
「サーブ終わったら、はい次試合」なんて軽く言うから、ヘトヘトだよ。
目に落ちそうになる汗を拭う。
天鳴紗
疲れたなあ〜^_^
まあ、まだ習い事があるんですけど。
確実に遅くなる時間にため息が漏れる。
天鳴紗
あそこ遠過ぎやろー!
そう、これから私は現在いる千葉から東京の端まで何線も乗り継いでいかんにゃらんのだ。
何回、いや何十回酔ったことか…
「あの場所が遠過ぎる。」
それがなによりもの本音。
建前なんて知ったことか。
そう思いながら駅へ歩き出した。
さいさつ
ティローン♪
さいさつ
残金は1637円です♪
駅に着き、改札を通り抜ける。
電車に乗るには、流れ行く人ごみの中を泳がねばならない。
うちは泳ぐのが苦手でよく押されるから、
此処を通り抜けるのは至難の技だった。
天鳴紗
(さあ、紗。今日は行ける!頑張って!)
天鳴紗
よし!覚悟オッケー!
自分で自分を奮い立たせる。
イマフレのオセロちゃんに助けてもらって
泳ぐ事を決意した。
オセロちゃん
頑張るあるネ!
応援してるアルヨー!
天鳴紗
オセロちゃん、サンキュー!
よし、もう少しで人の波が出てくる。
階段は流石に危ないので、一度降りきった。
いつくるか、いつ来るかとドキドキしながら、待ち侘びる。
今日は何だかうまくいきそうな気がした。
そして。
聞き覚えのある音が、戦いのゴングの如く、高く鳴り響いた。
ガシャーン、プシュー。
天鳴紗
はあ、はあ。
荒い息が出る。
泳ぎきれなかった。
なんとか電車にたどり着いて、乗れたけど。
抵抗が多すぎて、後少しで、乗れなかったかも。
まあ、これで遅刻しないからいいけども。
オセロちゃん
ナイスネ、紗〜!
天鳴紗
オセロちゃん、私、やったよ!
オセロちゃん
次もあるヨ。
頑張るあるネ〜!
路線図を見る。
今は本津田駅だから、乗り換えの三条橋駅まで
9分。次の課題はその三条橋だった。
著名な乗り換え駅で、毎日何万人も使用しているのだ。
つまり、人の波の量もやばい。
天鳴紗
そんな簡単に言わないでよ〜
オセロちゃん
まあ、アタシは応援してるアルし?
オセロちゃん
嫌味を言っているわけじゃないヨ。
全く、オセロちゃんはこの大変さ、
分からないんだろうなあ。
あ、イマフレだから当たり前か。
頭ん中でこんな雑談をしていると。
アナウンス
次は〜三条橋〜、三条橋でございます。
御降りのお客様の邪魔になりませんよう、
ドア付近にお立ちのお客様は
ドアから離れてくださいますよう、
お願い申し上げます。
天鳴紗
あっ、次じゃん。
オセロちゃん
さあ、勝負の時が近づいてきたヨ!
プシューと扉が開き、周囲の人がどんどん降りていく。
私も負けじとその波に乗る。
振り返って閉じた号車を見れば、ほとんど人は居なくて、お年寄りと女の子がぽつりと座っていただけだった。
私はその子を遠目に見て階段を登る。
天鳴紗
(あの子、どっかで見たことあんだよなあ)
さいさつ
ピロリン♪
さいさつ
残額は1407円です♪
何かを思い残しながら、改札を出る。
乗り換えだ。
本日、というよりいつもの山場。
此処を越えれば目的地はすぐ其処だ。
オセロちゃん
今日も張り切るヨー!
天鳴紗
オッケ!
階段を登ったのに、また降りる。
まあ、乗り換え線は其処にあるからしょうがないのだけど。
2回目は何故かスムーズに乗車できた。
戦いのゴングである「永遠の楓」が流れたと思ったのに、意外にも下車人数は少なく、
乗る人も少なかった。
天鳴紗
ちぇー、マジかー!
オセロちゃん
残念だったネ。意外にも居なかったヨ。
天鳴紗
悔しいー!
いつもに比べてできると確信していたのに、
発揮せずに終わるのは悔しすぎる。
天鳴紗
いつか、人の波に乗って乗車できるようになる!
ガラリと空いた電車の中でそう誓う。
オセロちゃん
頑張るネ。
ガタンゴトン、ガタンゴトン〜
アナウンス
次は終点明暮ロードウェイ前〜、終点明暮ロードウェイ前でございます。
御降りのお客様の邪魔になりませんよう、ドア付近にお立ちのお客様は、ドアから離れてください。JST明暮線をご利用頂きありがとうございます。またのご乗車をお待ちしております。
後少しで終点だ。
いつもなら此処で全員降りて帰宅する。
だが、私は違った。
ずっと乗っていると。
車掌
カードを拝見いたします。
お見せください。
車掌さんがやって来た。まあ、いつも通り。
カバンの中から学生証ーに見せかけたカードを出して車掌さんに見せる。
車掌
ただいま拝見いたしました。
見たという確認が取れたので、車掌さんは運転席へ戻って行った。
そしてその数秒後。
アナウンス
ただいまから、龍寺駅行きへと進行方向がチェンジしました。
と、アナウンスが流れ、プレートが
「龍寺前駅」行きと変化した。
アナウンス
まもなく、終点龍寺前駅でございます。
普通の電車なら流れる丁寧な文章は無く。
代わりに
アナウンス
今日も一日頑張ってください。
応援しています。
グッドラック。
という、いかにも機械的な音がした。
プシュー、ガシャーン!
電車のドアが開く。
ホームには誰もいない。寂れた駅のように見える。

階段を登り、改札を通る。
改札のICはただのICでは無く、特殊なカードが必要だった。
カードを翳すとホログラムの"good luck"が現れる。
カード以外ならただの寂れた駅に見える。
だが、此処はただの駅では無い。
此処は




「失われた都市」こと龍浦市の入り口なのだ。

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