長すぎた部活動が終わって、校門を出る。
いやはやあの先輩、厳しすぎだ。
「サーブ終わったら、はい次試合」なんて軽く言うから、ヘトヘトだよ。
目に落ちそうになる汗を拭う。
まあ、まだ習い事があるんですけど。
確実に遅くなる時間にため息が漏れる。
そう、これから私は現在いる千葉から東京の端まで何線も乗り継いでいかんにゃらんのだ。
何回、いや何十回酔ったことか…
「あの場所が遠過ぎる。」
それがなによりもの本音。
建前なんて知ったことか。
そう思いながら駅へ歩き出した。
駅に着き、改札を通り抜ける。
電車に乗るには、流れ行く人ごみの中を泳がねばならない。
うちは泳ぐのが苦手でよく押されるから、
此処を通り抜けるのは至難の技だった。
自分で自分を奮い立たせる。
イマフレのオセロちゃんに助けてもらって
泳ぐ事を決意した。
よし、もう少しで人の波が出てくる。
階段は流石に危ないので、一度降りきった。
いつくるか、いつ来るかとドキドキしながら、待ち侘びる。
今日は何だかうまくいきそうな気がした。
そして。
聞き覚えのある音が、戦いのゴングの如く、高く鳴り響いた。
ガシャーン、プシュー。
荒い息が出る。
泳ぎきれなかった。
なんとか電車にたどり着いて、乗れたけど。
抵抗が多すぎて、後少しで、乗れなかったかも。
まあ、これで遅刻しないからいいけども。
路線図を見る。
今は本津田駅だから、乗り換えの三条橋駅まで
9分。次の課題はその三条橋だった。
著名な乗り換え駅で、毎日何万人も使用しているのだ。
つまり、人の波の量もやばい。
全く、オセロちゃんはこの大変さ、
分からないんだろうなあ。
あ、イマフレだから当たり前か。
頭ん中でこんな雑談をしていると。
プシューと扉が開き、周囲の人がどんどん降りていく。
私も負けじとその波に乗る。
振り返って閉じた号車を見れば、ほとんど人は居なくて、お年寄りと女の子がぽつりと座っていただけだった。
私はその子を遠目に見て階段を登る。
何かを思い残しながら、改札を出る。
乗り換えだ。
本日、というよりいつもの山場。
此処を越えれば目的地はすぐ其処だ。
階段を登ったのに、また降りる。
まあ、乗り換え線は其処にあるからしょうがないのだけど。
2回目は何故かスムーズに乗車できた。
戦いのゴングである「永遠の楓」が流れたと思ったのに、意外にも下車人数は少なく、
乗る人も少なかった。
いつもに比べてできると確信していたのに、
発揮せずに終わるのは悔しすぎる。
ガラリと空いた電車の中でそう誓う。
ガタンゴトン、ガタンゴトン〜
後少しで終点だ。
いつもなら此処で全員降りて帰宅する。
だが、私は違った。
ずっと乗っていると。
車掌さんがやって来た。まあ、いつも通り。
カバンの中から学生証ーに見せかけたカードを出して車掌さんに見せる。
見たという確認が取れたので、車掌さんは運転席へ戻って行った。
そしてその数秒後。
と、アナウンスが流れ、プレートが
「龍寺前駅」行きと変化した。
普通の電車なら流れる丁寧な文章は無く。
代わりに
という、いかにも機械的な音がした。
プシュー、ガシャーン!
電車のドアが開く。
ホームには誰もいない。寂れた駅のように見える。
階段を登り、改札を通る。
改札のICはただのICでは無く、特殊なカードが必要だった。
カードを翳すとホログラムの"good luck"が現れる。
カード以外ならただの寂れた駅に見える。
だが、此処はただの駅では無い。
此処は
「失われた都市」こと龍浦市の入り口なのだ。






![[ 参加型 ]落ちた先は不思議の国でした。](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/CWM21aGkG1bNkBofNlYosPPNAoD2/cover/01KKED60ZZF6CG8EV21DX6C63E_resized_240x340.jpg)





編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。