第65話

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2026/03/01 07:00 更新



ビスケ.
 あなたを、奪い返したいだけ 







 キルアの瞳が、わすがに揺れる。 





 ゴンが、横目で見る。 


 ティアラは、息を呑む。 









ビスケ.
 その動機が悪いとは言わないわ 







 声は穏やか。 


 でも、決して逃がさない。 









ビスケ.
 でもね 
ビスケ.
 そのままじゃ、途中で壊れるわよ 







 風が、木々を鳴らす。 









ビスケ.
 それでも、やる? 







 キルアは、一瞬だけ目を閉じる。 


 迷いを探すみたいに。 





 でも、すぐに開く。 









キルア.
 やるに決まってんだろ 







 即答。 


 その声に、震えはない。 





 ふっと、笑って言った。 









ビスケ.
 …ほんと、厄介な子たちね 







 でも、その瞳は、真剣そのもの。 









ビスケ.
 いいわ、鍛え直してあげる 







 一歩、前に出る。 









ビスケ.
 覚悟しなさい 







 三人を射抜く視線。 









ビスケ.
 心ごと、ね 







 ♢ 
















 ♢ 





 夜。 





 焚き火の火が、小さく揺れている。 


 ぱち、と乾いた音がして、火の粉が空に溶ける。 





 キルアは少し離れた場所に座って、 
 黙ってナイフを研いでいる。 





 一定の音。 


 無駄のない手つき。 





 静かで、正確で。 





 でも。 


 目だけが、違う。 





 あなたの話をしたときだけ。 


 あのときの目。 





 強い、とかじゃない。 


 どこか追い詰められたみたいな、恐怖に近い光。 





 オレは、立ち上がる。 


 迷ったけど、やめない。 





 隣に座る。 


 砂利が小さく鳴る。 









キルア.
 なに 







 キルアは視線を上げない。 


 低い声。 









ゴン.
 …キルアさ 







 少しだけ迷う。 


 でも、逃げたくない。 









ゴン.
 あなたのこと、 
 大事なのは、分かってるよ 







 研ぐナイスの音が、止まる。 


 わずかな沈黙。 









ゴン.
 オレも大事だし 
ゴン.
 絶対、助ける 







 火が、ぱち、と弾ける。 





 夜が、少しだけ深くなる。 









ゴン.
 でもさ 







 喉が、少し詰まる。 


 それでも言う。 









ゴン.
 キルア、なんか変だよ 







 空気が、ぴたりと止まる。 





 ゆっくり、キルアの視線がこっちを向く。 





 冷たいわけじゃない。 


 でも、硬い。 









キルア.
 何が 







 低い声。 


 オレは、目を逸らさない。 









ゴン.
 あなたの話をしてるときだけ 
ゴン.
 目が違う 







 キルアの眉が、ほんの少し動く。 









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